国際OCD財団の最新情報

国際OCD財団(International OCD Foundation:IOCDF)が発行するニュースレターより、

最新の情報を翻訳・掲載しています。

・OCDとタイプ

・OCDと併存症

・OCDの検査

・OCDと治療

・OCDと家族

OCDとタイプ

OCDと完璧主義

完璧主義:それに見合った結果があるって言えますか?

完璧主義の「本当」の問題

もしあなたがOCDの人に強迫行為が(あなたが得たいものの)結果に見合うか聞いた場合、彼らは多くの場合「これが不安を抑える唯一の方法なのです」と答えるでしょう。強迫行為のために費やしていることを質問すると、時間、お金、仕事、学校、達成感、交友関係や自立だと答えるでしょう。行動の結果のプラス面とマイナス面に注目して行動を変容させるものにモチベーショナルインタビュー(Miller & Rollnick, 2002)という方法があり、望ましくない行為(この場合強迫行為)をやめるようにするためにセラピスト達が使用します。行動が有益ではなくなっている人たちを援助するとき(不安は減るどころか益々大きくなっている)は違う方法を試してみるように促すことが多いでしょう。

この戦略を完璧主義者にも使ってください。「あなたの完璧主義が結果と見合っていますか?」強迫行為とは違う内容の長いリストを挙げるでしょう:学校での良い成績、上司から特別に評価される、他の人から褒められる、達成感を得られるなど。そしてあなたは次にこう聞きます「あなたの完璧主義から得られるものは何ですか?」このときには同じようなネガティブなリスト:時間がかかる、不安を惹起させる、他の人との摩擦が起きる、自尊心の低下(十分に良いと思えるものはない)などです。これらは挑戦的な状況です。完璧主義者のいう完璧主義は好きなところに価値をおいているということなのですが、そのための代価も認識しているのです。しかしながら、完璧主義に異を申し立てたら、理解されていないまたは「普通になりなさい」と言われているように信じ込むのです。

目的と戦略と結果を分けること

もしあなたが完璧主義の人に完璧主義の意図:「どのようなことが起きてほしいですか」と聞いたら、能力があって、成し遂げたことに関して満足感が得られて、秀でたいと答えるでしょう。典型的には、完璧主義者が完璧主義に異を唱えると目的や価値(意図や獲得したいもの)へ反論しろと言われていると受け取ります。そのため、問題はその意図するところではなく戦略なのだということを強調することが大切です。この場合戦略というのは、願望をかなえるような良い結果になるように意図して向かっていく方法です。例えば、もしある人が仕事において能力がある人だと思われたいとしたら、白か黒か(99%は0%に等しい)という戦略を望む結果(ボスに褒められる、達成感をえる)を達成するために使うでしょう。完璧主義者はその因果関係を理解することができ、その戦略が見返りを得る可能性は低い(うまくいけばとても強力だけれども)ことを認識しています。しかしながら、その戦略を手放すのは難しいのです。非適応的な完璧主義の戦略は以下のようなものも含まれます。

きっちりルールに従う:完璧主義者は、仕事をするうえでルールまたは基準に従って行動やパフォーマンスをしなくてはならないと言います。あなたは完璧主義者が「このように成し遂げられなくてはならない」または「正しくやるか全くしないか」というのをよく耳にします。完璧主義者は、「詳細を気にする」人として認められたときにはそれらを褒められると報告します。しかしながら、多くの場合は人をコントロールする人、頑固だと言われます。

すべてのことは平等に重要:完璧主義者はすべてのことを上手くしたいと思うため、優先順位を決めることが困難です。すべての仕事は同じように重要と思えるので、すべてのことに対して同じような細やかさと努力とエネルギーを費やします。完璧主義者に100%と80%と50%に仕事を分配するように言うとすると、100%からほかのカテゴリーに移すことは難しいと言います。

失敗は悲劇:完璧主義者は「間違いを犯すことを恐れている人」と考えることもできます。完璧主義者は間違いやミスを隠すことに時間を費やします。間違いを犯した結果について、

過大解釈します。完璧主義者のパフォーマンスがポジティブでなかったことに関して建設的な意見を受け入れることは難しく、信頼を失ったまたは自分のことを好きではないのだととらえます。

「正しい」と感じたり見えたり聞こえたりするまで繰り返すこと:課題を「正しい」と感じたり見えたり聞こえたりするまでしなくてはいけないと思うので、完璧主義者は編集しなおしたり、復習したり、強迫的に繰り返したりする傾向があります。先生や上司がこのレポートや宿題はクラス/オフィスで一番だと言うとそれは強化されます。完璧主義者にとって「ざっくりしたもの」や「途中なもの」を他の人に見られることは受け入れられないことなのです。

締め切りに間に合わず、先延ばしにする:先延ばしにすることは、締め切りに間に合わないことにつながります。これらは「正しくやるまたはまったくやらない」という考えによります。完璧主義者は「私の部屋/机は汚い」にもかかわらず、完璧主義者といわれることに関して衝撃を覚えます。どうして汚れているのかを問うと、「正しく」きれいにするためには膨大なエネルギーと時間が必要であるからだと感じ、そのエネルギーと時間がないからだと答えます。そのため、彼らは多くのエネルギーとモチベーションがでてくるまで待ち、疲れるまで何時間も働きます。そして「完璧でない」ものを見てがっかりします。これらのことは次のプロジェクトがきたときに思い出されます(例えば、部屋を掃除するとき)。避けることや先延ばしにする人は「それをするためのモチベーションやエネルギーがないから部屋をきれいにできない。私はだらしない人物に違いない」と考えます。

適応的な完璧主義と非適応的な完璧主義

非適応的な完璧主義(目的は良いのだけれど結果がよくない)の代わりとして、適応的な完璧主義とは価値によって優先順位を決めたり、実験してみたり/リスクを負ったり、見返りが少ないことをやめたり、先伸ばしにする癖と闘ったり、他のやり方をしてみたりすることです。

価値によって優先順位を決めること:もしあなたが不安の大きさによって(すべてのことを上手くやらないと悲惨なことになる)決断をしているのならば、あなたは重要で価値のないものに多くの時間を費やしていることになります。時間や資源やエネルギーには限りがあります。もし一つのことにだけそれらを費やすのならば、他のことができません。もし「良い親であろうとする不安」よりも「すべての事柄において一番でない不安」のほうが高かったとすると、靴下を整頓するのが世界で一番得意な人で終わってしまうでしょう。繰り返しになりますが、完璧主義者の不安は、あなたに「時間がたくさんある、すべてのことを上手くやりなさい」と語りかけます。しかし、あなたの経験はこれを封じ込めることができないのです。あなたには良い目的がありますが、結果は乏しいのです。アクセプタントアンドコミットメントセラピーでは、Stephen Hayes(2005) が決定や行動が価値によって(不安ではなく)なされることに異論をなげかけています。価値を考える一つの方法は称賛を書きだすことです。あなたが未来にいったとして、過去をふりかえったときに、あなたの人生で秀でたいと思うものは何ですか。どのような人として記憶されたいですか。それによってAリスト(100%に近い質でやりたいこと)、Bリスト(80%の質でやりたいこと)とCリスト(50%の質でやりたいこと)とFリスト(やらないこと)を作ることができます。

実験とリスクを負うこと:間違いをおかすことについての考えを再度吟味してください。あなたが間違いをおかすことを他の人に見せて、どのような反応がかえってくるのかに注意を払ってください。「仕事途中」のことについてのフ良いドバックを求め、協力し、あなたの仕事に関してのアドバイスを受け入れてください。ルールや標準に沿うことは安全で間違いを防いだりするかもしれませんが、創造性や革命とは反対なのです。

見返りは少なくなっていきます:もっとたくさんがより良いということにはなりません。次の例を考えてください:心臓疾患になることを予防する可能性のあることを教えてくださいとかかりつけ医に聞きました。毎晩、ワインを飲むことだと提案されたとしましょう。6か月後に医師にあって「夕食にワインを飲むことが楽しくて、今は1日に4リットルのワインを飲んでいます」と言ったらどうでしょう。繰り返しますが、継続することやより努力をすることがより良い報酬を得られるというわけではないのです。見返りの多くは物事を成し遂げている初期におこります。改善することだけに注意を払っていると努力に見合う結果は減っていくのです。

先延ばしと戦うこと:大きなプロジェクトを分割し、一つ一つをやっていきましょう。その仕事をする間中、モチベーションを保てるように一つの仕事が終わったら報酬を与えてください。仕事が終わっていない段階でその場を去ることを自分自身に許し、新しい目線で戻ってきてください。

締め切りを破るのをやめなさい:何もださないよりはざっくりしたものでも提出したほうが良いのです。

「誠実な人」をモデルとして使いなさい:あなたのゴールや意図を共有しているような人で、結果にこだわっていないように見える人を特定してください。「Aさんは能力が高いように見えますが、他の人に対して威張り散らすことはありません。彼女がやっていることは私の戦略とはどう違うのでしょう。彼らがどのようにしているのかを吟味し、それをしたり真似をしたりすることであなた自身のスタイルを身に着けてください。または新しい戦略を身に着けてください。関連している書籍に「7つの習慣:成功には原則があった!」(The Seven Habits of Highly E ffective People:Covey, 1989)があり完璧主義の人には読んでほしいと思います。

結論

あなたが完璧主義だと他の人が批判したときに、秀でたいという欲求に対し文句を言っているわけではないということを覚えておいてください。秀でるためにしていることを考え直してほしいということを強調しているのです。繰り返しますが、完璧主義の問題はより良くしたいという欲望ではなく、結果が乏しい戦略を手放せていないことなのです。

(訳・蟹江絢子)

Perfectionism: Are you sure it pays off? by Jeff Szymanski,Ph.D.

International OCD foundation HP Expert opinion

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OCDと溜め込み

強迫的溜め込みを抱える人にオンラインサポートグループは有用であるか?

