研究内容 Research

Japanese/English

食う・食われるの関係について、行動学の視点から研究を進めています

河端は、面白い発想で人を驚かせたい・楽しませたいというのをモチベーションに研究しています。シンプルな理論や操作実験で動物の行動を説明できた時や、予想だにしなかった結果が得られた時に特に興奮します。学生達は、それぞれのモチベーションで研究に励んでいます。

現在の主な研究テーマ

・動物が逃げる方向を科学する:種間比較・数理モデル

皆さんは、車にひかれそうになったり、犬が急に襲ってきたりしたら、どの方向に逃げますか?その逃げる方向は危険を回避するのに一番良い方向ですか?

このような素朴な疑問を、幅広い動物群で明らかにすべく研究を進めています。様々な動物(魚、カニ、ゴキブリ、コオロギ等)を人工刺激や捕食者(魚、カエル等)で驚かして逃避方向を調べるとともに、簡単な数理モデル(幾何学モデル)を作成しています。

これまでに、一見すると複雑な逃避方向パターンが、シンプルな数理モデルによって説明できることを発見しました。現在は、その方向が本当に捕食回避に有効かどうかを調べています。また、形態の違いや、危険を感知する感覚器の違いによって、どのように逃避方向パターンが異なるかについても調べています。

私自身は逃避行動への純粋な興味から研究をスタートさせたため、はじめは応用を考えていませんでした。ただ、最近になって、銛突きや網による漁業の効率化や車と野生動物の衝突回避策の決定など、広く応用分野に役立つことに気付きました。実際に2017年度からは、水産業への応用も視野に入れて、野外でも魚類の逃避行動を調べています。

・逃避行動・捕食行動における感覚器の役割(原文:木村 響)

こんな経験をしたことはありませんか。歩きスマホをしていたら、ヒトや電柱にぶつかりそうになった。おそらく電柱が見えていなかったからでしょう。そんなとき、視覚の重要さを実感したのではないでしょうか。感覚が重要なのは魚の逃避行動や捕食行動でも同じです。魚も危険を感じ取ることで逃避行動を始めます。捕食行動でも獲物の位置を把握する必要があります。魚類は水の流れを感じ取る感覚器として側線を持っています。そのため、魚類の逃避・捕食行動には視覚や聴覚に加えて、側線による感覚が関係しています。しかし、異なる環境下で、それぞれの感覚器が逃避行動や捕食行動でどのように使い分けられているのかは明らかになっていません。例えば、夜になれば視覚の能力は下がりますが、側線の能力は下がりません。一方で、透明度が高くて明るい環境では、眼は側線よりも遠くの刺激を感じることができると考えられます。私達の研究室では、周囲の環境を変化させる操作実験によって、魚類の逃避行動・捕食行動において眼や側線がどのように使い分けられているのかを調べています。

・甲殻類の逃避行動の比較研究

なぜカニは横歩きするのか?という疑問に答えるべく、研究を進めています。

ウナギ被食回避行動に関する研究

二ホンウナギ稚魚を食べる捕食者にはどのような種がいるのか、ウナギ稚魚はその捕食者をどのように回避しているのかなどについて研究しています

過去の主な研究テーマ

・稚魚の捕食者認識・防衛行動における学習効果 ヒトは幼いうちは何が危険かの認識が十分でなく、成長するにつれて何が危険かを学習していきます。では、魚はどうでしょう? 実は、魚も生まれながらにして何が危険かを完全に把握しているわけではなく、学習によって危険を認識し、適切な防衛行動をとるようになるとされています。私達の研究室では、2017~2018年度に、稚魚に「自分の仲間が捕食者に食べられる」いう状況を経験させることで、その稚魚の捕食者認識や防衛行動がどう変化するかを調べました。天然魚の数を安定・増加させるために人工飼育魚を放流する「栽培漁業」が世界中で行なわれていますが、放流した稚魚が大型の捕食者に食べられてしまうという問題があります。私達の研究成果は、その稚魚が食べられてしまうのを防ぐ方法の開発に繋がるかもしれません。
・魚類の移動生態:餌とり・産卵回遊・流れ藻への寄り付き2011~2014年ごろまでは、シロクラベラ・ナミハタなどの魚に発信機やデータロガーをつけて、移動パターンを調べてきました。特に、どのような要因(捕食者の回避、餌の捕獲、蓄えた脂肪量など)で移動パターンが決まるのかに興味を持って研究してきました。また、この移動パターンから「いつ」「どこ」を禁漁にするかといった漁業管理策を提案してきました。素早い運動を定量的に記録する測器の開発、流れ藻に集まるブリ稚魚の生態、ヒラスズキの移動生態についても実績があります。詳しくは論文の解説をご覧下さい。