ジャイロ・加速度ロガーで体の動きを詳細に測れば、捕食行動の餌タイプまで分かる

バイオロギング分野では、近年、加速度ロガーで捕食行動を検出するのが流行である。これまで私はあまり流行に乗らずに、発信機を用いて被食回避行動や被食率を計測する調査を行ってきたが、遂に流行に乗ることにした。

多くの捕食者はジェネラリストであり、状況に応じて異なる餌タイプを利用する。例えば、ペンギンではオキアミと魚を捕食するし、トカゲは昆虫とネズミを捕食するし、多くの捕食魚では甲殻類(カニ・エビ)と魚を捕食する。

これまで、加速度データロガーを用いて捕食行動を検出する研究が数多く行われてきたが、餌タイプを判別した例はなかった。一方、ハイスピードカメラを用いた水槽実験からは、多くの捕食者は餌タイプに応じて体の動きを変化させることが分かっていた。そこで、私達は、詳細に体の動きさえ計測することができれば、餌タイプまで検出できるという着想に至った。

本研究では、高いサンプリングインターバル(200Hz)で加速度と角速度を計測可能なデータロガーを用いて、異なる捕食行動(カニ捕食・魚捕食)が検出可能なことを示した。対象種にはサンゴ礁の高次捕食者であるナミハタを用いた(図1)。

図1、ロガーを装着したナミハタ。有り難いことに、装着翌日には元気に餌を食べてくれる。

カニ捕食、魚捕食に加えて、人工刺激からの逃避、同種他個体からの逃避、同種他個体への攻撃、遊泳・休息行動を水槽内で計測した。

カニ捕食時は、ピッチ方向に大きな動きを示したが、加速度は小さかった。一方、魚捕食時は、一気に加速したため前後と左右方向の加速度が大きかったが、ピッチ方向の動きは小さかった。人工刺激からの逃避は魚捕食に似た動きをしたが、ヨー方向の動きが大きかった。これらの特徴を用いて、決定木を作成したところ、カニ捕食で検出率87.5%、誤検出率5%、魚捕食で検出率87.5%、誤検出率6.3%という概ね良好な結果が得られた(図2)。

今後、野外に本手法を適用することで、本種を含む様々なジェネラリスト捕食者の摂餌生態を明らかにすることが期待できる。

図2、カニ捕食と魚捕食の決定木。詳細は、論文をご覧下さい。

なお、本研究で用いたデータロガーはBiologging Solutions Inc. で購入可能です。

Kawabata Y, Noda T, Nakashima Y, Nanami A, Sato T, Takebe T, Mitamura H, Arai N, Yamaguchi T, Soyano K. Use of a gyroscope/accelerometer data logger to identify alternative feeding behaviours in fish. The Journal of Experimental Biology. 2014. 217, 3204-3208