1998年、独創的な数名が、強迫的溜め込みやガラクタ問題を抱える人のためにオンライン自助サポートグループを立ち上げ、その運営を始めました。これは共通の目標を達成するために患者を交流させようという強い希望に端を発していました。このオンラインコミュニティーはメンバーが100名を超え、キャンセル待ちも100名以上あるなど、この数年で大いに発展してきました。メンバーは、溜め込みやガラクタ問題への取組みに役立つ資源やヒント、ツールに自由にアクセスでき、少なくとも月に一度、活動ステップや進捗状況をレポートします。オンラインサポートの有用性を証言する人は多かったのですが、オンラインサポートグループのリーダーたちは、溜め込みと向き合い目標を達成するのに、グループ介入がどれほど効果的であるか、理解を深めたいと考えました。グループリーダーと研究者から構成される共同研究が始まり、研究名は愛情を込めて、D.I.T.C.H.(Delivery of Internet Treatment for Compulsive Harding) (強迫的溜め込みに対するインターネット治療の取り組み)と呼ばれました(Muroff, Steketee, Frost, & Himle, 2010)。

問題

溜め込みとは、自宅や職場にあまりにも多くのガラクタを溜めるために、本来の目的でその場所を利用できないこと(例えば、持ち物がキッチンカウンターやストーブの上に積み重なり、調理のために使用できないこと)を示します。これは、物をとっておきたいという強い衝動と、物を捨てることが大変困難であることから生じています(Frost & Hartl, 1996; Mataix-Cols et al., 2010)。溜め込みが見られる人は、物を過剰に買い、それを集めて確保します。約20名に一人が溜め込みに該当(Samuels Et al., 2008) します。また、溜め込みの症状はストレスを高めるばかりか対人関係をぎくしゃくさせ、雇用問題を引き起こします。ガラクタにより、個人やコミュニティーに危害を及ぼし、保健条例違反や立ち退きのような問題を引き起こしたケースもあります。自分自身の溜め込み行為を問題と捉える人もいれば、そのようには捉えずに、洞察力が乏しく、変わろうとする意欲が低い人もいます。

溜め込みは彼ら自身が犠牲者です。このため、グループリーダーは問題の複雑性に気付き、溜め込み体験者に役立つ情報の提供や、彼らの深い孤独感を減少させる必要性が高まっていると理解しました。リーダーたちは、溜め込みの専門家と関わり、研究を通して見識を深めながら、Yahooのオンラインサポートグループを立ち上げました。

背景

初期の研究では、溜め込みは対応が難しく、他のOCD症状に効果が見られていた薬物療法や心理療法には反応性が乏しいと言われてきました。溜め込みに特化したCBTは、Drs. Gail Steketee , Randy Frost とその同僚により開発され(Steketee & Fronst, 2007) 、期待できる効果がみられました(Tolin et al., 2007; Steketee et al., 2010)。しかし、この治療の十分な訓練を受けたセラピストに出会える患者はほとんどいません。エビデンスにより、溜め込みに対するインターネットを利用した自助サポートグループは有効であると示唆されました。インターネットは健康問題を調べるための大切な情報資源であり、そのなかでも最も多いのは不安に関する問題を、オンラインで情報を集める人です(Tailor, 1999)。溜め込みに関係する他のメンタルヘルス問題へのWebプログラムは良い結果がみられています(例、うつ病、社会不安)(Andersson, 2006; Carlbring et al., 2006)。セラピストがほとんど関与しない、または全く関与しない自助CBTは、OCDや溜め込みの対処に役立つことが明らかにされています(Fritzler, Hacker, & Losee, 1997; Mataix-Cols & Marks, 2006; Pekareva-Kochergina and Frost, 2009)。オンラインサポートグループは、自宅で溜め込みを行い、それをに思い、秘密にしたがり、この複雑な問題に対して身近で取り組みやすい介入を必要としている人たちには特に有効だと予測されます。オンラインサポートグループにより、彼らの自助意欲が高まり、溜め込みに関する孤独感が減少することもあります。最近の研究では初めて、溜め込みに対するCBTをベースとしたオンライン自助グループの有効性が、検証されています。

介入

オンラインサポートグループでは公式に入会手続きがとられ、それぞれのメンバーには、月に一度、実際の活動や目標、進行状況を記入して郵送しなければなりません(活動ステップを参照のこと)。このような活動には、物を仕訳すること、物を廃棄すること、何も買わずに買い物に行くこと、決まった場所を整理し続けてきれいにすること、特別なCBTツールを使用することなどが含まれています。メンバーは「小休止」をリクエストしてよいです(リストマネージャーの承認リストから一時的に外れること。ただしそのリストに自分の力で戻れること)。もしメンバーがマンスリーレポートを郵送せず、小休止をリクエストしなければ、そのメンバーはグループから外されます。メンバーはまた、溜め込みの特徴や治療に関する情報、問題のある思考や、関連リストに取り組む際に役立つワークシートにアクセスできます。彼らはお互いに直接連絡でき、溜め込みに関して話し合い、成功した戦略や資源、写真を共有できます。問題を解決するための特別な環境のなかでお互いに助けあいます。

評価

オンラインサポートグループとキャンセル待ちリストに載っているメンバーに対して、匿名のウェブ調査への参加を、Eメールを通じて呼びかけました。約1年間、3か月毎に、5つの調査が実施されました。各調査には、溜め込み行為やそれに関わる問題、気分、その他のメンタルヘルスや健康面の問題、社会的つながりに関する質問が含まれていました。例えば、the Saving Inventory-Revised (Frost, Steketee, & Grisham, 2004), Clutter Image Rating Scale (Frost, Steketee, Tolin, & Renaud, 2008), Clinical Global Impression scale(Global Improvement item; Guy, 1976)が使用されました。研究参加は完全に自由意思で、参加者のグループへの接触にはなにも影響を及ぼさず、グループリーダーもそのことは知らされませんでした。調査を最後まで終えた参加者には、ギフトカードが進呈されました。

研究参加者の大多数は、女性、白人、中年、非常勤、既婚でした。これはグループメンバーやキャンセル待ちリストのメンバーの特徴と一致しました。調査員は参加者を二つのグループに分けました。最近グループに参加したメンバーと、長期間グループに参加しているメンバーです。最近のメンバーとは、調査開始3か月前から最終調査が実施される15か月先までの間に参加したメンバーです。長期間グループとは、調査開始3か月前以前に参加したメンバーです。メンバーグループを二つに分けることにより、調査者は最近のメンバーと長期間のメンバーに対する効果の比較を目的としました。そして長期間グループは、この研究を開始する前からすでに改善が見られていたと予想していました。実際のところ、そのような結果が見られていました。研究当初には、長期間メンバーは最近のメンバーやキャンセル待ちのメンバーに比べて、溜め込み問題が減ったと報告しました。

調査者は、最近のメンバー、長期間メンバー、6か月間キャンセル待ちリストに載っていたメンバーを比較しました。最近のメンバーは、キャンセル待ちリストに載っているメンバーに比べて、この6か月間で溜め込み症状が大いに改善し、ガラクタも少なくなりました。キャンセル待ちリストに載っているメンバーはほとんど改善が見られませんでした。調査期間(15か月)を終えたとき、最近のメンバーも長期間のメンバーもさらに改善していました。調査者はキャンセル待ちリストに載っているメンバーを比較対象にできませんでした。彼らがこの時点で参加メンバーとして招待されていたからです。これらの結果から、オンラインCBTサポートグループへの参加は、特により長い期間参加しているメンバーにとって、多大な利益をもたらすことが示唆されました。最後に、グループの活動(郵送レポートが少ない)が少なかったメンバーは、レポートを多く郵送したメンバーに比べて溜め込み問題は著しく深刻になりました。このことから、グループに積極的に参加することが有益であると示唆されました。(詳細はMurorr et al., 2010 を参照のこと)

結果

この研究は、溜め込み問題を抱える患者が症状をうまく管理するために、オンラインCBTサポートグループ介入が役立つかどうかを検討した、最初の研究であります。結果によれば、これは期待できる介入であり、アメリカや海外にいる多くの患者に実施可能と示唆されました。オンラインサポートグループの結果は、溜め込みに対する個人やグループ対面療法に比べればやや劣りますが (Muroff et al, 2009; Steketee et al., 2010; Tolin, Frost, & Steketee, 2007) 、より高度なCBTの介入や、セラピストが援助する自宅訪問、セラピストからの最低限の援助がなくても、役立つことが示唆されました。この研究ではさらに、溜め込みに対するCBTを基にした特別な介入法が有効であり、レベルの異なるセラピストでも、個人やグループに対してセルフヘルプ戦略を用いて実施できるという実証が追加されました。また、溜め込み問題を抱えている人はコンピュータの操作やウェブを見ることに長けており、オンライン治療にアクセスさせやすいことが示唆されました。この研究と、Dr. David Tolinやその同僚による別の研究が示すように、溜め込み問題を抱える人は、オンライン調査のほうが安心するようです。この研究では、溜め込み問題を抱える人はオンラインの介入に大変強い興味を示しており、非常に多くの参加者や多くのキャンセル待ちリストがこの10年間にわたり見られるように、彼らがオンラインサポートグループに計り知れないほどの関心を抱いていることが指摘されています。このような方法は、研究結果により支持されている治療(例、溜め込みに対する認知行動的方法)へのアクセスを拡大するだろうし、治療に対するコストも削減できるでしょう。さらに、オンライン介入によって、ピアサポートやグループ介入へのアクセス、この困難な問題への対応に関して十分に訓練を積んだ医師へのアクセスが拡大されるでしょうし、自宅練習も促進させるでしょう。オンラインベースの治療と診察室での治療を統合する人もいれば、オンラインのみで進める人もいるでしょう。増大する需要や要望を前提に、オンライン介入の推進や研究を継続することが大変重要です。

(訳・小林由季)

Are online support groups for hoarding helpful? Considering D.I.T.C.H.

(Delivery of Internet Treatment for Compulsive Hoarding) By Jordana Muroff, LICSW, PhD

OCD Newsletter Winter 2011 Research News

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OCDと併存症

OCDとうつ

一つの石で2羽の鳥をしとめる:OCDと深刻なうつの治療

IOCDF基金プロジェクト

強迫性障害(OCD)は、最も一般的である精神障害のひとつというだけでなく、最も人を苦しめ、機能を奪う障害として知られています。OCDは、人間関係、楽しむための活動、学業や仕事、一般的な生活上の満足度を減少させる可能性があります。驚くべきことではありませんが、一般的にOCDはうつとも関係しています。結局のところ、OCDはうつ的な問題であり、人が日々の生活の中で、望ましくない考えが構築されていき、それが了解不能で強迫的な行動 (儀式)を強いていると考えれば、それを臨床的に理解するのは困難なことではないと言えるでしょう。この見解は、多くの調査研究によって実証されています。これらの調査研究においては、OCD患者の2分の1から4分の1は大うつ病エピソードの診断基準に適合し、数週間に渡る絶えまない気分の落ち込み、あるいは、楽しむための活動を行えない、孤立、食欲、睡眠、性行動、泣く頻度が増す、希望が持てない、価値がないと感じるなどの問題を経験している事実を示唆しています。OCDとうつ病の両方を併発している人々は、まず、うつ病の症状が出現するより先にOCDによる困難を経験しています。この事実は、OCDによる負担への反応として、うつが発生していることを示唆しています。うつとOCDが同時期に(あるいは、うつがOCDの前に起こる)出現するのは極めて異例です。

なぜこれらの事が重要と言えるのでしょうか?何がうつとOCDの併発において重要なのでしょうか?それは、深刻なうつ状態であることは、OCDに対して有効とされる主な治療方(認知行動療法や暴露療法、反応防御法)の効果を低下させることです。すでにご存じかもしれませんが、暴露療法は、強迫観念の引き金となる状況や考えに対して徐々に対決していき、防御反応とは、それらに対する衝動的な儀式から手を引くことを意味しています。例えば、あなたに汚染への恐怖がある場合、治療者は「汚染された」もの(例えば靴)に触る練習し、不安の強さが下がるまで手を洗わずにいることを手伝います。以前述べたように、この治療法はOCDに対する最も効果的な治療法で、この治療を経験した60%から80%の人々には大きな改善が見られます。しかしながら、実質的にOCDである人々の全てが暴露療法を利用しているわけではありません。私の研究では、どのような人がOCDから回復するか、または暴露療法に反応しないかを明らかにすることを目指しています。その中で、患者のうつの度合いが治療成果を推し量る上で、最も有効な指標であることが分かりました。平均的には、うつが深刻なOCD患者は、そうでない患者や軽度のうつの患者と比較すると、その反応は良くありません。これがきっかけで、私はうつになっているOCD患者について考える様になったのです。

