大会記
実行委員 倉田 明彦
第六十三回長崎原爆忌平和祈念俳句大会(同実行委員会主催、長崎新聞社共催)は、平成28年7月23日(土)午後1時から、長崎原爆資料館(長崎市平野町)の平和学習室にて開催されました。
中村昭夫大会事務局長の司会で開会。まず原爆被害者の冥福を祈って全員起立して黙祷。併せてこの大会の開催に長年尽力された故辻正雄氏、阿野露團氏に黙祷が捧げられました。
続いて大会会長横山哲夫が開会の挨拶を行いました。その中で、会長は、まず本大会の沿革について述べ、長与町の若き俳人栁原天風子氏の発案で全国にさきがけて昭和29年に第一回大会が開催されたこと、初期は俳誌「土曜」の隈治人氏、山本奈良夫氏により大会が運営され、平成7年からは現在の実行委員会形式で開催されてきたことを紹介しました。続いて大会の目的について、「原爆の非道さ、戦争の残酷さを告発し、語り継ぎ、平和を希求する心を俳句という形式で訴えていくことにある」と述べました。本大会の特筆すべき事柄に、一般部門に加えて中学生、高校生を対象にしたジュニア部門を設けていることがありますが、会長は、被爆体験の継承という観点からも、また本大会の主旨の継承という点からも、さらにジュニア部門の大切さが増しているとジュニアに対する期待を表明しました。同時に、このジュニア部門の開設にあたっては、亡くなった辻正雄氏が特に尽力されたことを重ねて紹介しました。さらに平成25年の人口統計を引いて、戦争体験者の全人口に占める割合が7人に1人(14%)と低下するとともに高齢化しており、戦争、被爆の体験の継承は喫緊の問題だと強調しました。
会長挨拶にひきつづいて、今大会の来賓である西山常好氏(「母港」主宰)、深野敦子氏(「杏長崎」主宰)、永田桃花氏(世界俳句クラブ「フリーダム」副主宰)、および今大会の記念講演をお願いした真宗大谷派長崎教区萬行寺(西彼杵郡時津町)前住職亀井廣道師が紹介されました。
亀井廣道師は1945年、長崎県のお生まれで、大谷大学仏教学科卒業。原爆50周年の際に真宗大谷派長崎教区の非核非戦法要実行委員会事務局長を務めておられます。今回は「非核非戦」と題してご講演をいただきました。
講演は、まず法句経129「すべての者は暴力におびえ、すべての者は死をおそれる。己が身をひきくらべて、殺してはならぬ。殺さしめてはならぬ。(出典/「真理のことば・感興のことば」中村元訳・岩波文庫)の唱和で開始されました。ついで、師は、「非核非戦」について、原爆被爆のことを長年にわたって検討した結果、真宗大谷派の方々が到達した仏教的立場であり社会へのメッセージであると表明されました。非核の「核」とは煩悩に基づいた浅いチエ(無明)の意で、「戦」とは自分を正義とし他者を悪とする差別の心を意味します。そしてこの「戦」と「核」が、他者に向けられる「反」とのみ結びつくのであれば、再び人々の間に対立を生じ戦争の悲劇を繰り返すことになってしまう。しかし、あの被爆の日の死者の惨状をつぶさに知り、一心に弔い続けると、それが縁となって、亡くなった人ではなく生きている我々自身が、「悲」の心という阿弥陀如来の本願に出会うことになる。「非」は「悲」であり、「非」という自分の内に問いかける言葉をもって初めて、自分の内なる「核」と「戦」と向き合うことができるのだと述べられました。
講演に引き続き、応募句の中で表彰を受けた句(表彰句は下記掲載)についてフォーラム形式での合評が行われました。一般の部の司会は実行委員の平坂桂太、倉田明彦、ジュニアの部は江良修、小山淑が担当しました。来賓のお三方およびフロアーの参加者にも発言を頂き活発な議論がなされました。ただジュニアの皆さんにとっては、初めて見る句についてその場で感想を述べるということは難しいし、実りある合評に結び付きにくいという反省の意見が実行委員会の一部から出されました。今後の運営の改善に結びつけられればと考えています。一般の部の大会大賞は大分県の谷川彰啓さんが二回目の受賞、ジュニア部門は愛媛県立松山東高の内田岳志君が長崎市長賞と合わせて受賞しました。内田君はご両親と共に、遠路、大会に参加してくれました。
次いで、当日参加者による句会(大会出席者のみ当日一句投句)が行われ、江良修と藤澤美智子が合評会の司会を担当し、来賓の先生方と実行委員の選により古賀愛子氏の「砂時計命の粒と思う夏」が大賞にえらばれました。
表彰式は各部門別に行われ、横山哲夫会長が受賞者に表彰盾、記念品を贈呈しました。午後4時30分、倉田明彦が閉会の辞を述べて、会は予定通りつつがなく終了いたしました。
この俳句大会に投句をしていただいた全国の俳人の皆さん、生徒の皆さん、学校の先生方、ご多忙にもかかわらず大会募集句の選を行ってくださった全国各地の選者の皆さんに心からお礼を申し上げます。そして、また来年もこの俳句大会に参会していただきますようよろしくお願い申し上げます。
大会会長挨拶
大会講師および来賓
ジュニア部門大賞受賞者
第六十三回長崎原爆忌平和祈念俳句大会
応募句数
一般の部 800句
ジュニアの部 1459句
当日句 51句
(当日参加者 60名)
ートピックスー
1)今回は一般の部、ジュニアの部ともに、昨年の応募句数を上回りました。
2)大会史上初めて、海外より投句がありました。
ワシントン日本語学校より33名、計67句でした。今回は残念ながら受賞には至りませんでしたが、いずれも立派な句でした。来年も投句を待っています。