箸の持ち方
給食指導中に箸の指導が始まった頃にこんな話が出ました。
「箸の持ち方は家庭で指導することではないか。」
そんな中、ある教師の発言。
「家庭で箸の持ち方を教えてもらえない子たちにとって、指導してもらえる場所は、学校しかないのではないか。」
確かにそうですよね。
私もそう思います。
が、学校に箸を持ってくるようになった後、保護者からの苦情もありました。
「箸を持って行くようになったのに箸は正しく持てるようにならない。」
それはそうです。
1週間、1日3食で計21食。
そのうち給食を箸で食べるのは当時2~3食。
ここまでで、よくて21食中7食と3分の1にしかなりません。
しかも、教師が班に入って食べるとなると8日に1回しか入れない。
これを加えると24分の1。
加えて、班の人数は4~5人と1対1ではないし(96分の1)、箸の指導をするためだけに班に入って食べているのではない・・・
。
これでは、きっかけを作ったり、価値観を指導したりするのが精いっぱい。
最終的には本人の意欲次第のところになりますが、子どもはよっぽど楽しいと思わなければ、価値があると思わなければ、辛いことにチャレンジはしようとしませんね。
閑話休題。
その頃「先割れスプーンのせいで箸が持てなくなった。」という話が出ました。
上のことから考えると先割れスプーンで食べるのは、21食中の5食。
しかも、小学校に入ってくるまでには、箸は持てるように学べるはずです。
こう考えると本当に先割れスプーンのせいで箸が持てなくなったのでしょうか。
私たち昭和30年代生まれは、小学校入学から中学校卒業まで学校給食で先割れスプーンを使ってきました。
それでも箸は持てます。
茶碗を持って食べるかどうかもそうですが、別のことに責任を置きかえることで事が済まされているような気がしてなりません。
責任の所在を明らかにすることよりも、今、目の前にいる子が箸を正しく持てないことについて、どうすれば茶碗や箸を持てるようになるのかを話し合う方がずっと大切だと思っています。
蛇足ですが、以前伝え聞いたお話を1つ。
ある著名な芸人さんのもとには、弟子にしてほしいと来る若者がたくさん来るそうです。
その時にその芸人さんは、その弟子希望の人と一緒に食事に行くそうです。
そして、箸を持てるかどうかを見て、持てない人には「もう1度よく考えてからくるように。」と諭して帰らせるそうです。
それは、「箸をきちんと持てるということは、厳しくしつけられてきたか、自分で持ち方を直そうとしてきた人であるということ。箸を持てないのであれば、芸人の厳しい修行に耐えることができないと思う。」という理由だそうです。
これだけで判断するの?と思ってしまいますが、全く的外れではないと感じましたし、この様な人たちがいるのであれば持てないより持てた方がいいですよね。
これについては、外国文化との絡みも他のコラムでお伝えしたいと思います。