まず第一に、なぜうつ病のOCD患者は、そうでない患者と比べて上手くいかないのかと疑問を持つかもしれません。どのようにうつは、暴露療法や反応防御法の障害となるのでしょうか?ひとつ言えることは、あなたがもし強いうつ状態にあったとしたら、曝露療法や反応防御法のような努力を要する治療法を継続することが困難だということです。事実、うつはあなたを無気力にしてしまうので、多くのエネルギーを要するような活動自体を続けることや努力をすること自体が困難です。また、うつはあなた自身について、また未来について否定的に感じさせます。結果的に、OCDから改善するために取り組むことに価値を感じられないのです。うつは、曝露療法で起こる不安や不快感の減少が起こらないことに対して苛立ちを感じさせるため、結果的にこの治療の中で強迫的な不安が減っていくことを学べないのです。OCDと深刻なうつ病にある人々は、両者共に曝露療法の効果を体験できないため、OCDでうつ病を併発している人々が多いという現実につながり、これが大きな問題となっているのです。

私がうつ病のOCD患者と取り組みを始めた時には、まずこれまでに行なわれてきた治療法を読み返すことから始めました。最も一般的な方法は、曝露療法と共に抗うつ剤を使用することでした。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(例:プロザック、ルボックス、ジェイゾロフト)がうつとOCDの改善に貢献することは妥当であるように見えました。幾つかの研究(ほとんどが古いもの)では、うつのOCD患者に対して、曝露療法と抗うつ薬による治療の有効性について検討されています。しかしながら、これらの報告は、うつは改善されるものの、OCDの症状に対する曝露療法の効果に寄与しているとは言えないことを示唆していました。私の研究では、他にも興味深い発見があります。それは、うつのOCD患者が私たちのクリニックを訪れる前に、すでに多くの薬物療法を試してきていることです。この事実は、これまでの治療法が患者たちの満足いくものではないこと(結果的に、まだ助けを必要としていること)を物語っており、薬物療法以外で、うつのOCD患者を支援する必要性があると考えられます。

以前Mayoクリニックにあり、現在は、北カリフォルニア大学にある私の研究グループでは、OCD Foundationから基金を受託し、うつ病のOCD患者に対して認知行動療法を施行し、曝露療法や反応防御法を利用することを目指す心理療法の有効性を開発、検討する機会を与えられています。この治療法は、OCDを克服するための曝露療法や防御反応法に合わせた、認知療法、または行動療法を織り交ぜでいます。初期の治療セッションにおいては、効果的に曝露療法や防御反応法に取り組めるモチベーションを高め、うつを乗り越えることが出来るような考え方や行動について教えます。

例えば、うつがとても深い時、人は極度に否定的になり、自分自身について(例:自分は失敗者なので良くなるはずがない)、周囲の世界について(誰も私を愛していない、世の中はひどい場所だ)、未来について(希望が持てない感覚:決して良くはならない、自分には全く希望なんてない)というように悲観的になります。そこで、より現実的な考えを形成することを目的にします。それは、ただ単に前向きな考えとは限りません。例えば、自分が完全な失敗者であると捉えるよりも、自分の力や限界として考えてみるのです。自分が完全な失敗者だと信じ込んでいる人は、認知療法は「みな能力があるが、その限界もあるのだ」と考えられるように助けます。OCDになることは、自分の一つの問題に成りえるけれども、それは自分が完全なる失敗者という意味ではないのです。自分がよくできることは、何かしらあるものです。うつへの行動療法は、行動を続けることにより、新しい考え方を身につけるように励まします。つまり、その人が生活の中で、楽しめるような活動をすることを助け、人と関わったり、趣味を持つことなどです。私たちは、数週間は否定的な考え方に取り組み、楽しめる活動を行えるようにすることが、うつのOCD患者は、強迫観念や衝動を乗り越えていく自信を持つことができることを知りました。

患者にどのように自分自身について考えているか、どのようにOCDを減らすために取り組むやる気を高めるかを教えた後に、治療全体を通して繰り返し行われる暴露療法と反応防御法について説明をします―通常、16-20セッション(宿題で行う練習を含む)で行われる。結果は良好で、治療を継続する患者の3分の2は、OCDの症状を50%以上減らすことができます。比較として、数年前に行われた調査では、うつについて的確な指摘を行わないと、うつのOCD患者は大きな改善を見せないことを指摘しています。

私の北カリフォルニア大学のOCDプログラムでは、治療を受けたいけれども、深刻なうつにある患者にこの治療法を用いています。確かに他では改善を見せなかった患者の多くを助けることに、この治療法は成功していますが、すべての人を助けることができるわけではありません。いくつかの症例では、我々が受け持ったうつのOCD患者は入院の必要があったり、OCDに取り組む以前に、抗うつ剤の治療によりうつ症状を安定化させる必要のある患者もいました。

研究者にとって重要な仕事の一つは、治療者と患者にとって助けとなる発見を知ってもらうことです。私たちは、研究の結果をカンファレンスで発表したり、研究に関する記事を書いたり、うつとOCDの包括的なプログラムに関するワークショップを行うことで、普及が進むように最善を尽くしています。私は、このOCDニュースレターで筆をとることができ、以前の研究で発表したことや執筆したことを紹介できることに喜びを感じています。連絡を取りたい場合には、jabramowitz@unc.eduにメールをいただければと思います。深刻なうつにあるOCD患者に対する治療プログラムのマニュアルのコピーを添付させていただきます。もしあなたがうつとOCDの両方を経験している場合、このマニュアルをあなたの治療者に渡すとよいでしょう。もしあなたが治療者でしたら、あなたの取り組みの助けとなることと思います。

(訳・新明一星)

by Jonathan Abramowitz, PhD, ABPP - 北カリフォルニア大学

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OCDとASD

OCDとASD(Autism Spectrum Disorders) が併存した場合の治療法

OCDを治療することはただでさえ困難です。しかしほかの疾患と合併した場合には一層難しくなります。研究結果によると92%のOCDの患者がOCDの他に少なくとも、もう一つの精神疾患に悩まされています。セラピストたちは合併する疾患のことを(Comorbid:併存症)と呼びます。

OCDの患者の併存症は平均して一人当たり3つの疾患です。(LaSalle et al.2004)

OCDと併存する疾患のなかでよくある疾患の一つがAutism Spectrum Disorders (ASD)です。ASDはDSM-Ⅳのなかで広汎性発達障害のカテゴリーに入り、自閉症やアスペルガー障害を含みます。

この記事の目的は、患者・家族・専門家たちにOCDとASDが併存した場合にどのような難しさがあり、どのようにすると成功しやすいかの情報を提供することです。

OCDに関する行動、たとえば不安、反復的な様式(習慣)、対人関係の問題はASDでも典型的な症状です。表面的にはASDとOCDは似ていますが、そのような行動に駆り立てるものはかなり違いますし、治療法は違っていきます。OCDの治療法をOCDとASDが併存する場合に用いることは効果的でないことがありますし、逆もしかりです。

どのような行動が、OCDからくるもので、どのような行動がASDからくるものなのかを同定することは重要です。この作業が一番難しいとされています。ほかの難しさは以下のようなことです。

内省する力が乏しい事

・感情的に、社会的につながることが難しい事

怒りが爆発してしまう事(怒りのマネージメントができない事)

気分が頻回に、極端に、予想困難に変わること(感情コントロールが難しい事)

衝動性

典型的なOCDの患者は強迫観念と強迫行為の関連性について内省することができます。不安の中にある恐怖や、不安を緩和するための強迫行為を同定することができます。典型的なOCDの患者は一般的に普通の人が行う行動と変わっている強迫観念・強迫行為を区別することができます。彼らは、これらの行動が障害になっていることが分かります。しかし、OCDとASDが併存している患者は多くの場合内省することが苦手です。彼らは、強迫行為が変な行動だとは思いません。彼らの強迫行為は強迫的な不安からくるものではなく、自己完結的な儀式(self contained rituals)です。たとえば、OCDの患者もASDの患者も強迫的にスイッチを入れたりきったりするかもしれません。OCDの患者であったら、切迫した災難、外的な恐怖を認識しそれを避けるための儀式です。このような儀式で得られる喜びは、「この儀式をしなかったらどのような悪いことが起こるであろう」という考えからの一時的な解放感です。

一方、ASDの患者がスイッチを入れたり切ったりすることは、恐怖感から強迫的にするのではなく、その行為そのものから自身を落ち着けるような感情を得ているかもしれません。概して、ASDの患者にとって強迫行為は喜びをもたらすものなので、行動を変えることに何の興味もありません。強迫行為がポジティブで助けになる行動だと思っている場合さえあります。

OCDとASDが併存している場合、診断と治療が成功するためには、どの行動がOCDによるものでどの行動がASDによるものかを同定しなくてはなりません。たとえば、ASDと診断された人に対して強迫行為をさせる恐怖を分析させようとすることは意味がありません。なぜならOCDの患者のように恐怖から強迫行為をしているわけでないからです。同様にして、OCDで苦しんでいる人にたいして、恐怖を取り扱わず行動療法だけすることも有効ではありません。

OCDもASDもそれ独自の治療法が必要なのです。OCDの強迫行為に対する典型的な治療法は先行刺激をコントロールすることです。つまり強迫行為を起こさせる考え方のプロセスや恐怖をコントロールします。セラピストは長時間曝露させ反応を妨害させ、自然に不安が和らぐことを体験させます。

しかし、ASDの患者にとって不安は違う理由から訪れます。衝動、刺激過多、社会的なヒント(Social cues)の誤解によります。治療法のアプローチとしては結果としての行動のコントロール、たとえば習慣そのものを治療するということになります。

行動療法のテクニック、たとえば怒りのマネージメントや行動を減らしていくテクニック(desensitization technique)、報酬による代償行動の強化などを用いて行うことができます。

ASDが併存しているOCD患者の治療で難しいのは、ASDに固有の社会的な交流の問題です。社会的な交流の問題は行動療法家とうまくかかわるのを難しくさせます。基本的なソーシャルスキルトレーニングができることは行動療法を成功させるために必須です。

(訳・蟹江絢子)

Treatments for Obsessive-Compulsive Disorder Comorbid with Autism Spectrum Disoeders

By Eda Gorbis,Ph.D.,LMFT,Assistant Clinical Professor at UCLA and Larissa Dooley,B.A.

