■砂山鉄史『箱の中のヒト』(カクヨム) 2019年5月29日更新
完結済。1万字弱の短編。
元はオンライン文芸誌『回廊』第7号に寄稿された作品。
作品の舞台は、「箱庭」と名付けられた世界。
かつて人によって作られた箱庭には、人間をシミュレーションした「ヒトモドキ」という存在が生活していた。
主人公は、ヒトモドキの少年「ぼく」。彼には「ソウ兄ちゃん」という、尊敬する年上の友人がいた。
研究者であったソウ兄ちゃんは、崩壊を続ける箱庭を救う方法を見つけるために、箱庭の天井に空いた「大穴」へと旅立つ。
ジャンルとしてはポストヒューマンSFだけど、作品の魅力は詩情豊かな文章にある。
不要な心理描写抜きに、淡々と綴られる「ぼく」の述懐が美しい。
(2019年5月29日)