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島の生物学

海洋島での植物進化

海洋島は生物の進化を研究する格好の機会を与えてくれます。ダーウィンの進化論も、海洋島であるガラパゴス諸島での探検がきっかけでした。

海洋島に固有の植物の多くは、大陸の祖先種から進化してきたと考えられています。その過程で、草本種の木本化、雌雄異株化、種子散布能力や被食防衛能力の消失といった、海洋島に特徴ある性質が進化してきました。しかし、あまり知られていない現象として、花外蜜腺の消失という性質があります。これは、海洋島ではボディーガードとなるアリがもともといないか少ないことと関係していると考えられています。特に在来のアリが全くいなかったハワイ諸島で、多くの植物で花外蜜腺が失われています。

海洋島の小笠原諸島には、多くの固有植物（固有率約70%）が分布しています。ハワイ諸島と同様な花外蜜腺の消失を、小笠原諸島のハイビスカスの固有種でも見つけました。

外来植物による固有昆虫相への影響

小笠原諸島には、多くの固有植物（固有率約70%）と固有昆虫類（固有率約40%）が分布しています。小笠原の昆虫相は、材食性甲虫類のような森林性の昆虫によって特徴づけられています。しかし、近年、小笠原の植生は、アカギやトクサバモクマオウといった外来樹種に置き換わりつつあります。昆虫と植物は相互に依存しているため、外来樹種による森林の置き換わりは、固有昆虫類に影響を与えていると考えられます。現在、小笠諸島において、在来昆虫類の多様性と外来樹種との関係について調査を行っています。

トクサバモクマオウが固有昆虫相に与える影響、アカギ駆除が固有甲虫類に与える影響、固有甲虫相のレフュジアとしての無人島の保全、カミキリムシと在来・外来樹種との関係、植食性昆虫と在来・外来樹種との関係、在来・外来アリと在来樹種・外来樹種との関係などを明らかにしてきました。

固有ハナバチ類の生物学

他の隔離された海洋島と同様、小笠原には元来、社会性のハナバチ類が分布していませんでした（現在ではセイヨウミツバチが移入されています）。わずか9（or 10）種の単独性ハナバチが分布しているにすぎませんが、すべて固有種だと考えられています。固有ハナバチ類は、小笠原諸島の在来植物にとって、重要な送粉者であったと考えられますが、近年、外来生物による影響で、オガサワラクマバチをのぞく固有ハナバチ類は、有人島ではほとんど見られなくなりました。これまでに、固有ハナバチ類の訪花行動について詳細はほとんど知られておらず、その花粉媒介に果たす役割を調査することは重要です。固有ハナバチ類の生態について調査を行ってきました。

海洋島での侵略的外来動物

小笠原諸島には、固有陸産貝類（固有率約 90%；東北大の千葉先生のページを参照）が分布しています。捕食性プラナリアの1種、ニューギニアヤリガタリクウズムシは、あらゆる種類のカタツムリやナメクジを食べます。この種が持ち込まれた熱帯の島々では、固有のカタツムリたちが大きな影響を受けていると考えられています。小笠原諸島では、1990年代に父島から記録されるようになりましたが、それ以降、父島では急速に固有のカタツムリが減少しています。この減少原因が、ニューギニアヤリガタリクウズムシによる高い捕食圧であることを、野外実験や室内実験などさまざまな手法によって確かめました。

さらに、ニューギニアヤリガタリクウズムシを含む外来土壌動物の侵入・移動を防止するための検疫手法の一つとして、熱水処理の有効性について明らかにしました。