生命の発生と進化は、38億年という厖大(ぼうだい)な年月が
生み出した奇跡です。
そこに、何の意識も知性も存在しなかったことは、
その年月の長さが示しています。
創物主や神のような存在は認められません。
そのような存在があったとしたら、
なぜ何億年もかけて生命を変化させるようなことをするのでしょうか。
または、何億年もかけて生命が変化してきたような証拠を残すのでしょうか。
生命の発生と進化は、厖大な年月での因果の繰り返しと偶然によるものなのです。
しかし、生命は「生き残れ」という大きな意志や使命を持って、
進化してきたように見えます。
大きな意志や使命が、自然の流れに逆らい、
数々の奇跡を引き起こしてきたように思えます。
この大きな意志、使命は神のごとき振る舞(ま)いです。
38億年という年月による、生命の蓄積(ちくせき)です。
生命は、どのように発生したのでしょうか?
以下のように考えられます。
太古の海で、無機物から有機物が生まれ、
そして有機酸や有機塩基(えんき)などの化合物が何種類も合成されました。
それらの一部は結合して、アミノ酸となりました。
また、有機塩基は糖やリン酸化合物と結合して、
RNA(リボ核酸)の構造を作り出します。
RNAは、アミノ酸に酵素(こうそ)のように働き、一定のタンパク質を作り出します。
そして、自ら型(かた)となって複製を作る反応性を持っていました。
第一の奇跡です。
RNAの一部が変形して、いろいろな種類のタンパク質が作られます。
やがてRNAのまわりにタンパク質が蓄積されます。
タンパク質はアミノ酸などの有機物を吸収します。
巨大化して、不安定になり、いくつかのRNAとともに分裂します。
そのような生命以前の化学進化の時代が、5億年以上続きました。
RNAは、さらに構造の安定なDNAに進化します。
タンパク質のかたまりは、表面に膜を作り、細胞状になります。
そして、海底の熱水噴出口近くで、その細胞状物質は、高温高反応の
環境にさらされて、イオウ呼吸と呼べる代謝(たいしゃ)反応を起こすようになります。
第二の奇跡です。
(第一の奇跡と第二の奇跡のどちらが先に起こったかは、
まだ明確ではありません)
複製のための核酸を持ち、
代謝反応でエネルギーを作って消費し、
そして外界から独立して存在するという
生命の三つの条件が揃(そろ)いました。
初めての生物である、原始バクテリアが生まれたのです。
原始バクテリアは、体内のエネルギーで変形や運動を起こします。
より外界から、有機物やイオウなどを吸収しやすくなります。
海面に増殖して層となった一部のバクテリアは、太陽の光を受けている間に、
その光エネルギーを物質化し、糖を生成する配列構造を持つようになりました。
光合成をするシアノバクテリアの誕生です。
第三の奇跡です。
シアノバクテリアは、またたくまに増殖して、海岸沿いを埋めつくします。
副産物で発生した酸素は、大気構造を変え、海に溶け込んで水質を変え、
多くの金属や有機物を酸化しました。
強い反応性を持ち、原始バクテリアにとって有害である酸素は、
そのバクテリアに、大きな影響を与えます。
酸素を体内の代謝エネルギー源に取り入れ、運動能力が非常に活発に
なった攻撃型バクテリアと、酸素から逃げるため、核酸を構造の中心に
集め、回りをタンパク質で被う防御型バクテリアが生まれました。
攻撃型は肉食動物、防御型は草食動物のような関係になります。
そして二つの共生(きょうせい)が生まれます。
攻撃型はミトコンドリアとして、防御型の中に入り込み、
その防衛型は、中央に核を持つ真核(しんかく)細胞となり、
多くの物質を取り込んで、機能的になっていきます。
そのような単細胞生物だけの時代が、30億年近く続きます。
そして、単独であった細胞が、グループとして機能を分担(ぶんたん)し合える、
多細胞構造を作れるようになります。
単なる複製だけだった細胞分裂が、いくつかの酵素の誕生で、
少しずつ変化した細胞をつくることが出来るようになったのです。
第四の奇跡です。