OCDNewsletter 2011 Summer

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OCDと検査

OCDと検査

強迫性障害の症状を測定する:共通の手段と技術

OCDの有病率と深刻さが認識されるにつれて、近年アセスメントや治療に注目が集まっています。最近では数々の方法が強迫性障害の症状をアセスメントするために使われています。診断面接、臨床診断面接、自己記入式質問紙、両親からの報告式質問紙などです。実際に、過去数年において、多くのOCDの計測方法が作られ、出版されました。しかしながら、これらをすべてお話しすることはできません。この記事はSouth Florida大学のOCDのクリニックで用いられているもののなかで、専門家が初診時に何を使うかという目線から選んだものについて述べています。

診断面接(Diagnostic Interviews:DSM-IV)

子供のOCDの研究において、構造化された面接によるアセスメントはしばしば行われていますが、一般的なクリニックでは多くありません。診断面接は診断と鑑別診断をするために使用されます。DSM-IVの診断基準にそって診断面接は行われます。私たちのクリニックでは大人用の不安障害のインタビュースケジュールを大人に、子供と両親用のそれを子供と思春期の患者に使います。

疾患によって分かれて書かれているDSM-IVの臨床的な構造化面接もよく使います。中心的なクライテリアを満たすものが発見された場合、疾患にそった細かい質問をします。

臨床診断面接(Clinician-Rated Instruments)

訓練した治療者が疾患に関連した質問票を施行し、機能不全と障害に対して点数をつけます。臨床と研究で一番よく使われているものがYale- Brown Obsessive-Compulsive Scale (YBOCS)とthe Children’s Yale-Brown Obsessive- Compulsive Scale (CYBOCS)です。訓練された臨床家から患者へ、過去数週間のOCDの症状と重症度の面接が行われます。

Y-BOCSとCY-BOCSはいくつかのパートに分かれており、様々な強迫観念と強迫行為を聞き、その症状に対する重症度をみます。例えば、強迫観念と強迫行為にかかった時間やそれによる障害について聞きます。すべてのアイテムのスコアは個人の報告や両親や兄弟のレポート、行動観察の情報をもとに治療者が決定します。

自己記入式質問紙(Self-Report Instruments)

OCDをアセスメントするにあたって自己記入式質問紙の利点は、すぐに終わることがきること、一人でできること、何人もの人に同時にやってもらえることです。

スクリーニングの質問紙としては便利で、研究に参加する可能性をもった人や治療を必要とする候補として同定されます。さらに、人々は自分自身で質問紙を埋めることにより快適さを感じます。これは臨床家からの見逃しや過剰報告をふせぎます。

しかしながら、欠点もあります。例えば、「時々」や「しばしば」という選択肢は個人の解釈によって変わってきます。さらに、フォーマットや質問の言葉を理解するのが難しいことがありますし、適切な注意を保って答えない場合もあります。

最後に、広くて変化に富んでいるOCDの症状のため、自我親和的な症状は、自分自身の機能障害ではないと捉えられている場合があります。

South Florida大学のOCDクリニックで、私たちはFlorida Obsessive Compulsive Inventory (FOCI) と自己記入式にした Obsessive Compulsive Inventory- Revised (OCI-R)を使用しています。FOCIは症状のチェックリストは、症状の重症度と機能不全をアセスメントするための5つの質問です。チェックリストでは個人は20の強迫観念・強迫行為があるかないかを答えます(10ずつです)アイテムの重症度は5つ(時間、妨害、苦痛、抵抗、コントロールの程度)で重症度の合計をだします。OCI-Rは84アイテムあるOCI をもとにし18アイテムの自己記入式質問紙です。特定のOCDの症状の妨害や苦痛の程度を被験者は記入します。

FOCI と OCI-Rの他にも自己記入式の質問票があります。自己記入式Yale-Brown Obsessive- Compulsive Scaleは 症状のあるなしと症状の重症度を同時に測るものです。Leyton Obsessional Inventory Short Form は30アイテムの自己記入式質問紙で、大人と子供に使用できます。よくある症状にはい/いいえで答えます。

Maudsley Obsessional Compulsive Inventory(MOCI) は30のよくある強迫観念と強迫行為を正解/不正解で答えます。改変式Padua Inventory( Revised )39の強迫観念と強迫行為と妨害の程度によって5点満点で評価したものです。

他の方法

子供を対象にしたものでは、両親が子供の行動をみる質問紙として Child Obsessive Compulsive Impact ScaleまたはChildren’s Obsessional Compulsive Inventoryがあります。前者は症状のあるなしと重症度をみて、後者はOCDによる障害をみます。

家族の症状への巻き込まれをみるものとしては、Family Accommodation Scale (FAS)があり、よく家族に渡されます。FASは他の家族が患者の強迫観念や強迫行為に保証を与えたり、強迫行為を完了させるために手伝ったり、行動の期待をさげたり、家族の行動や習慣(ルーチン)を変えたり、苦痛を起こさせる物や場所や経験を避けるのを手伝ったりしながら患者の強迫観念と強迫行為に巻き込まれているか見るものです。

(訳・蟹江絢子)

Measuring Obsessive-Compulsive Symptoms:Common Tools and Techniques

By Eric A. Storch, Ph.D. IOCDF Expert Opinion

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OCDと治療

OCDと薬物療法(グルタミン酸)

OCDの研究の新しい局面とグルタミン酸の潜在的重要性:我々はより良くより早く治す治療と構築することができるか?(IOCDF treatment)

OCDの第一選択は認知行動療法またはSSRIの薬物療法またはその併用療法です。しかしながら、約1/3の患者がこれらの治療や第二選択を用いても症状が改善しません。改善した患者の中でも2、3か月後に再発する者がおり、治療が完全ではありません。より良くより早い治療を構築することが最新の研究です。

OCDとグルタミン酸

現行のOCDに対する治療法は、2つの神経伝達物質(脳の化学合成物質)を標的としてます。:セロトニンとドーパミンです。しかし、OCDにおいてここ8年間ほどで注目されてきているものがグルタミン酸の関与なのです。グルタミン酸は脳に一番豊富にある興奮系の神経伝達物質です。実質的な神経伝達回路の中で神経細胞同士を伝達させるのに不可欠な物質です。高いグルタミン酸のレベルは脳に障害を与えます。グルタミンを調整する治療(脳のなかのグルタミン酸に影響または普通のレベルにする)はALSや脳梗塞で試みられています。

様々な情報からのエビデンスによると異常なレベルのグルタミン酸がOCDに関係しているのではないかとということを示唆しています。ドイツのRuhr大学は薬物療法のされていないOCDの患者の髄液を検査しました。精神的に健康な群よりも、OCDの患者において髄液のグルタミン酸は高い値でした。髄液は脳の中を循環しているため、OCDの患者は脳において高いグルタミン酸に曝露されていることが示唆されます。これと似たようなOCD の患者でグルタミン酸が高いという研究はWayne州立大学や他の場所でMRスペクトロスコピーを用いて行われています。

OCDの患者においてグルタミン酸が脳内で高いという事実があるかあらといって病態に関係しているとはいえません。グルタミン酸の問題は原因ではなく結果の可能性もあります。しかしながら、最低でもいくつかの種類のOCDでグルタミン酸が原因であるということを最近の研究は後押ししています。2006年にTronto大学とChicago大学が個別に脳内でグルタミン酸を運ぶタンパクがいくつかのOCDのケースに関連しているという研究を報告しました。MGHとJohns Hopkins大学も最近の研究で同様のことを発見しています。遺伝的にOCDとこのタンパクの関連性とこのタンパクの機能的問題の関連性は明らかではありません。しかしながら、ニューロンの外ではこのグルタミントランスポーターのタンパクはグルタミン酸を増やすことが分かっているため、脳においても同じことが起きていると説明することが可能であれば、それがOCDの症状を引き起こしている可能性があるといえます。

脳のなかのグルタミン酸の量の変化はネズミにおいて、OCDのような行動を起こします。Duke大学の研究者はそのネズミは不安を感じ強迫的に身繕いをすると表現しています。SAPAP3遺伝子が欠損するようにネズミを遺伝子的に変化させます。SAPAP3遺伝子はグルタミン酸レセプターの重要な一部です。不安と強迫的な身繕いはSSRIというOCDの治療薬によって改善します。少量の短期間のSSRI投与は強迫的な行為を改善させませんが、長期間投与すると効果がでます。OCDの患者でSSRIを服用するのと同じパターンです。

SAPAP3遺伝子がOCDと関連しているかどうかは未だ明らかではありません。Duke大学とJohns Hopkins大学におけるOCDの患者で行った遺伝子研究によると、OCDとは関連はしないが、身繕いと関係する抜毛症とは関連あるという予備研究のエビデンスがあります。言うまでもなく、これらに似た動物モデルは脳のグルタミン酸の変化とどのようにニューロンが反応し強迫行為に導くのかを理解するのに役立ちます。

グルタミン酸を標的とした薬物療法

現行にあるOCDの治療に反応しない患者に脳内のグルタミン酸と関連した薬物療法をすることは可能でしょうか。それらの治療法に対する確固としたエビデンスはありませんが、私たちのクリニックにおいてそれは先駆けて行われました。

幸運なことに、グルタミン酸のレベルに影響する薬は他の疾患においてFDAにおいて認可されているため、研究や臨床的に使用することは可能です。そのような薬の一つは1996年からALSにおいて使用されているriluzole(Rilutek商品名)です。riluzoleは様々な方法でグルタミン酸レベルを変化させます。2005年の初めのオープンレーベル研究や2008年のケースシリーズは、SSRIにriluzoleを追加した場合、薬物に反応しなかった重症なOCDの患者の約半分に反応することが分かりました。NIMHの研究では子供のOCDとriluzoleにおいて似たような結果になりました。大人と子供のOCDに対する二重盲目試験はすでに始まっています。

2番目のグルタミン酸に影響しFDAに認可されている薬物はmemantineメマンチン(Namenda商品名)です。たくさんのケースレポートと2つの最近のオープンレーベル試験では子供と大人のOCDにおいて標準的な治療にmemantineを加えることで効果があるのではといわれています。riluzoleのケースであったように大規模にし、プラセボ対象試験を行わなう必要性があります。

3番目の薬物療法、N-acetylcysteine(NAC)はOCDに対して限定的ではあるがエビデンスがあります。NACは処方箋なしに薬局で買うことができます。アセトアミノフェン過量服薬の患者から肝臓を守るために使われる抗酸化作用をもつ物質です。South Carolina医大の研究ではNACは脳のグルタミン酸を変化させるという研究を動物においてしめしています。現在ある薬物療法に加えてNACを追加した患者で症状が劇的に改善する例を何度か経験しました。何人かのOCDにおいて、出版された研究はありませんが臨床的に効果があるのではと私のグループや他のグループは提案しています。強迫的または衝動的な行為障害である病的賭博や抜毛症や薬物を渇望する疾患においてコントロールされた研究があり効果をしめしています。高価ではなく、明らかな副作用もなく、市販で手に入る薬であるので魅力的な治療の選択肢になるかもしれませんが、エビデンスは限られています。

うつ病とグルタミン酸・強迫観念に対する早く効果が出る薬

グルタミン酸の異常なレベルはうつ病においても重要な役割を果たします。上記の薬物の研究はYale大学やNIHや様々な場所で行われています。うつ病と強迫性障害という2つの同時によくみられる疾患でグルタミン酸の問題はどうして違うのかということです。

