昔、或る国に、大きなしゃぼん屋があった。
洗濯石鹸、香り玉、なんでもござれ。しゃぼん屋の若旦那は大層な働き者で、しゃぼん屋はますます大繁盛。
ところがここの次男坊、とんだドラ息子。
朝から晩まで食っちゃ寝え、食っちゃ寝え。
あまったしゃぼんのカスを水に溶かしては、よしでプカプカ玉作りなんぞばかりして、ひまをつぶしてばかりいた。
しゃぼん屋のお向かいには、これまた大きなびいどろ屋があった。
鏡、食器、なんでもござれ。びいどろ屋の若旦那も大層な働き者で、びいどろ屋はますます大繁盛。
ところがここも、次男坊、泣く子も黙るドラ息子。
朝から晩まで食っちゃ寝え、食っちゃ寝え。
あまったびいどろのクズを火に溶かしては、鉄串でプープー玉作りなんぞばかりして、ひまをつぶしてばかりいた。
この二人、毎日暇で暇で仕方がないものだから、何かと張り合って、腕くらべばかりやっていた。
ある時は、どちらが大きな目やにを作れるかで勝負した。
二人とも目が開かなくなって、お互いの目やにの大きさを確かめられず、勝負がつかなかった。
ある時は、どちらが高いところに登れるかで勝負した。
しゃぼんやは、ここらで一番背の高い一本松に登ったが、途中でオオワシに攫わた。
びいどろ屋は、梯子をいくつもつなげて登ったが、途中でオオワシに攫われた。
二人仲良く池に落とされ、勝負はつかなかった。
そんな二人がいつものように、山でどちらが先に天狗の巣を見つけるか勝負しながら歩いていると、沼のほとりでカエルの夫婦が腕組みしてゲロゲロ唸っていた。
聞いてみると近頃オタマジャクシが生まれるが、育てる場所がなくて困っているという。
陸の上では干からびてしまうし、水の中では流されてしまう。
何か良い手はないだろうか。
これを聞いたしゃぼん屋、ぽんと膝を叩いて立ち上がった。
「よしきた、俺に任しとけ!立派な棲みかをこしらえてやる。」
負けずにびいどろ屋も立ち上がる。
「なんのなんの、俺に任しとけ!立派な棲みかをこしらえてやる。」
こうして二人は、どちらが立派なオタマジャクシの巣をこしらえるかで腕くらべを始めた。
しゃぼん屋はあのしゃぼん、このしゃぼん、と混ぜ合わせ、水に溶けないしゃぼん玉を作った。
「どうだい、柔らかくて、居心地いいだろう。」
生れて来たオタマジャクシは喜んでしゃぼん玉の中に入った。
ところが、オタマジャクシがしゃぼん玉の中でくりんくりんと寝がえりを打つと、しゃぼん玉はパチンパチンとはじけてしまった。
「やっぱりもっと丈夫じゃなけりゃ!」
張り切ったのはびいどろ屋だ。
あのびいどろ、このびいどろ、と混ぜ合わせ、丈夫なびいどろ玉を作った。
「どうだい、丈夫で綺麗だろう。」
オタマジャクシは大喜びで、びいどろ玉の中に入った。
ところがしばらくして、オタマジャクシが大きくなってくると、小さな出入り口から出られなくなってしまった。
そしてとうとう体がぎゅうぎゅうになって、びいどろ玉がはじけてしまった。
びいどろ玉のはじけたかけらが体中に刺さって、オタマジャクシは大けがをした。
親ガエルたちは自分たちの子供が酷い目にあったので、悲しくて悲しくて、大粒の涙をぽろぽろ落として泣きじゃくった。
すると、どうだろう。
カエルの涙が水に落ち、その涙の中にするっとオタマジャクシが入り込んだ。
「わー、なんて柔らかくて心地いいんだろう」
「それに丈夫でとっても綺麗」
オタマジャクシはみんな大喜び。
さっきまで泣いていた親ガエルも涙を流しながら大喜び。
こうして、カエルの涙がオタマジャクシの巣になったんだって。
さて、カエルの巣作りでも勝負がつかなかったしゃぼん屋とびいどろ屋はどうしたかって。
今でも、しゃぼんでプカプカ、びいどろでプープー玉作り。暇にあかして勝負を続けてるんだとさ。
おしまい