上野千鶴子「40歳からの老いの探検学」 三省堂
読みやすい対談集でお薦めできる。一番おもしろかったのは、樋口恵子氏との対談。「女は35歳から老後」社会、企業、夫、子どもの「誰からもお呼びのかからない人生に入っちゃったんですよ」と冷たく言い放つ上野氏。でも当たっている。樋口氏は、だから多くの女は夫子を窓辺で見送る「窓際族」になると外に出て他の女たちに出会い結びついてきたのだとして「老後」の意識と行動のずれは夫婦間で20年近くあると分析している。また介護の問題では、家族に遺留分が自動的にキープされている財産制度をとりあげ、財産が家族でなく個人に帰属するという観念を作らない限り個人主義は育たないと指摘している。ただ上野氏の「子どものいない老後」の不安は、私にはピンとこない。彼女の奥底にはいつも「ひとりで生きること」への不安があるのかなと上野フアンの私は胸がキュンとなった。
あどば〜に4号 1998年9月