島田荘司『斜め屋敷の犯罪』

読書さとう

著者が2番目に書いた作品です。これも御手洗潔が事件を解決します。と同時に「北の夕鶴2/3の殺人」「寝台特急『はやぶさ』1/60秒の壁」で吉敷竹史の脇役として活躍する札幌署の牛越佐武郎刑事が、この事件の担当の刑事として登場します。また彼は刑事でもない御手洗潔をこの事件解決に引き出してくる役回りでもあるといえるかと思います。私は、1995年に光文社文庫で読んでいました。この作家を知り始めてすぐの頃です。

日本の最北端、北海道宗谷岬のはずれのオホーツク海を見下ろす高台に、土地の人が「斜め屋敷」と呼んでいる斜めに傾けて建てられた西洋館があります。この館の主人がクリスマスに客を招待してパーティを開くますが、その夜に密室殺人が起きます。牛越刑事たちがかけつけますが、彼らの前でまた第2の密室殺人が起きます。そしてまだ起きそうなのです。そこで東京の中村刑事(あとでまた紹介する「死者が飲む水」の捜査で牛越が知り合う警視庁の刑事)の紹介で、名探偵御手洗潔が石岡と一緒にやってくることになります。

しかしやってきた御手洗は風変りな頼りにならないような男です……。この事件の背景には戦前からの戦争に関わる怨念があります。とにかく御手洗潔の活躍には感心します。日本の他の名探偵とはまた一味も二味も違った探偵です。

デビュー作の「占星術殺人事件」が、あまりに多くのものをつめこみすぎで、ときにはこんなもの余計じゃないかななんて思わせるのに対して、この作品は冗長なところを避け、ひたすら密室殺人の推理のみというところがあり、第一作よりは読みやすいかと思いました。