OCDを治療するセラピストのための情報 – 曝露と公衆衛生に関するアドバイス
新型コロナウィルスのパンデミックに対して、公衆衛生局は感染症の広がりを制限し、予防するため、以下のようなさまざまな戦略を推奨しています。
- 公共の場にいた後、ドアや手すりといった一般的に使用される物の表面に触れた後、特に食事の前には、石鹸と水で定期的に手を洗う。
- 手洗いができない場合は、手指消毒剤を使用する。
- 体調不良のときは家にいる。
- 新型コロナウィルス の感染者と接触していた場合は、公衆衛生担当者の指示に従って「自主隔離」する。
- 可能であれば旅行を制限し、自宅で仕事をする。
曝露反応妨害法を用いたOCDの治療において治療担当者に必要とされることは、クライエントに強迫症状の引き金に曝露するよう促し、強迫的な儀式を行いたいという衝動に抵抗するよう励ますことです。しかし、公衆衛生上の推奨事項がOCD治療を進めるうえで必要な曝露と相反する場合には、どうすればよいのでしょうか?
ベースラインを調整する
普段であれば、クライエントに手洗いを完全にやめるようにと伝えることが、汚染に関する強迫観念を治療するための重要なステップになるかもしれません。一般的で健康的なレベルの手洗いをやめさせることは、長期的で持続的な治療効果をもたらすという点で、曝露を増大させる可能性があります。通常、この種の曝露によるリスクは低いのですが、パンデミックのなか許容できるリスクとは何かを、別の角度から考える必要があります。臨床医、クライエント、そしてより広いコミュニティの安全と健康を維持するためには、ベースラインを調整し、公衆衛生ガイドラインと個人それぞれの状況の両方を考慮することが重要です。そのベースラインに対して明確な制限を設けることで、曝露が可能となります。
明確な制限を設ける
「頻繁に手を洗う」ことが繰り返し広く推奨されていますが、汚染強迫のある人にとってはその推奨が曖昧なものなので、強迫の引き金になるかもしれません。患者各々の状況を考慮してください:彼らは一人暮らしをしているのか、それとも他の人と一緒に暮らしているのか?彼らは公共の場で働かなくてはいけないのか?居住環境で高齢者や妊婦、他の患者と定期的に接触しているか?それらを整理し制限を設けて、曝露のベースラインを設定します。
- 石鹸と水で20秒間だけ手を洗います - それ以上はしません
- 公共の場にいた後、食事の前、トイレの後、咳やくしゃみをした後など、本当に手を洗う必要がある状況になったときに、一度だけ手を洗います。
- 石鹸と水が使用できない場合、および本当に必要な場合(上記参照)にのみ手指消毒剤を使用しましょう。
- あなたの担当ケースにすべて同じルールを当てはめるのではなく、それぞれの患者の状況に合わせて制限を変えるようにしてください。例えば、通勤で地下鉄を利用する人の場合は地下鉄を降りるときに一度手を消毒するとか、オフィスの共同コーヒーサーバーを使用する前には石鹸と水で20秒間一度手を洗ったりするといった手指消毒の制限を認めましょう。
- クライエントの生活状況を考慮してください。例えば、一人暮らしをしている人は、家族などと一緒にグループで生活している人とは当然ながら全く異なる背景を持っています。いますこの提案に沿って汚染強迫への曝露を行うことは患者が全く手洗いをしない場合と比べて不安を喚起できない可能性はありますが、これらのガイドラインは大幅に強迫行為を制限していると思われますし、この危機的な状況が落ち着くまでの一時的なものであると考えてください。
他のタイプの強迫観念を持つクライエント、例えば、道徳心に関連した強迫観念を持つクライエントも苦労しているかもしれません。旅行の制限、社会的な距離(人との間に物理的な距離を保つこと)、その他の行動制限は、個人の判断と選択の余地が多くあるため、とても危険です。「自分の旅行が本当に必要なものかどうか、どうやって判断すればいいのか?」、「今日は職場で私が必要とされていると思うが、どうやってそれを確認すればいいのか?」、「不必要に他人を危険にさらしていないことをどうやって確認するのか?」今のところ、これらは全て正当な質問で、誰もが簡単に検討し、それに基づいて行動する必要があります – あなたのクライエントと一緒に。
- 手指の衛生や汚染と同様に、制限を設けることが課題となります。
- この場合の制限とは、クライエントが行動する前に選択肢を検討する時間をどれくらいにするか、情報収集をどれくらいにするか(例えば、雇用主のメールや旅行に関するアドバイスを一度だけ読むなど)、行動した後に反芻したり、保証を求めたりするのを防ぐことが該当するでしょう。
- 手洗いの場合と同様に、公衆衛生ガイドラインに適切に従いながら、新型コロナ肺炎に関連する道徳心の強迫に対して十分に不安を喚起する効果的な曝露を行うことは可能です。
詳細情報
詳細については、APA(アメリカ精神医学会)の記事を参照してください。 COVID-19 and psychology services: How to protect your patients and your practice.