グルタミン酸は神経伝達物質で一つの細胞から他の細胞へ伝達させます。ニューロンはグルタミン酸が受容体(脳内の化学物質のメッセージの受けるもの。電話を受ける携帯電話ように)である特別なタンパクに結合したときに作用します。グルタミン酸の量の変化はこれらの受容体を活性化するように神経細胞を変化させます。グルタミン酸にはいくつかの受容体があります。一番重要なものはNMDA受容体と呼ばれます。NMDA受容体に効く薬は速攻で顕著に抗うつ薬効果を示します。OCDとうつ病でのSSRIの作用発現時間とは、対称的です。この研究は1998年にうつ病の患者においてNMDAに作用するketamine・ケタミンを1錠だけ服用した患者が最低1週間は良い状態が続いたというものです。ketamineは1-2時間「高い(興奮)」状態を作り出します。24時間後が最も効果があり、それが1週間持続することは、ただ「高い(興奮)」になる状態の結果ということでは説明できません。2006年のNIHの二重盲目試験でも、驚くべきことに予期せぬこの結果が再現されています。

MemantineはNMDA受容体に作用しますが、ketamineよりも効果は弱いです。

うつ病におけるNIHのmemantineのコントロール試験では残念ながら効果がないという結果でした。NMDA受容体に作用する新しい薬は開発中です。

Ketamineは文句なしにうつ病の薬となりえるのでしょうか。ketamineの抗うつ効果は1週間または2週間続きます。ケタミン依存や乱用の可能性があるため長期的に使用する場合には保護された環境でないと難しいです。精神的な症状、不安や悲しみや、見当識障害やフラッシュバックや幻聴が起きる可能性があるため、広く普及するのは困難です。しかしながら、ketamineの限られた研究では重症のうつ病や治療抵抗性のうつ病に利用可能であることが分かりました。また、即効性の抗うつ作用があるということはうつ病の治療に対する新しい扉をあけました。ketamineのような副作用はないが効果はある新しい薬物に開発が望まれます。

これらの客観的な研究はOCDの研究において新しくて魅惑的な可能性をもたらしました。もしグルタミン酸がOCDとうつ病に関連していて、ketamineが即効性のある抗うつ作用をしめすのならば、グルタミン酸やNMDA受容体に作用する薬はそれに似た薬はOCDに効果があるのでしょうか。うつ病はOCDとともに併存します。NMDA受容体に作用するketamineのような物質は両者に効果があるのでしょうか。面白いことに、ケタミンの抗うつ作用は従来の薬物療法や精神療法にくらべて即効性があるのです。従来的には重症なうつ病に対してECT(電気通電療法)が行われてきました。しかしながらECTはOCDに対して効果がありません、そして即効性のある薬はないのです。この不運が変わるかもしれません。

まとめると、神経伝達物質であるグルタミン酸の異常な上昇はOCDの原因ではないかというエビデンスがたくさんでてきており、新しい治療をより実りのあるものにしてきました。うつ病とOCDは併存しやすくグルタミン酸の問題が両者に関連していることからketamineの予期せぬ即効性のある抗うつ作用は抗強迫観念作用となる可能性があると言えるかもしれない可能性があります。ketamineとOCDの研究は出版されていませんが、分子や細胞やシステムレベルの理解では新しい即効性があるより良い治療法の一つとなりそうです。

注:グルタチオンはNACから合成される。NACを摂取しグルタチオン濃度を高めると、活性酸素の障害作用から防御される。パントテン酸、ブロッコリーのスプラウトのスルフォラファン、クルミン(カレー粉)もグルタチオン濃度を高める。 (訳・蟹江絢子)

New Horizons in OCD Research and the Potential Importance of Glutamate:

Can We Develop Treatments That Work Better and Faster?

By Micheal H.Bloch,MD,Vladimir Coric,MD, and Christopher Pittenger,MD,PhD

International OCD foundation (HP) Treatment of OCD

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OCDとERP

認知行動療法を有効にセラピーで生かす方法

私は、認知行動療法の行動活性化の一部である「曝露反応妨害法(以下、ERP)」を好んで取り組んでいます。なぜならば、ERPは即効性や信頼性があり、道理にかなっていて、効果的だからです。私がいつも敢えて言わせてもらっているのは、ERPはOCDと診断された人が適切に行うと効果があるということです。私は、患者がERPに対していかにモチベーションを上げられるかに尽力しています。ERPが、患者がしたいことや安心感、リラックス、「気持ち良い」と感じることと正反対であると重々承知しています。しかし飲み込まないと、薬って効かないのです。このコラムでは、ERPを実施する際に患者のモチベーションが上がるような認知的な方策を提供していきます。

認知的な介入は、日常生活を通して効き目があると分かりやすい行動的な介入と異なります。つまり、認知的な介入には、効果があると知られていても、有効性を持続させる根拠がありません。以下に、OCDの患者が、厳しい曝露療法に耐え続ける際に、有効であると言われている点を挙げます。

ルームメイト

仮にあなたが、我慢できないようなひどいルームメイトと住んでいるとします(男性の場合は、同性と考えてください)。家の契約上、あなたが彼女を部屋から追い出すことはできません。しかし、彼女はあなたの頭を狂わせます。彼女が引越しをしようと決めるかもしれないとあなたが願う事はできます。また、たまたま彼女がボブ・ディランを嫌っていると知ったとします。あなたもボブ・ディランが大嫌いなのに、彼の音楽をいつもいつの間にか弾いているとしましょう。これが20回以上にもおよび、苦悩を引き起こしているので、あなたはこの不快感に耐えようとします。このルームメイトはOCDであり、あなたはOCDを排除したいのです。

本来、グラス一杯のミルクを飲んだ後、ほとんどの人はグラスをすすいでディッシュウォーッシャーの中に入れます。このような些細な行動が、洗浄強迫タイプのOCDの人にとって難しいのです。私はそんな時、ミルクを飲み終わったら、すすがずに、一晩乾かすためにカウンターに置くように提案します。OCDでない人は、私がこう提案するとぎょっとするでしょう。もちろん普通の人でも嫌な感じがすることですが、洗浄強迫の人ならばなおさら嫌な感じがします。しかし、まさにこれがOCD、つまり悪魔のルームメイトで、不安を引き起こすのです。だから、このルームメイトを追い出すために曝露によって不快感に耐えるようにします。強迫的に完璧主義の人の場合、使用済みのコーヒーカップ又はミルクグラスをすすがずに乾かす練習がまさに必要なのです。

様々な方法に挑戦してみることで、徐々に治療的な効果が得られるでしょう。

多くのERPは、この「ルームメイト」モデルによって不安に耐え得るように構造化されています。例えば、手を洗わないようにする等。「〜した後に手を洗わないなんて最悪」と思っても「オッケー、それが嫌なら、引っ越せば?」と嫌悪感の元になっているOCDに言ってみましょう。OCDは状況を不幸にする住人なのです。あなたは、OCDは追い出せるとわかっているのだから、不快感に耐えるようにしてみるのです。

OCDに対する認知的な介入と違って、行動的な介入は永遠に続ける必要はありません。例えば、ひざの手術をした数週間後、作業療法士が足でおもりを動かすように言います。これは一風変わったもので、リハビリが終わったら、それは終了となります。同様にOCDの治療として「曝露」(と反応妨害法)をするように勧めますが、治療目的が達成されたらやめてもいい変わった行動がしばしばあります。

ここでは、完璧主義をコントロールできるようになるための行動的な介入を紹介します。適切な質や正確さのレベルが自分で選べるようになり、完璧主義を暴走させないようにすることが最終的な目的です。

タイプミス

故意に誤字のあるEメールを送ることはあるでしょうか。それはないでしょう。もし誤字があると気付いたら、訂正します。これは、もしかしたら私もちょっとした完璧主義者かもしれません。私は、良い仕事をすることを誇りに思っているようです。基準を高く持つことは悪いことではありません。しかし、OCDの人のように、一見良いアイディア見つけても、痛々しい程過剰にそれに執着してしまうと、完璧主義が問題となってくるのです。

まず、私たちは全てのメールが同じ形式ではないと気付く必要があります。例えば、兄弟、自分の上司、大勢の人宛にメールを書くこともあるでしょう。メールの活字上の誤りは多種多様で、結果としてそれぞれのシチュエーションで異なってきます。

また、誤字の全てが同じであるとも言えません。メールを打つ時に、ピリオドの後に1つか2つスペースを空けるかと思いますが、どちらが正しいでしょうか(昔のタイプライターは一般には2つスペースを空けるように教えられていたようですが、プリンターのスペースは1つなっているようです)。私が思う些細なタイプミスとは、 通常はスペースを1つ空ける人が、時々2つ空けたり、 またその逆をすることです。私が今そうしていたのですが、気付きましたか?どちらも正しいのだから、形式が一貫していることがタイプミスとはなりません。もっとも、書籍では首尾一貫していない形式は誤りであるとされますが、読者がスペースの違いに気付かないのは偶然です。

次に私が「深刻な」タイプミスだと思うのは、文の途中で2つの単語の間にスペースを2つ入れることです。更にもっと深刻な誤りは、2語間のスペース挿入です。多くの人はそのミスに気付きますが、深刻にはとらえません(友人宛のメールよりもニュースレターの方がミスに気付き易いですが)。次に間違えが多いのは、”the” を “het” “teh” と打ち間違えることです。もう一度言いますが、おそらくこれが間違えであるとは気が付きますが、”yuo “ と打ってあった場合、何と打ちたかったかはわかるし、それを見て手間取ったり、気にし過ぎたりはしないでしょう。もっと創造的にタイプミスをしてみましょう。puttingwとかlotsofとかlitttleみたいに。”you’re” と打ちたい時に ”your” と打ってしまうのは気を付けたいことですが。ケアレスミスと識字力には大きな違いがあります。それに、もしケアレスミスで私を無学だと思う人がいても構いません。

完璧主義の人にお勧めしたい方法としては、全てのメールにわざとタイプミスを入れることです。偉い人にメールするときはちょっとだけ、例えばピリオドの後に余分なスペースを入れてみましょう。親しい友人や身内に送るときは、たくさんタイプミスを入れましょう。全く完璧主義ではない人でも、メールと言えばこのやり方でいれば、精神力が鍛えられるし、すごく気になってしまう分野でも完璧でなくても我慢出来るようになるでしょう(完璧主義者の衝動に抵抗する)。完璧主義がコントロール出来るようになったら、わざとタイプミスを入れるのを止めてみるのです。

(訳・奥山紗由)

Clinician’s Corner By Bruce Mansbridge,PhD Director,The Austin Center for Treatment of OCD

