イモムシ・ケムシ

糸登り

森でよく出会うイモムシや毛虫は、多く が チョウや蛾の仲間に属しています。新緑の頃、森の中を歩いていると、木からイモムシや毛虫がぶらさがっているのをよく目にします。彼(彼女) らは、口から糸を吐いて命綱にして、木々にぶらさがっています。木から降りる時には、ゆっくり糸をたらすことによって安全に降りることができます。しか し、木の上にもう一度戻るにはどうすればいいのでしょう?

イモムシたちは、3対の脚を器用に使って、糸を巻き取りながら登っていくのです。さまざまなグループの種類で同様の行動がとられることを明らかにしまし た。森でぶらさがっているイモムシを見つけたらじっくり観察してみてください。両脚には巻き取られたシルクの糸玉ができていることでしょう。

ケムシの「毛」の役割

毛の生えたイモムシをケムシと呼んでいますが、毒のある毛をもつ種はそれほど多くありません。私たち人間が触っても痛くも痒くもない毛をもつ種が多いのです。その「毛」はどういう役割を果たしているのでしょうか?

これらのケムシの毛の役割を調べるためにクロカタビロオサムシというイモムシを好んで食べる捕食者を使って実験をしてみました。クロカタビロオサムシは鋭い大顎を使ってイモムシに噛み付きます。ところが、毛の長いクワゴマダラヒトリの幼虫ではうまく噛み付くことができません。そこで、「鼻毛カッター」を使って、クワゴマダラヒトリ幼虫の毛をクロカタビロオサムシの大顎の長さよりも短くカットしてみました。すると、簡単に捕食できるようになりました。このように、クワゴマダラヒトリの幼虫がもつ長い毛というのは、捕食者に対しての物理的な防衛形質であることがわかりました。

イモムシの発音

一部の鱗翅目幼虫は発音することで天敵に対して警告または威嚇行動をとることが知られています。日本で最大級のイモムシであるオオシモフリスズメの反撃行動に伴う発音を明らかにしてきました。腹部第8節にある一対の気門から空気を出すことで発音することを実験的に示しました。同様に、ウスタビガ幼虫が腹部第1節の一対の気門から空気を出すことで発音することを実証しました。

関連する研究成果

Sugiura, S., Takanashi, T., Kojima, W. & Kajiura, Z. (2020) Squeaking caterpillars: independent evolution of sonic defense in wild silkmoths. Ecology, 101(10): e03112.

Sugiura, S. & Takanashi, T. (2018) Hornworm counterattacks: Defensive strikes and sound production in response to invertebrate attackers. Biological Journal of the Linnean Society, 123: 496–505.

Sugiura, S. & Yamazaki, K. (2017) Scavenging behavior in leaf-feeding caterpillars. Journal of the Lepidopterists’ Society, 71(1): 59–61.

Kageyama, A. & Sugiura, S. (2016) Caterpillar hairs as an anti-parasitoid defence. The Science of Nature – Naturwissenschaften, 103:86.

Sugiura, S. (2016) Bagworm bags as portable armour against invertebrate predators. PeerJ, 4: e1686.

Sugiura, S. & Yamazaki, K. (2014) Caterpillar hair as a physical barrier against invertebrate predators. Behavioral Ecology, 25:975–983.

Sugiura, S. & Yamazaki, K. (2006) The role of silk threads as a lifeline in caterpillars: pattern and significance of lifeline climbing behaviour. Ecological Entomology, 31 (1): 52-57.