田端泰子・上野千鶴子・服藤早苗編 「シリーズ比較家族8 ジェンダーと女性」 早稲田大学出版
本著は1994年と95年に開かれた比較家族史学会の報告という意味あいをもっている。
この学会のテーマは「女性史・女性学の現状と課題」であり二年連続で行われた。京都であった94年の学会は一般参加もでき私も会場にいたのだが、ちょうど上野氏の「近代家族の成立と終焉」がでたところで、落合氏との緊迫したやりとりが印象的であったと覚えている。この会では今まで「距離をおいていた」女性史と女性学が「ジェンダー」という概念をもって、はじめて同じテーブルについた会であった。本著にも表れているように、歴史学からの報告もあれば、また社会学からの概念の見直しがあり、報告は多岐にわたっている。イギリスでは伝統的な歴史雑誌が女性史研究に乗っ取られたと嘆く声もあるほど女性史研究が活発になってきているということだが、日本の研究でははたしてどうであろうか?確かに上野氏が指摘するように歴史研究とは「物語の語り」に近く「言説の政治」から自由ではないのかもしれない。でも日本に関していえば、歴史の見直しはこれから始まるといえるのではないだろうか。今までの日本の正史や民俗誌に依らず、視点を買えた新しい研究がさらに出てくることに期待したいと思う。
でるくい 創刊号1999年11月