第68回長崎原爆忌平和祈念俳句大会ご報告

会長挨拶

 第68回長崎原爆忌平和祈念俳句大会は、令和3年7月31日に長崎市原爆資料館平和学習室で開催予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、昨年の第67回大会に引き続き、止むなく投句のみによる開催と致しました。来年の大会は、この感染症の流行の終息の具合にもよりますが、長崎に会して、被爆犠牲者を追悼するとともに、応募句に対する熱心な討論と参加者による当日句会の開催という本来の形で実施したいと思っております。

 大会誌は8月末に発行し、全投句と表彰句、選者選評などの詳しい内容を、投句を頂いた皆様、選者の皆様、後援を頂いた皆様にお届けする予定でございますが、このホームページにも一般句、ジュニア句の表彰句を掲載し、皆様にご報告いたします。

 次大会の第69回大会は令和4年7月23日(土曜日)に同じ会場で開催予定でございますが、事態の推移を見て改めて正式にお知らせしたいと思います。皆様の変わらぬご協力をお願い致します。

令和3年8月20日

長崎原爆忌平和祈念俳句大会実行委員会

会長  倉田明彦                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                             

第68回長崎原爆忌平和祈念俳句大会入賞作品(一般の部)

大会大賞

  被爆図を抜けて蛍となる少女             渡辺をさむ(鳥取県)


長崎県知事賞

  黙祷の影に加わる揚羽蝶               坂田正晴(大分県)


長崎県県議会議長賞

  夏蝶の記憶ガラスの音が降る             藤澤美智子(長崎県)


長崎県教育長賞

  敗戦日いのち一つの傘寿かな             赤澤敬子(東京都)


長崎新聞社賞

  被爆七十五年『原爆俳句』上梓して重し        横山哲夫(長崎県)


現代俳句協会賞

  長崎忌十四の少年だった僕              中村重義(福岡県)


新俳句人連盟会賞

  生きてあれ生きてあれよとの声           中村重義(福岡県)


西九州現代俳句協会賞

  八月のどのページにも火の臭い            渡辺をさむ(鳥取県)


口語俳句振興会賞

  桑の実を噛んで老いゆく不信の世           櫻井久子(和歌山)


長崎平和推進会賞

  夏の蝶風にあの日の火の記憶             桑原淑子(宮崎県)


優秀賞

  あの日の水凹むほど呑む蝶のいて           小山 淑(長崎県)


優良賞

  ゴム跳びのあの子のかけら又八月           小山裕子(長崎県)


優良賞

  原爆忌何も映さぬ鏡あり               山本則夫(福岡県)

第68回長崎原爆忌平和祈念俳句大会入賞作品(ジュニアの部)

大会大賞

  該当作なし


長崎市長賞

  原爆忌手ですくいとる重い水             鍵 千咲姫(長崎市立淵中学校三年)


長崎市議会議長賞

  教科書にたった三行原爆忌              川原未夢(長崎県立長崎西高等学校一年)


長崎市教育長賞

  空の色融けたラムネの瓶のいろ            柳田継互(長崎市立淵中学校三年)


長崎新聞社賞

  麦匂ふ村に被曝の碑の建ちぬ             山根大知(愛媛県立松山東高等学校三年)


長崎県文芸協会賞

  語り部から受け継ぐ平和パズルのピース        大川真滉(長崎市立淵中学校三年)


長崎の証言の会賞

  昭和の日戦争知らぬ罪を知り             原田晋之介(長崎市立淵中学校三年)


長崎県被爆者手帳友の会賞

  シャーペンを止め顔上げ思う長崎忌          沖中陽音(長崎市立淵中学校三年)


長崎如己の会賞

  原爆忌地球はあの日を覚えている           川添男丸(長崎市立淵中学校三年)


長崎キワニスクラブ賞

  千羽鶴紙と祈りを重ね折り              吉岡優里(長崎市立淵中学校三年)



優秀賞

  秒針のゆっくり進む長崎忌     宇都宮駿介(愛媛県松山東高等学校一年)


優良賞

  起き抜けの心臓しづか原爆忌    山根大知(愛媛県松山東高等学校三年)


優良賞

  ケンカした友にラインす原爆忌   谷口春菜(愛媛県松山東高等学校一年)


(*大会大賞に関しては、いったん入賞句を決定したが、その後先行句に類似している旨の指摘があり授賞を取り消した。)     

第六十八回長崎原爆忌平和祈念俳句大会記


 第六十八回長崎原爆忌平和祈念俳句大会(同実行委員会主催、長崎新聞社共催)は、令和三年七月三十一日(土)に開催する予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の深刻な蔓延状況を考慮し、長崎に一堂に会しての開催は断念いたしました。

昨年も同様の理由で大会の開催を中止しており、実行委員会としては何としても予定通り開催できないか模索しておりましたが、長崎県内においてもゴールデンウイーク直後に六十五名の感染者を記録して以降、徐々に減少しているものの予断を許さない状況でした。話し合うべき実行委員会自体も開くことが憚られ、執行部がオンラインや電話にて協議し、例年県外からの参加者もあることなどを勘案し、残念ながら今年も中止やむなしという結論に至りました。六月上旬に長崎原爆忌平和祈念俳句大会共催・後援各団体、選者、および投句者全員に大会中止のお知らせを送付させていただきました。

 今年も募集句のみの大会となってしまいましたが、一般の部には全国から七六四句、またジュニアの部には三六〇句が寄せられ、選句の結果、大会大賞は一般の部では鳥取県の渡辺をさむさんが受賞しました。ジュニアの部の大賞については、八月九日付長崎新聞紙上にて発表後、新聞読者から先行句があるようだとの指摘があり、実行委員会で精査した結果、本大会とは異なる過去の俳句大会での受賞句の類句と判断し、当大会の規定に基づき大会賞の授賞を取り消し、該当句なしという決定をいたしました。

俳句は十七文字で構成される短詩系文学ですから、類想類句ができてしまうことはよくあることです。先行句がある場合、後に発表した作者はその作品を取り下げるのが、俳句を作る者の暗黙のルールになっており、当会もそれに則り規約を定めています。ですから選者は先行句や類似句がないかどうか確認しながら選句しますが、全国各地で開催される、本大会以外の俳句大会までは掌握しきれないというのが正直なところです。しかし、選者の不勉強によって今年のような悲しい結果が出ないよう、私たちもしっかり精進しなければと大いに反省させられました。ぜひ来年はオリジナリティ溢れる作品をお待ちしています。

投句をしていただいた全国の俳人の皆様、生徒の皆さん、ご多忙のなか大会募集句の選をしてくださった全国各地の選者の皆様に深甚なる謝意を表します。ありがとうございました。

事務局長 馬津川ゆり