東ロボグループ
2011年に国立情報学研究所(NII)で、「ロボットは東大に入れるか。」というプロジェクトが発足しました。このプロジェクトは、人工知能の技術を駆使し、大学入試問題を計算機で解くことに挑戦するものです。我々のグループはこのプロジェクトに参加し、様々な科目の問題を解くことに取り組んでいます。
『国語読解問題の自動解答システム』
「ロボットは東大に入れるか。」プロジェクトに参加し、本研究では国語現代文「評論」及び「小説」の「傍線部問題」と呼ばれる問題を解くことに取り組んでいます。ここで、傍線部問題とは、本文、設問文、選択肢(5択)の3要素から成る問題で、本文を読んだうえで設問文を読み、正しい選択肢を選ぶという選択問題です。このような問題を解くためには、テキストの内容、論理構造を理解することが必要になります。 この傍線部問題に対して、「本文のある一部分を選択肢と照合する」という基礎戦略に基づいた解答システムの作成を行いました。現在は、評論問題ではテキストの表層的特徴を用いて解答を選択するシステムを、小説問題ではテキスト中に現れる感情表現に注目して解答を選択するシステムを作成しています。
『世界史問題の自動解法システム』
「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトの一つとして世界史問題の自動解答システムの開発をしています.世界史の問題は,ほとんどが教科書と選択肢間で成立する含意関係認識と考えられます.あるテキスト(t1)が別のテキスト(t2)を含意するというのは,t1を読めば,t2が正しいと推論できるという関係を意味します.本システムでは,教科書と選択肢間の表層的な類似度に基づき,含意認識を行います.具体的には,各選択肢と選択肢について述べている教科書の一部分との表層類似度を求め,含意認識を行います.その含意認識結果と表層類似度から,どの選択肢が尤もらしいか導出し解答を得ます.
現在は,表層類似度に加え,時間概念の導入,含意認識では解けない問題の解答システムの開発などに取り組み,得点向上をはかっています.
『数学確率文章題の自動解法』
「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトの一つとして、数学の「場合の数・確率」の分野の問題を自動的に解答するシステムの開発をしています。場合の数・確率の問題は、図の「袋から玉を取り出したとき、ある条件を満たす確率はいくつか」などのような問題です。このシステムの実現には「問題で定義された状況・試行の理解」「試行の正確なシミュレート」などが必要不可欠です。「状況・試行の理解」では、問題 に記された情報を1つ漏らしてしまうだけで、正確な解答は得られません。そのため細心の注意を払い、日本語→プログラム言語の変換を行います。
そして「試行のシミュレート」を行い、条件に合うものを選択することで最終的な解答を得るシステムを作成しています。
『大学入試化学の自動解法システム』
国立情報学研究所が立ち上げた「ロボットは東大に入れるか」というプロジェクトに参加し,我々は化学に取り組んでいます.化学の問題を解くためには、問題文の意味表現への変換、数学的推論,複数の知識の統合的利用が必要です.問題文で描写された架空の世界のイベントを,自然言語からあるフォーマットの中間表現に変換し,それをもとに計算を行います.これは,ファクトイド型質問や,真偽判定問題,従来の質問応答とは違う新たな問題のタイプです.これは,新たなタイプの質問応答問題をまずは化学の計算問題にジャンルを絞り,簡単な部分問題をサブゴールとして取り組んでいると言えます.