OCD Newsletter Winter 2011

OCDとERPの場所

曝露反応妨害法は診察室の中でやるべきか外でやるべきか

OCDにおいて曝露反応妨害法(以下、ERP)は効果的な治療法であるのに関わらず、ERPを受けた人全員が治療に完全に反応するわけではありません。さらに、たくさんの人が治療からドロップアウトしており、治療法を始めない人や日々の生活に用いることができない人もいます。このため、研究者たちはOCDの治療法を最大限に引き出すための他の方法を提供するために努力をしています。ERPを般化させて完了させるのを手助けする一つの方法は、診察室の外でセッションをすることです。私たちのセンターはOCDの症状を呈している患者を、セラピストの診察室の中で治療する群と診察室の外(患者の家または他の環境)で治療する群に分けて比べました。

ERPをセラピストの診察室の外で提供することは、従来通りに診察室の中で提供するよりよいのではないかという予想が立てられます。例えば、いくつかの状況や引き金は、病院や診察室の環境では再現できない、または診察室で行われると特には不安を惹起させないことがあります。例えば、「作った食事がきちんとできていない」という強迫観念を持っている患者に、「食べ物をセッションに持ってきたり診察室で料理したりすること」はできません。彼の子供を傷つけてしまうという衝動をもっている患者は、彼の家でやっているほどセラピストの診察室で鋭い刃物を近づけることができないことに気づくかもしれません。さらに、従来の診察室の中で行われるERPでは、他の環境への般化が、何回か家の中で行われるセッションをしないとできないかもしれませんし、ある種の曝露療法は、一人で家で試してみるには不安を惹起させすぎてしまうかもしれません。

一方で、多くの患者にとって従来の診察室の中で行われるERPは、診察室の外で行われるものと同等の効果があるかもしれません。もしこれが正しいのであれば、状況に応じて診察室外や家でするセッションを用いることがありますが、治療者は診察室で完了するような多くのケースに自信を持つことができます。

OCDと診断された患者に対して、診察室の中または外でERPを施行したものを比べる試験は今までありませんでした。国際OCD財団の援助を得て、私たちは14のセッションを診察室内またはOCDの症状がおきる診察室外(家や他の環境)で施行し、それらを比べる研究をしました。この研究は2007年に行われました。OCDにおける診察室内中心または家中心の行動療法:予備研究(Behavior Research and therapy,45,1883-1992)を参考に、一つのセッションは90分で、多くのセッションは2週間おきに行われました。1回目のセッションは診察室内で行われ、セラピストよりERPについての教育が行われ、クライエントと一緒に不安階層表を作成しました。セッション3~14回は診察室内のグループは診察室内で、家のグループは診察室外で行われました。参加者達はランダムにどちらかの群に割り付けられたため、どちらの群も症状は多種多様でした。28人が研究に参加して、14人が診察室で治療が行われ、残りの14人の治療は症状がいつも起きる場所で行われました。

ERPを始める前に私たちはOCDの症状の重症度、抑うつの症状、人々の生活にどの症状が妨害になっているかをアセスメントしました。これらの質問は治療が終わった後にも繰り返されました。その後3か月と6か月の時にも繰り返されました。

結果としては診察室内で行われる療法も診察室外で行われる療法も、同等にOCDの症状を緩和して軽減し、うつの症状を改善させました。これらの改善は6か月間持続しました。診察室内に割り当てられたグループでは全てのセッションを診察室で行うことを厳密に求めたため、この結果はある種驚きでした。例えば、ここは病院が主体となっているクリニックであるため、セラピストたちは公衆のトイレや病院内の公共の場で曝露の実践をすることも多いです。この研究期間の間、診察室内と割り付けられたグループは公衆の病院のトイレを使うことをせず、診察室内にとどまるようにとされました。それにもかかわらず、診察室内という厳しい指示の中でも患者達は非常によくやりました。セラピストや患者は診察室内という環境でとても創造的になって役に立つ曝露を考えたという逸話があります。例えばクライアントは汚染物を診察室内に持って来たり、小さな機器を使ってチェックしないようにしたり、愛する相手の写真を手に握りながら、愛する人を傷つけてしまうのではいかという攻撃的な考えに曝露したりしました。

多くの患者にとって診察室内で行われる療法は診察室外で行われる療法と同等に効果があるということは大いに励みとなります。診察室外の治療法は臨床的にも(例えば、家中心の療法はセラピストが移動しなくてはならず、費用対効果が低い。セラピストがみられる患者の数が減る)患者の個人的にも(セラピストが部屋にあがることが少し不快であったと感じる)挑戦的です。そのため、家または診察室外での治療は、患者が家から出られない、またはセラピストと患者の相互が部屋のセッションが必要であり、ERPの効果が最大限にいかされると考える(溜め込みの患者と家で一人では曝露ができない人)特別な環境の時のみでもいい治療法です。

(訳:蟹江絢子)

Exposure and Response Prevention for OCD:Should it be conducted in or out of the office? By Karen Rowa,PhD,C Psych.

OCDNeweletter 2010 Winter Research News

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OCDと語り

OCDの治療としての語り

この筆者のウェッグ先生はアメリカのニュージャージーにあるストレスと不安施設の創設者であり、臨床心理士です。「語りを通してのOCDの治療法」(日本語の訳は未)という本を最近出版されました。

私は最近OCDについての本を読みました。その本は、OCDの症状や治療法を説明するときに、語りや比喩を使用することに頼っていませんでした。このことは私がみてきた臨床現場にもあてはまることです。一方で、OCDの局面が語られるときに、その概念を説明するために聞き手が共有して知っているような逸話や描写が使われることがあります。OCDにおいてありふれており、親しみやすいであろうものは、「OCDはいじめっ子」で強迫観念は「頭の中のしゃっくり」というものです。しかしこれらは、氷山の一角です

語りがどうしてOCDの専門家に人気があるかについての理論があります。一般的に言って、ある意味で変わっていて、複雑で説明するのが難しい何かを人々と共有しようと試みるとき、人々は聞き手に親しみやすいような共通認識を探し要点を明確にします。例えばOCDは専門用語で説明するのはわりと簡単ですが、十分に理解することは困難です。通り一辺倒の説明では教えることはできません。

私は強迫観念と強迫行為の臨床的な関係性について教わったときのことを今でも覚えています。強迫観念はあなたを怯えさせるようにやってくる腹を空かしたライオンで、もしを与えるとしばらくの間はあなたを放っておいてくれます。同様に強迫行為をすることによって少なくともある時間は強迫観念を生み出している不安を鎮めることができます。ライオンがお昼寝をすると肉は消化され、体を形成するタンパクとなります。すぐにまた、あなたが餌をやったおかげで大きくなり強くなったライオンが、あなたのところに腹を空かして戻ります。今回はあなたをもっと怖がらせ、より多くの肉でないと満足しないと要求しますが。

これは25年以上前のことで、私は今でもその話を覚えています。ライオンの視覚的なイメージと肉-そのような状況で感じるのは不安だけではありません。予想が「わな」にはまってしまった感じ、私の思い通りになるひとつの戦略(肉を与える)を使ってしまっては、時間稼ぎにはなりますが、状況を悪化(強くなって戻ってくる)させてしまいます―単純な説明ではできないようなOCDの経験をとらえています。この説明は単に「OCDの患者は不安をおこさせる強迫観念に対して不安を緩和させるために強迫行為を行います。しかしその結果強迫観念が戻ってきてしまいます。すぐに戻ることもありますし、しばらくたつこともありますが、戻ってきたときには負けてしまいそうになるくらい強くなって返ってくるのです」このように説明されたとしても概念は分かったでしょうが、語りの時のように腑に落ちたということにはならないでしょう。

語りは感じさせ想像させます。語りは考えを伝えるだけでなく、土台となっている考えを伝えるのです。説明している人は情報を共有するようにしているだけですが、物語の聞き手は経験を共有しているのです。私は、もしあなたがOCDでOCDの治療の旅(症状がマネージメントできるような旅)にでようとするならば、不快な気持ちに常に晒されることになるでしょうし、怖がらせるようなERPの介入が不快な気持ちにさせることもあるため、この過程をガイドするセラピストがあなたの経験を分かっていて、あなたをおかしな人だと判断しないとわかることがセラピーにおいて大事だろうと私は信じています。

私が使う多くの語りやOCDについて書かれた本や教えで聞いたことがあるものは、世界的なOCDの患者の自叙伝です。このような話は患者の疎外感や誤解されているという気持ちを少なくさせると同時に「私はその経験を専門的または知識的に分かるのではなく個人的にわかる」という(ERPのルールを破らないで)保障になるのです。例えば多くの患者は一方では特定の行動をすることを恐れて、もう一方ではその行動は恐れるほどのものではなく危険をおびやかすことはないと認識していることで板挟みになっています。そんなに恐れることがばかばかしいと感じているのです。しかし、彼らは恐怖から出てきて話すことができません。患者は自分自身が二つに分裂したように感じるため、「統合失調症」という病名を誤って使っているのではないかと心配します。

私が統合失調症と解離性人格障害(多重人格と以前に呼んでいたもの)は別の関連のない病気だと説明します。大胆な個人的な経験を共有しながら話します。「私の息子はアイスホッケー選手です」と始めます。私の息子のスポーツへの素晴らしい興味やアイスホッケーが有名なトロントに家族で旅行することになった話をします。「私はアメリカで人が設計した中で一番高い181階のトロントのCNタワーで観測のデッキにいることに気づきます」と言います。

「中のデッキに歩いていくと」と続けます。「透明なガラスでできた16フィート×16フィートのがあります。それを歩きながら訪問者を何に挑戦させているのかと言えば明らかです。『100階下がきれいに見られる床を歩くことに挑め』ですよね」

「私はこのチャレンジに心をそそられました。私はガラスの端を歩きました。ガラスの床は4フィートの四角になっていて、鉄によって区切られていました。私が床の下をみると100フィート下に車が走っているのが見えました、おもちゃよりも小さく見えました。そこで私は変な反応に気づいたのです。私の心臓は高鳴っていて、鼓動が聞こえてくるのが分かりました。私の筋肉は硬くなっていて、頭が軽くなった感じがあり、お腹が自分自身で動いているようでした。私は息苦しさを感じました。軽度のパニック発作と同じものを感じていました。それと同時に私は実際の恐怖を感じているとは思わないことに気づきました」。この考えと体の反応は一致しないという話を膨らませた後、「私はガラスの上をゆっくりと重心を移しながら中心に向かって歩いた」という話をしました。このモデルは不安へ直面化することと、階層表のプログラムを作ることにもつながります。

危険がない事柄だと知っているのにもかかわらず恐怖の引き金となることがあるという話」の共有は患者を特別で強力な方法で惹きつけたと信じています。これは彼らの経験がどのようなものであるか分かっているということになるので信頼を勝ち取るのにいい方法です。彼らからの信頼はERPの治療法をしたいという強い希望に変わります。

語りはOCDの治療における方法ではありません、ERPなど、私たちが効果があるという方法を教えるための伝達手段なのです。語りは人々が会話し教育するための力強い方法でした。哲学者や宗教のリーダーは文明が始まったころから語りを教えとして用いました。ヘブライ語の聖書は実際に起きた出来事の復習ではなく、モラルや倫理や宗教の教えを、語りを通して伝えています。新約聖書は比喩がたくさん載っていて、どのようなメッセージを伝えたいのかを理解するためには解釈が必要です。

