spacegiraffeとユリシーズ

比較論:Space Giraffeとユリシーズ

独立系ゲーム開発者Jonathan Blow(現在XBLA向けにゲームBraidを開発中)によるSpace Giraffeレビューのレビュー論の参考訳

In which I compare Space Giraffe to Ulysses

http://braid-game.com/news/?p=100

Space Giraffeをはじめて見た時には、それが素晴らしいゲームかどうかわからなかった。ジェフ・ミンターがGame Developers Conferenceでデモをしていた。しかし、時々敵を体当たりで倒せるということをのぞいて、ただテンペストであるように思えた。そしてジェフは、これはテンペストでないと繰り返していたが、彼はなぜこのゲームが興味深いものであるのかうまく伝えられていないようだった。(この講義のあと何人かの参加者に話をして確かめた。皆はSGはサイケデリックなものが追加されたテンペストであると考えていた)

Xbox 360でSpace Giraffeを遊びだした時には、まあ普通だと思った。自分がレビュワーなら、6点か7点のゲームだとおもった。クールではあるが、特別ではない、と。

しかし、それからさらに遊んで、ゲームを理解するようになった。そして今は、Space Giraffeへの熱狂を語りたい。このゲームに10点満点で10点を与える以外に考えられないと。まだそれでも最終決断をするには早すぎるかもしれない。まだ18面くらいまでしか到達していないからだ。だが、ここまでの段階でたった5ドルという値段をはるかに超えるものをゲームから得ることができた。

このゲームの周りに起こった論争を聞いたことがあるかもしれない。最初のレビューはOfficial Xbox Magazineのもので、そこではDan Amrichがこのゲームに酷い20点(100点満点)のスコアを出していた。このゲームは醜く、遊ぶのが不可能だと書いていた。

ジェフ・ミンターはblogで、少し怒ったような反論をした。Danはゲームをまったく理解していないし、正しく遊んでもいないと。ゲームがあまり良くない出来という現実に直面しても妥当な批判を受け入れられない時に、開発者がこういうことを発言することもよく起こっている。だが、今回は違う。ジェフ・ミンターは正しい。このレビュワーはゲームを理解できていなかったのだ。

このことで自分の心は浮き立った。ゲーム批評の水準を引き上げる可能性を持ったゲームがでてきたのだ。そして、その理由は、知識偏重ではない。型を破り、何か違った、普通ではないものになろうとしているところにその理由がある、真価を知るために努力が必要なゲームが現れたのだ。

Space GiraffeのMetacriticでのユーザレビューを見ると、激しく二分していることがわかる。9、10をつける人間(これらの人はゲームを理解していると思う)と0-2の人間(ゲームを理解してない)だ。

まだ周辺の話ばかりで、なぜこのゲームが素晴らしいのか言っていないことに気がついた。ああ、自分が正しく説明できるかわからない。ゲームを遊んで、感じる必要がある。大雑把に説明すると、敵とのインタラクションは本当に巧妙であり、歪んだ世界論理がゲーム内部には一貫性を持って存在し、心をつかんで離さないゲームプレイを作り上げている。そしてまた…

…そう、物が見えにくい場合が多い。光る背景色の中で見落とした弾に殺されたり、自分のキリンがどこにいるかわからなくなったりすることもある。普通は、これは悪いゲームの印だ。しかし、このゲームにおいては、重要な意味を持ったポイントだ。面が進むと、敵が増え、速度が早くなり、危険になるだけではない。あなたは知覚の歪みのより奥深い世界に押し出され、それを越えて見ることを求められる。まあ、最初は、出来ない。やがてパターンを超越して見ることができるようになり、突破し、続くゲームの面を航海していき、その間中踊れるようになる。このゲームは、知覚を拡張する。「見ることを学ぶ」ことを要求する。低い得点を与えたレビュワーは、精神を閉ざしていたのだとおもう。こうした「学び」を受け取れなかったのだ。このゲームは、静かに耳を澄ますプレイヤーには、プレイヤーに何をしてほしいのかを明らかに伝えている。

この意図をもっと明確することもできたかもしれない。チュートリアルはあるが、ゲームの基本しか教えない(それもとてもわかりやすいというわけではない)。チュートリアルには「このゲームはあなたにかつてないほどの知覚的狂気を投げかける。あなたの目的はそれを理解することだ」といったことは言わない。この文はおせっかいすぎるかもしれないが、ジェフがゲーム構造をこのようにしたのなら、最初からその意図を明らかにしておけば、悪いレビューを防げたのかもしれない。

Space Giraffeはゲーム研究にとっても興味深いものかもしれない。このゲームはゲームリテラシーの獲得プロセスを鋭く扱っている。リテラシーを前提としたゲームについては、ゲームの授業を受ける人のほとんどが理解している。しかし、Space Giraffeはこのリテラシー獲得プロセスに焦点をあてている。熟練プレイヤーであっても発見の長いプロセスを必要とするゲームだからだ。

(敢えて、Space Giraffeはアーケードゲームにおけるユリシーズのようなものだと発言してもいいだろうか?物議を十分に醸せるだろうか?これでSpace Giraffeに低い点を与えたレビュワーに意趣返しができるだろうか?)