「MA in Governance and Development」Institute of Development Studies, University of Sussex

井村 賢(いむらさとし)さん

執筆:2016年7月

1.自己紹介

関西学院大学総合政策学部卒。商社でアジア中心に鉄鋼の営業職を約8年務めた後、2015年よりInstitute of Development StudiesにてMA in Governance and Developmentコースに所属。

2.所属するコースの概要

コースの内容は途上国のガバナンスに関する内容が殆どで、教授達のキャリアから東アフリカと南アジアに関する研究が特に多い。また、ガバナンス発展の事例として東アジアも引合に出される。殆どの授業が2部構成で午前中にレクチャーがあり、午後はセミナー形式、クラスメートとの議論が中心。成績はタームペーパーとプレゼンで決められる。タームは2期制で前期に3科目、後期は4科目履修。5月以降は授業が無く後期のタームペーパーと修士論文に集中。クラスメートは官僚や外交官、国連職員など政府系機関出身や政府と関わる仕事の職務経験を持つ者が多い。

3.授業の紹介(当該コース専門の必修授業のみ)

Governance, Politics and Development

開発途上国に関わる事象とガバナンスの関係性について学ぶ。資源や援助に依存する国家財政、徴税、市民社会、経済発展、民主主義、国際関係が政府やガバナンスの質にどう影響するのか、社会科学や政治科学の観点から学ぶ。ガバナンスを理解する為の基本的なコンセプトや理論が含まれている。

Public Management and Organisational Development

Governance, Politics and Developmentがガバナンスと政府外の関係について学ぶ授業であるのに対して、本授業ではガバナンスの中身について学ぶ。官僚制度から地方公務員まで多岐に渡る公共サービスの仕組み、官民連携、地方分権、汚職、アカウンタビリティ等、ガバナンスを構築する要素を個別にピックアップしている。本授業では途上国だけでなく、東アジアが例に使われる事も多く、日本人にとっては自国の経験を踏まえて理解出来る内容も多い。

Democracy and Development

本授業のポイントは2つ。1つ目は市民社会やアカウンタビリティ、選挙、政党などが民主主義の中でどのように機能しているのか、2つ目はアフリカや南アジアを例に、紛争や癒着など途上国に多く存在する問題が民主化の発展にどう影響を与えるのか、また最終的に民主化が開発にどう影響を与えるのかを学ぶ。

4.大学情報

イギリス最南端のブライトンに位置しており、市内からバスで20分程の自然に囲まれたキャンパス。開発学が強く14/15年のQSランキングの開発部門で世界1位になった。日本人の大学院生は毎年20-30名いるが開発に関わるコースに所属する者が多い。IDSは学位を学生に提供してはいるが、あくまで開発専門の研究機関であり、運営もサセックス大学から殆ど独立している為、教授は教鞭を取ると同時に現役の研究者でもある。途上国からの留学生も多く、国際色が豊か。第一線の研究者に教えを請える事と開発の職務経験を持つ途上国出身の同期が多い事がIDSの魅力。

5.留学をめざしている人へ一言

早いタイミングで修士論文のテーマを決められると、タームペーパーと修士論文に一貫性を持たせる事が出来て、修士論文の質や効率が上がる。また、IDSでは同期の殆どが職務経験を持っており、ディスカッションやタームペーパーでも自分の経験を基にしたアウトプットを求められる事が多い。自分が勉強する事の理解深化にも繋がるので、数年間の職務経験を持った上で修士に入る事を薦める。