ダンス、音楽、描画、執筆、詩、映画やフィルムメーキングなどの芸術では、感情や葛藤や経験が芸術的な方法で間接的に伝達されています。この芸術的な表現方法が適切にされた場合は、ただ単に教えられた場合よりも聞き手を理解させることができます。

最後に、よくある話ですが、人々の家族の歴史や、人の話や、文化や宗教や物語などの語りにおいて、人々と同じことを何度も話すように要求するのです。「パパ、どうやってパパとママが出会ったか教えて」というのは私の家でよく耳にする話です。どうして子どもはベッドタイムにこの話を夜な夜な聞いて飽きないのかと親はびっくりするものです。同じような経験がしたいために、結論の分かっている映画をどうして何度も私たちは見たりするのでしょうか。

身をもってOCDを経験している人に最後に言っておきたいことがあります。:このような仕事をすることによって自分自身の恐怖によく立ち向かうようになりました(CNタワーの床を歩く挑戦をしたように)私は同じような大きな変化があなたに起こるように願っていますし期待しています。あなたの話を他の人と共有することは、恐怖に直面化することを助けます。あなた自身を挑戦することに奮い立たせ、すべての機会で闇の中を飛べるようになるでしょう(ペットボトルの底を切って脱出する出口を作ります。ペットボトルの下側を黒く塗っておきます。そこに蜂が入ると蜂はいったん暗いところを通らないと脱出できないのですが、出口だと予想はできるが明るい方にむかって飛ぶという習慣があるために困難という例が本にあります)

(訳・蟹江絢子)

Storytelling in the Treatment of OCD by Allen Weg,EdD

OCD Newsletter 2011 spring

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OCDとACT

ACT(Acceptance and Commitment Therapy:以下ACT)はどんな治療法ですか?その効果は?

その効果を調査すべき?

ACTは、曝露療法や曝露反応妨害法(ERP)、認知療法、弁証法的行動療法と同様に認知行動療法(以下CBT)の形式を持つ療法です。これらの介入法は、精神分析や人間性心理学とは区別されるCBTという流れに属するもので、CBTで用いられる治療手法やその指針に共通点があります。ACTは、CBTによる介入法の一つとして定義されています。

1 行動を、生理的、または脳神経学の立場から理解するよりも、環境的な操作の結果として形成されたものと

考え、変容可能なものとして捉える。

2 精神内的な出来事、発達の重要な段階、性格的特徴よりむしろ、患者が自分の生活の中でどのように生きて

いるか、出来事にどのような反応をしているか(考えや感情を含む)に焦点を当てる

3 介入の効果およびそれがもたらすプロセスを検証する

一方で、ACTには一般的に施行されているCBTとは異なる点がいくつかあります。OCDに対して一般的に用いられるCBTは、ERPのみを行う形式と認知面にも挑むERP形式があります。ERPの最終的な目標は、患者の機能を向上させることや、強迫観念やそれに関連した不安を軽減し、生活機能を大幅に修復することです。主観的不快得点(SUDS)は、治療全体を通して計測されます。OCDの深刻度は、強迫観念の出現頻度や衝動の強さにより判断されます。ACTは、このようなOCDの内的経験を軽減するERPとは異なり、その経験を違ったものにすることに焦点を置きます。ACTは、強迫観念や不安などの内的経験を、私たちの人生の一部と捉えます。強迫観念や不安は、本質的に悪いものではありません。社会では、そのようには取り扱わないでしょう。ACTは、患者の生き方を変えるよりも、強迫観念を許容する方法を見つけることを目指します。こうして習得された能力は、強迫観念や不安の深刻度、またはその頻度を変化させずとも、発揮することが可能です。これは、他のCBTで行われる形式を共有しながらも、それほど強調されていない点と言えるでしょう。

OCDの診断を受けた患者や、その患者と取り組みを行う治療者は、このように強迫観念と不安を受け入れるという手法に戸惑いを感じるかもしれません。もしそうであれば、下記の文章を読み、自分がどのように反応するかに注意を払いながら、以下の質問に答えてみてください:

強迫観念や不安をコントロールすることは、長い目で見て効果のあることでしょうか?

その方法で、強迫観念や不安を効果的に減らせてきましたか?最終的に、強迫観念や不安をコントロールすることで、あなたの人生の可能性が開け、充足をもたらしたのでしょうか?

これらの質問のすべてに「はい」と答えることができるならば、あなたが取っている方法を継続することが良いでしょう。何よりも、自分が経験していることを基準にして判断してみましょう。あなたが頭で考えている内容よりも、あなたが実際に経験していることの方が正確です。あなたがもし、これらの質問に「いいえ」と答え、あなたの取っている行動が強迫観念を減らすことにつながっていないなら、人生の幅は狭められ、自分の希望からは遠くかけ離れた場所にいるように感じるでしょう。そこで、ACTが持ついくつかの概念が役立つかもしれません。

ACTの中心的な概念の1つとして、人の思考、感情とどのように行動するかということは、全く別のものだということがあります。ACTは、人々の考え、気分、身体感覚を統合したモデルを基盤としています。それは、人が意図的に行うことや、何らかの効果を持つ方法などで制御されたものとは区別します。一方で、考えや感覚を持ち、それを経験した時に取る行動は、その人のコントロールの結果に起こるものです。

これを理解するために、これらの2つの質問に答えると良いでしょう。

1) 1,000ドルを差し上げますので、今から24時間の間、強迫観念を持つことをやめていただけますか?

2) 1,000ドルを差し上げますので、今から24時間の間、強迫観念に対して何かをすることを

やめていただけますか?

恐らく、多くの人は、強迫観念を抱くことあっても、強いて何もしないという方法を見つけることは出来るはずです。この練習は、多くの場合に強迫観念と衝動は同時に発生しているけれども、厳密的には、それらが全く同一のものではないことを示しています。私たちは強迫観念を経験しますが、意図的に経験することができません。さらに、衝動は妄想よりもコントロールするのがはるかに簡単です。ACTにおいて、人が考え、感じること、または感じていないことに重点を置く理由はここにあります。

一般的に人々は、強迫観念や不安を不快、またはネガティブなこととして評価しますので、それをコントロールしようとします。しかしながら、強迫観念や不安は、見落とされやすい別の様相があります。それは、人の頭の中に生じる考えや感情は、その人の経験にすぎないということです。人間は、絶えず考え、感じていますが、通常、私たちはこれらのことを全て把握していません。ACTは、我々が反応する考えや感情もあれば、そうしないものがあることを踏まえつつ、あえて強迫観念や不安を経験するように教えます。強迫観念と不安を実際に経験できている場合、これらの経験に対して柔軟な対応をすることは、経験が出来ていない場合に比べてはるかに簡単です。

OCDに対するACTが重点を置くのは、クライアントが思考、感情や身体感覚をオープンに体験し、それらに過度に影響されずに、人生を有意義なものにするための方向へと進み続けることができるように支援することです。このアプローチの利点は、強迫観念と不安を減らすために、その人の行動を変容する必要がないことです。ACTの視点では、OCDの問題は強迫観念や衝動にあるのではなく、強迫観念が生じるたびに衝動が起こることを問題として捉えます。ACTでは、強迫観念があっても、反応の仕方は無制限に存在することや、対応の柔軟性を学ぶことを目標とします。強迫観念を経験しながらも、仕事を続ける、子供と遊び続ける、夕食を食べ続ける、友達と話し続けるなど、何かをし続けるという方法があるものです。ですから、このような状態をそのままに経験し(頭に思い浮かぶ言葉は単なる言葉であり、危険ではないこと)、強迫観念が沸き起こる間にも、別の経験をするゆとりをもち、意味のある方向に進む経験をしてもらいます。これらのことが十分に実践されて、最終的に容易になっていくと、起こる思考や感情が適当なものになり、行動の支障がなくなっていきます。強迫観念を経験しながら、その人の人生にとって重要なことを行う方法が存在するということです。

OCDへのACTは有効でしょうか?

OCDへのACTの有効性は、国立精神衛生研究所(Twohigら、2010年)に出資を受けた大規模なトライアルで検証されました。この研究では、1セッションを1時間とした8回でERPを行わないOCDへのACTと、治療の前段階での査定を含んだ漸進的筋肉リラクセーションPMRの施行前後、および3か月のフォローアップで得られた評価とが比較されました。この調査においては、PMRを統制群とし、ACT施行群における結果として注目されています。この研究では、OCDと診断された79人の成人(内、ACT群が41)が対象となりました。全ての種類のOCD (溜め込み、主症状を強迫観念とするもの、確認強迫、洗浄強迫など)がこの研究対象には含まれています。また、除外基準はほとんどなく、参加者が現実的なサンプルであることが優位に確認されており、この治療は、高い許容性があると判断されました。ACT群の対象者の12%が治療の拒否、または継続の中断をしましたが、OCDの治験としては、極めて低い数値です。さらに、ACT群の参加者は、この治療を5段階の評価尺度で4以上の得点をつけています。中断が少ないこと、また高い許容性をOCDの治療で達成することは困難であることを踏まえると、この結果には意味があるものと考えられます。

ACTはPMRよりも、OCD治療においては有効であり、OCDの深刻度の臨床的変化、幅広い病態水準への対応、及び中断者の少なさにおいて有意に立っています。 (治療反応率: ACT施行後群=46-56%、ACTフォローアップ群が46-66%であるのに対し、PMR施行後群は13%-18%、また、PMRフォローアップ群は16-18%)。ACTは、さらにうつに対しても高い有効性があり、PMRよりもQOLの改善に貢献することが確認されました。

これらの調査結果に加え小規模の研究においても、OCDへのACTの有効性は (Twohig、Hayes、Mausda、2006a)、かきむしり(皮膚) (Twohig、Hayes、Mausda、2006a)、ACTと習慣変容を用いた抜毛癖(髪を引きぬく)( Twohig & Woods, 2004; Woods, Wetterneck, & Flessner, 2006)で確認することができます。

OCDへのACTを施行した効果を調査すべき?

OCDへのACTは新しい治療法です。従って、ERP、または認知過程を取り扱うERP(多くの場合、CBTと呼ばれる)の結果との比較は、限定的になされているのみです。認知過程を取り扱うか否かを問わず、ERPは治療を必要とする人への最初の一歩であるべきです。しかしながら、曝露療法に統合されたACTの手法は、ERPに支障を来している人々に役立つものと考えられます。最終的に、曝露の手続きが有効でない場合、ACTを代替案として用いることが可能です。ACTは、衝動の統制や制御が困難であった人に向いています。この治療法は、強迫観念への反応を制御することがほとんどできないと感じている人に適しています。OCDへのACTを施行可能な治療者は多く存在します。治療者をお探しの際には、www.contextualpsychology.orにて、「ACTセラピストを見つける」のリンクをご参照ください。 (訳・新明一星)

What is Acceptance and Commitment Therapy, What is its Effectiveness, and Should I Look Into It?

