弘法大師の甥

弘法大師と言うと「筆を選ばず」とか「筆の誤り」という話を聞くほど有名な人ですね。

この弘法大師には弟がいたそうです。

その弟は商人でその息子は大変な放蕩息子だったそうです。

ある日、手を焼いた弟は弘法大師に「何とか教育してほしい」と頼みます。

そこで、大切な甥のことだと弘法大師ははるばる歩いて商家を訪ねます。

当時の主な交通手段は「足」ですから、たいへんだったでしょう。

ところがその放蕩息子、弘法大師が訪問している間は、出ずっぱりで帰宅しませんでした。

仕方がなく弘法大師が帰路につこうと店先に立った時にやっと帰ってきました。

当然、弘法大師の弟は怒ります。

が、弘法大師は「せっかくここまで来たのだから、せめて草鞋の紐を結んでほしい」と頼みます。

甥はいやいや草鞋の紐を結び始めます。

すると、弘法大師の目から涙が一つこぼれます。

するとその涙の意味を考えた放蕩息子。

遠くからわざわざ叔父がやってきた、しかも外出しっぱなしだった自分に怒りもせずに涙をこぼしている……これは、自分がやってきたことは…。

と改心するお話です。

確かに、この甥には、もともとの考える力と心根があったのだろうと思います。

しかし、このようなことを考えず、子どもが何かをしてしまった時、まずは叱ってしまっていませんか。

教育にはたくさんの選択肢があるものだと思い知らされる逸話です。