その晩、私は琴音ちゃんとカメムシの夢を見た。カメムシのカケルはイノシシみたいに大きくて、琴音ちゃんはカケルの上に乗っかっていた。
「竜宮にいくの。竜宮には何もにおいがないの」
私は驚いて言った。
「カメムシは海の中に入れるの?」
「竜宮が海の中にあるなんて、思い込みだよ」
そう言って鼻で笑うと、カケルに乗った琴音ちゃんは、飛んで行ってしまった。
すぐに琴音ちゃんに話したかったけど、学校では話す機会もあまり無く、なかなか話すことができなかった。だって、夢のことを話したら、水槽のことも話さなきゃいけなくなる。水槽の話になったら、デオドラントスプレーのこともばれてしまう。
その、デオドラントスプレーの方も、かばんの底に眠ってばかりで、なかなか取り出すことができなかった。それは、買う時よりもさらに勇気がいることなんだと、買ってから気づいたのだ。 結局、夢の話をすることも、スプレーを鞄から取り出すこともできないまま、運動会当日の朝を迎えることになってしまったのだった。