OCDの定義

OCDは引き金、強迫観念、不安、強迫行為の四つの部分からなることを述べましたが、実際のところ、何をしてOCDと呼ぶかという厳密な線引きについては、歴史を通じて様々な見解が出されています。

実際にDSMも版を重ねる度に微妙にOCDの診断基準を変えてきており、その第三版にあたるDSMⅢでは、強迫観念はOCD以外の障害(トウレット障害、統合失調症、うつ病など)から発生していないことが診断の条件として挙げられていましたが、その改訂版であるDSM-Ⅲ-Rが出版された段階から、また第Ⅳ版のDSM-Ⅳにおいても、前述の条件は削除され、OCDは他の障害と同時に発生し得ると改定されています。

OCDとその他の障害の間に存在する症状の重複は、これまでに研究者や臨床家たちを悩ませてきました。たとえば、醜形恐怖(Body Dysmorphic Disorder)や抜毛(Trichotillomania)は現象としてはOCDと酷似していますが、現在、これらはOCD以外の範疇に含まれます。また、強迫性の溜め込み(Hording)も同様に、OCDではなく、強迫性人格障害と診断されるケースが多いです。その違いは、本人が症状をどのように認知しているかによっています。本人が異常であると認知しながらも特定の行為を止めることが出来ない場合もあれば、周囲異常であると認識しながらも本人は違和感を感じない場合もあります。現時点では、前者は強迫性障害、後者は強迫性人格障害と分類されています。さらに摂食障害、依存症なども、自身のイメージや体重へのこだわり、強迫的な繰り返し行為などという点からみれば、強迫性障害と類似しています。このように、見方によれば、「こだわり病」の類いは全て、強迫性障害と兄弟または親族と考えることができます。