ハタ科仔魚の長いスパインの機能:閉じて泳いで、開いて流れに乗る?

ハタ科やフエダイ科の仔魚は非常に特徴的な長いスパイン(背鰭棘、腹鰭棘)を持つ(図1)。しかし、この長いスパインが何に役だっているのか、あまり良く分かっていない。

私達は、この長いスパインによって、魚が自発的に水の抵抗を調節し(流れに乗ったり乗らなかったりして)、効率的に移動を行っているのではないかという仮説を立てて、実験を行った。

図1.ハタ科仔魚(ナミハタ)の写真(撮影:山口智史)

まず、水槽内にゆっくりとした流れを作り、魚の行動をビデオ撮影した。その結果、遊泳時にはスパインを閉じていて、流れに乗っている時や重力に任せて沈降する際にはスパインを開いていることが分かった。

次に、この魚の3次元形態モデルを作り、スパインを開いている状態(受動輸送時)と閉じている状態(遊泳時)で、数値流体力学解析(CFD)を行った。その結果、スパインを開いていると、閉じている時に比べて、約1.25倍流体抵抗が大きいことが分かった(図2)。

図2.スパインを閉じた時と開いた時の流体抵抗(抗力係数)の比較。矢印の向きは流れの向きを表す。

以上から、長いスパインはハタ科仔魚が能動的に移動するのに役だっていると考えられた。

Kawabata Y, Nishihara G, Yamaguchi T, Takebe T, Teruya K, Sato T, Soyano K. The effect of spine postures on the hydrodynamic drag in Epinephelus ongus larvae. Journal of Fish Biology. 2014. 85, 1757-1765