Micheal Twohig, Ph.D. International OCD Foundation Newsletter Vol.24 Number3

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OCDと家族

OCDの親をもつ子供

OCDの親を持つ子供のことを忘れていませんか?巻き込まれと早期介入

親の精神的な問題が子供にどう影響するのか理解することは今日重要になってきています。子供の発達の研究は、可能な限り正常に発達するためにはどのような環境や両親の養育が必要かを教えてくれます。精神疾患の両親の行動がどのような強い影響を与えるかについての臨床や研究を報告するための記事がたくさんあります。(Man and Gregorie,2000)

OCDでは特に様々な要因の相互関係が、親の精神疾患と子供の発達に絡み合っていて、複雑な像を呈しています。今日でも、親のOCDとその子孫がどうなるかについての研究は少ないです。OCDの親を持つ子供は親がOCDでない子供に比べて、社会的、情緒的、行動の問題が多いと報告されています。しかし、いいニュースはこれら全ての子供にあてはまるというわけではないということです。OCDの有病率を調べるときになぜ議論されないのでしょうか。そのような子供のリスクファクターは何なのでしょうか。必要とている家族に早期により良い介入をするためにはどうしたらいいでしょうか。

50人に1人がOCDを発症します。そのような大人が子供の症状にどのように影響するかを理解するための研究はとても有益なものです。OCDに関する典型的な症状は、不安を惹起させるような侵入的な思考、望まない考え、アイデア、イメージと不安を緩和させるような行動と精神的な儀式です。強迫観念と強迫行為を始めると、成人の普通の社会的で生産的な機能が障害されます。このようにして、OCDはすべての家族のメンバーに強い影響を与えるのです。なぜなら、精神疾患があるということだけではなく、OCDの症状があるということはその性質によって診断された人だけでなく他の人の生活に侵入するということになるからです。

巻き込まれて行動をすることはOCDの患者を家族が支えようとするときに起こる直観的な方法ですが、結果的には儀式のもとになる恐怖を強めてしまいます。巻き込まれは進んで手助けをすることや他人をなだめることと定義することができます。OCDについて言えば、Waters and Barrett(2000)は家族環境が疾患を悪化させ維持させることへの潜在的なリスクファクターだと言っています。Storch et al.(2007)は子供のOCDと家族の巻き込まれと機能不全とOCDの症状の重症度について集中的に報告しています。大人に関して言えば、Van Noppen and Steketee(2009)は一連の分析において家族の巻き込まれがOCD症状の重症度を予想するのに最も寄与する因子だと同定しています。家族や配偶者や他の家族のメンバーがOCDに巻き込まれることを知っているにもかかわらず、OCDの親からの要求にどう対処するかについての議論はありません。私たちの目的は何が起こっていて、どのような家族への介入が効果的なのかについて述べることです。

家族の巻き込まれスケール(The family accommodation scale FAS-IR)Calvocoreesei et al,1993)は13項目からなっており、臨床家が施行する指標でその家族メンバーがある特定の症状にどのくらい巻き込まれているかを測るものです。元の指標はどのようなOCDの人のパートナー(愛する人)がどの程度:特定の引き金の回避、儀式への参加、過度な保障の提供、個人や家族の習慣の変化の度合いをみてどれだけ巻き込まれているかを測るものです。私たちはその指標を改良し、どのような親のOCDの症状にどの程度子供が巻き込まれているのかをアセスメントするために使えるようにしました。私たちは子供や家族が巻き込まれることを減らす介入が必要なものを同定し、「もし私が間違っていたら」ということが子供の発達に悪影響を及ぼすことを両親に教育するのに使い始めています。

子供は様々な方法で親のOCDの症状に巻き込まれます。以下は、様々な種類の巻き込まれを臨床のケースによって説明したものです。

1)子供は強迫観念に関連した恐怖を軽減させるために親に保障を与えるかもしれません。

私の両親は二人とも「ばい菌恐怖」です。私の父はインフルエンザを恐れています。私の母は泥を怖がっています。両親は私たち兄弟を座らせ、手を洗うことについて説教します。家に帰るとすぐに、私の母は私を手洗い場に連れて行きます。母は私の学校のものや靴にアルコール消毒しているのだと思います。私の母は、学校でも手の消毒剤を使うように求めます、私が家に帰ってきたときに母が最初に聞くことは「今日はどうでしたか」ではなくて「手を消毒しましたか」です。私は賢くなったので、何があってもただ「はい」とだけ言います。

2)子供は親の儀式の引き金となる行動や発言を控えるかもれしれません。

「私の母は私たちが溺れるのではないかと恐れています」私たちが、水のそばや、プールや、海や他の場所へ行ったときに母は毎回私たちに救命具を着させるか私たちの手を強くにぎります。彼女は実際に口にだしては言いませんがぶつぶつ言っている言葉があります。その結果、私たち子供は泳ぐことが嫌いになり、友達から海へ行く誘いを受けても断るようにしています。そのほうが簡単だからです。

3)子供たちは親の儀式に参加するもしくは親の代わりに儀式を完了してあげるかもしれません。

「私の父は私たちが朝学校に行くときに窓やドアを調べるのに時間がかかったものでした。そのため、ある日父のためにやってあげました。父は安心しました。それからというもの気づいたときには私が毎日それをやっていました。それは辛かったですが、学校に時間通りに行けるだけましでした」

4)子供たちは親が引き金を避けることを助けるかもしれません。

「私の母は、公共の場で私を母と一緒にトイレに連れて行ったものでした。だいたい母は公共のトイレに入るのを嫌がります。しかしもし必要ならば彼女が持ち運んでいる特別なスプレーでトイレのシートをきれいにするように頼み、ドアノブをきれいにするように私に頼みました。私はそれをするのが好きではありませんでしたが、もし私が断ると彼女はとても怒るのです」

5)正しい選択を知らないことへの親の不安を避けるために、子供が親のために意思決定してあげるかも

しれません。

「レストランで私の義理の父は何を食べるかについて決めるのに時間がかかります。全ての人に何を食べるべきか 聞き、メニューと長い時間にらめっこしています。ウェイトレスはイライラしてきます。ある日、私の兄弟が父のためにオーダーしてあげました。その後、そのディナーは今までの中で一番だったと父は言いました。私の兄弟は助けたことをほこらしげに感じました。その後、彼のために食事の選択を以前よりも多くしてあげるようになりました」

6)OCDの親とうまくいくために、子供はスケジュールを変えたり責任を変えたりする かもしれません。

「私はトイレを掃除します。なぜなら私の母はそれをすることができないからです。トイレに立つだけ何も触らなくても、彼女は何回も手を洗わなくてはいけません」

7)OCDの親のために家事を完了させるかもしれません。

「私の父はごみの日を恐れています。私の母は父がごみを捨てなくてはいけないと言います。けれども、父の表情をみると彼がとてもそれを恐れているのが分かります。両親は時々怒鳴りあいます。そしてもし父ができないと母が結局はごみ出しをします。母は大きな足音をたてて怒って小言をぶつぶつと言います。私は時々すごく居心地が悪く感じ、私が学校からはやく帰ってきたときは、それが起きないようにごみをそっと出しておきます」

何人かの研究者は、OCDの親を持つ子供は不安障害、OCD、OCDのような疾患や遺伝環境の相互作用による行動障害になるリスクが高いのではと示唆しています。OCDを発症する遺伝的脆弱性があったとしても、OCDの親を持つ子供がすべてOCDを呈するわけではありません。そのため、個人の生物学的要因に影響する他の要因があるはずです。苦痛な状況で育てられた多くの子供がレジリエンシー(打たれ強さ:困難な状況にもかかわらず、うまく対応できる力)を獲得するという研究も明らかになってきました。私たちはレジリエンスを獲得する要因について興味があります。人々をストレスの多い状況から「立ち直らせる」過程となるものは何でしょう。(Dyer and McGuiness,1996) OCDの症状による要求を受けることや家族を助けるという複雑な極度な状況にさらされた子供を守る因子を同定することができれば、公衆医学において大きな前進となります。

子供の巻き込まれ行動を減らすことを目的とした介入は両親や子供を助けることになります。親は家族が巻き込まれていない状況ではOCDの治療をすることが容易になりますし、子供は日々の生活で発達に差し障るようなOCDにかかわることから守られます。OCDと診断された親を持つ家族を助けるための介入のリストです。

1 親の教育と支援

効率的な子供の養育方法実践に対する情報を与えるとともに、なぜOCDの儀式に子供が関わらないことが子供

にとって重要であるかの情報を示すことは、子供にとってのOCDの症状による強い影響を回避でき、親と子供の

より健全な関係を築くことができます。カウンセリングや支援グループの継続的支援は効率的な戦略を親が持続

して行うことを強化し、子供を儀式に参加させることからしりぞけます。

2 心理教育

OCDについて子供に教育し、親の治療の援助をする方法を年齢に即して教えます。子供たちは親の行動につい

て理解することができ、どう声をかけて何をしてあげればいいのかを知ることができるという利益があります。

OCDの儀式への参加しやすさが減り、助けの過程にいるのだという自負につながります。

3 複数家族による介入

複数家族行動療法(Multi-family behavior therapy MFBT)とはOCDの家族全員をグループ療法の形式で動員させるものです。複数の家族はお互いに治療を継続し曝露反応妨害法の練習をすることを励ましあい、家族機能においてのOCDのインパクトを最小限に抑えるようなアイデアを出し合います。

4 家族支援のネットワークを作り普及させる

OCDのために影響がでている家族は知識があって気にかけてくれるサポートネットワークから助けを得られることができます。家族に働きかけ、ネットワークを構築しそれを使って子供たちが儀式に参加するのを避けるための難しい時期をやり過ごすようにします。

5 コーピングスキルを身に着ける

一般的に子供たちは、学びたがっており、気分が良くなる新しい方法をとりいれます。導入し強化するコーピングスキルは、不安を感じているときや抑うつを感じているときや生活の上でのストレスを感じているとき(OCDの親と生活している際にわきおこる感情も含めて)に使えるようなテクニックや戦略と共に提供されます。このようなスキルを早期に導入されると、子供はそれをもとにし困難な時期を乗り越えることができます。

結論としては、子供の発達や子供の精神的な健康にOCDの親がどのような強い影響を与えているかについてのより深い理解は必要不可欠です。それによって効果的な介入が発展し運用することが可能となります。今後のこの分野の研究:レジリエンスの要因と関連した研究は必須です。それによってどの青年たちがリスクであり、適切なサービスと支援を提供するべきかを予想することができます。OCDは50人に1人の大人が罹患するため、効率的な認識と介入は次世代により良い結果をもたらすでしょう。注:レジリエンシー:困難な状況にもかかわらず、うまく対応できる力です。

複数家族行動療法(Multi-family behavior therapy MFBT):複数の家族とそのメンバーが参加します。OCDの家族が複数あり「お互い頑張りましょう」と励ましあいます。OFFとFASの日本語訳はありません。 (訳・蟹江絢子)

Have we forgotten the Children who have a parent with OCD?:Accommodation and early prevention

By Jennifer Jencks,LICSW and Barbara Van Noppen,PhD

OCD Newsletter Spring 2010 The Therapy community

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