「MA Environment and Development, Faculty of Social Science and Public Policy」Department of Geography, King’s College London

(ロンドン大学キングスカレッジロンドン 「社会科学公共政策学部 環境と開発 修士課程」)

小川 結(おがわ ゆい)さん

執筆:2016年4月

【自己紹介】

学部での社会保障法や環境法の授業、またサークル活動でのアフリカへの給食支援やインドへのスタディーツアーを通じて、開発学、その中でも特に環境に特化した分野を学びたいと思い、大学院への進学を決めた。最終的にKing’sに決めた理由は、ツーリズムや災害(結局後者のコースはとらなかったが)を環境と開発の観点から考えることのできるコースがあったこと、また立地上、様々なセミナーやイベントに参加することができ刺激の多い環境で勉強ができると思ったため。

【コースについて】

私の所属していたMA Environment and Developmentでは、必修科目が3つあり、他に選択科目を3つ選ぶことができた。その他に、最後(Term 3)に修士論文を書き、その評価が全体の評価の1/3を占める。MAの代わりにMScを選ぶこともできるようになっており、その場合は必修科目に統計を学ぶコースが加わり、選択科目が一つ減るそう。同じ学部でも、コースや年度によって人数はかなり異なるようで、私のコースは10人強だったが、20人やそれ以上のコースもあった。コースメイト、クラスメイトは欧州やアジア、アフリカなど様々な国からきており、多様性には富んでいた。私のクラスでは、職務経験者が半分、学部から直接きた学生が半分くらいだった。

授業について】

Environment, Livelihoods and Development in the Global South (Compulsory, Term 1)

途上国に住んでいる人々のlivelihoodsに焦点をあてて勉強する科目。 Term 2でとるDevelopment and Environmentalism in the South とセットで、Term 2 のクラスでは理論が中心なのに対して、Term 1 はより具体的に学べるようになっている。(本来は順番が逆だけれど、今年度は講師のスケジュールの関係で理論が後になっているそう)毎回異なるトピック(マイクロクレジットや緑の革命、社会的資本や遺伝子組み換え作物など)を取り上げ、主に途上国の小規模農家に与える影響を学ぶ。ほぼ講義形式の授業だったが、緑の革命を模したロールプレイや時折ディスカションがあった。課題は、20%と80%のエッセイが1つずつ課され、前者は緑の革命について、後者はいくつかのトピックから一つ選んで書く、というもの。

Practicing Social Research (Compulsory, Term 1-2)

アカデミックリサーチの仕方を学ぶクラス、言い換えれば修士論文に備えるためのクラス。質的、量的な調査の手法を、主に理論に焦点をあてて学ぶ。

課題は、40%と60%のエッセイが2つで、前者では量的調査、後者では質的調査について書く。このクラスは、2月頃(Term 2の途中)に終わり、提出した修士論文の計画書に基づいてSupervisorが割り振られ、そのあとはSupervisorとのやりとりが続く。

Tourism and Development( Optional, Term 1)

経済的、社会的発展の手法、という観点からツーリズムを勉強する科目。特に、発展途上国でのツーリズムの発達における利点と問題点に焦点あてて学ぶ。後半は、より最近のトピックであるVolunteer tourism, Pro-poor tourism, Post-disaster/conflict tourismなどを取り上げた。講義が中心だったが、ロンドン近郊でのField Tripが一回と時折ディスカッションや意見を発表する場もあった。課題は、50%が2つで、前半はツーリズムと発展について全体的に書くもの、後半はとりあげたトピックから1つ選んで書く、というもの。

Development and Environmentalism in the Global South (Compulsory, Term 2

Term 1の授業に比べてセオリーが中心。前半では、環境政策や開発政策の背景にある考え方を学び、先進国と途上国間でのその違いを考える。後半では、環境政策、開発政策に関する具体的なトピック(気候変動、参加型開発、社会的資本など)を扱い、その背景にあるdiscourseや政策の与える影響を学ぶ。後半は2時間の授業のうち、1時間はセミナー形式で、少人数のクラス。課題は、20%が一つ、80%が一つ。前者は論文の書評を書き、後者はトピックから1つ選んで書く。

Tourism, Conservation and Environment (Optional, Term 2)

前半はエコツーリズムについて、後半は遺産とツーリズムについて。理論的な話と実際のケーススタディをバランス良く勉強することができる。後半では、field tripでロンドン近郊の遺産を訪ね、実際の管理をしている人たちのお話を聞くことができる。

評価は、50%のグループプレゼンテーションが一つ、50%のエッセイが1つ。どちらかでエコツーリズムか遺産とツーリズムを選び、残ったトピックをもう一つの課題形式で提出するというかたち。

Practical and Theoretical Evaluation of Sustainable Development (Optional, Term 2)

受講した授業の中で最も実践的だと感じた。World Bankで働いている人が授業を担当しており、実際に使われている開発プロジェクトの評価方法を学ぶ。ほとんどのクラスで、前半が講義、後半は実践という形式だった。評価は、20%と80%のエッセイが2つ。

前者はプロジェクト評価の途中まで、後者はより踏み込んだステップまで(具体的にどうやって評価するかを提案する)書く。

【大学情報】

King’s のキャンパスはロンドン内に散らばっていますが、Human Science系はStrand Campusが多いのではないかと思います。Strand Campusは街の中心にかなり近く、どこへ行くのにも便利でした。また学内でのセミナーに加えて、他のロンドン大学でのセミナー・講演会などにも行きやすかったです。図書館も歩いて5分程の所にあり、試験期間中は24時間、それ以外はだいたい夜1時まで。寮は、日本と比べられないほど家賃が高いが、セキュリティが常在だったこと、また多様なフラットメイトと話すことができたのは良かったと思います。友達の中には、寮以外に住んでいる人もたくさんいました。

【最後に】

日本の4年間の大学生活と比べて、1年間の修士過程はとても早い。特に課題に追われているとあっという間。修士論文のテーマや、受講したい授業など、コースが始まる前から具体的に考えておくと良いと思います。インターンシップ、セミナー、イベントなど、ロンドンは機会は豊富ですが、勉強の課題の量も多いので(おそらくロンドンに限らずですが)、事前準備や計画をたてることで機会を最大限に活かすことができると思います。