腐食動物

動物の遺体は、さまざまな動物によって再利用されます。例えば、小型脊椎動物の遺体は、モンシデムシ類によってすみやかに土中に埋葬されてしまいます。雑食性の哺乳類も動物遺体を積極的に摂食していることが知られています。また、脊椎動物の毛や羽毛はケラチンという難分解性タンパク質で構成されていますが、コブスジコガネ類やヒロズコガ類はケラチンを摂食し分解することが知られています。これらの昆虫の役割は、物質循環を円滑に進める重要な生態系機能として捉えられています。

森林性のモンシデムシ類(ヨツボシモンシデムシやクロシデムシ)は、都市化や農耕地化によって種数や個体数が減少し、動物遺体の埋葬機能が果たせなくなります。一方で、雑食性の哺乳類(タヌキやハクビシン)は、都市化に耐性があり森林が乏しい環境したでも個体数が比較的多く動物遺体も餌として利用することができます。このように、モンシデムシ類と哺乳類が環境変化に対して全く異なる反応を示すことで、さまざまな環境で腐食動物がもつ生態系機能が維持されていることがわかりました。また、中・大型哺乳類が分布しない島嶼部ではモンシデムシ類の動物遺体分解機能に果たす役割がより大きくなっていることも明らかにしました。


サギの集団営巣地(コロニー)は森林の樹冠部に形成されることが多く、林床にはサギの雛遺体や餌動物の遺体が多く見られます。サギのコロニーではシデムシ類やハサミムシ類といった腐食性昆虫の密度が増加しており遺体分解を行っていることがわかりました。また、雛の羽毛分解にはコブスジコガネ類が重要な役割を果たしている可能性が示唆されました。

関連する研究成果

Sugiura, S. & Hayashi, M. (2018) Functional compensation by insular scavengers: the relative contributions of vertebrates and invertebrates vary among islands. Ecography, 41: 1173–1183.

Sugiura, S. & Masuya, H. (2015) Keratin subsidies promote feather decomposition via an increase in keratin-consuming arthropods and microorganisms in bird breeding colonies. The Science of Nature – Naturwissenschaften, 102: 25.

Sugiura, S. & Ikeda, H. (2014) Keratin decomposition by trogid beetles: evidence from a feeding experiment and stable isotope analysis. Naturwissenschaften – The Science of Nature, 101: 187–196.

Sugiura, S. & Ikeda, H. (2013) Which insect species numerically respond to allochthonous inputs? Naturwissenschaften – The Science of Nature, 100: 749-759.

Sugiura, S., Tanaka, R., Taki, H. & Kanzaki, N. (2013) Differential responses of scavenging arthropods and vertebrates to forest loss maintain ecosystem function in a heterogeneous landscape. Biological Conservation, 159: 206–213.