前号の「サル学、あるいは学問的真実の話」に同感。権威ある学問の世界は男性の世界。今までの人間の研究や人間に近いサル社会の研究はかなり怪しいような気がする。
それでも「女性学」が大学に入ってくる今日、一部巻き返しが始まったところかもしれない。
アドバイザー養成講座の修了生が集まって読んでいる「英語でフェミ」では、ロンドンで出版された「社会学」の教科書の「ジェンダーとセクシャリテイ」の章を読んでいるが、ちょうどそこにもフロイト理論がでてきたので、その部分を紹介してみたい。
フロイト理論はジェンダーアイデンティティの出現について最も影響力のあった理論であり、同時に議論の余地もある理論という。フロイト理論では幼い時のジェンダーの違いはペニスの有無という点に集中して論じられる。すなわち「私はペニスをもっている」ということが「私は少年である」ということと同義であり、また4〜5歳頃には母親の愛情に関して父親をライバル視しながらその欲情を抑制し父親を同一視して男性としてのアイデンティティに気づく。女の子はその逆でありペニスを妬みながら同じくペニスのない母親を「二番目によい者」として同一視する時、従順な態度を受け継ぐのだとしている。
それに対してフェミニスト等の反論は1️⃣「性器の自覚」の過重評価2️⃣男性性器が女性性器より優秀というきめつけ3️⃣しつけを行う父親の過重評価4️⃣より早い時期のジェンダー学習の重要性などであり、その後の多くの研究がフロイト理論を修正して使っていった。
例えばチョロドウは、子供が幼いとき最も影響を及ぼすのは母親であり、その愛着を壊す過程で少年と少女への違った道が生じるとしている。すなわち少女は母親に近いところで抱きついたりキスしたりしながら、人とつながっているという自己認識を発達させていく。一方で少年は「いくじなし」や「母親っ子」にならないように密着を拒否することで自己認識を得るとしていて、このため、少年たちは比較的人と関わるのがへたで自分の環状を抑制してきたとしている。チョロドウはフロイトの理論をある程度覆したといえる。男らしさは、母親から分離によって形成されるとと説明されたし、大人になってから他者と親密な感情的な関係に巻き込まれたら男性はアイデンティティが危機にさらされると感じるとしている。一方女性は他者とのしっかりした関係がないのは自尊心を脅かすことだと感じているとしていて、さらには、はじめは母親と次には男性に依存するようだと述べている。
この教科書では、チョロドウの理論はいくつかの点で批判されてはいるものの、まだ有効であり、我々に「女らしさ」の性質についてたくさんのものを教えてくれる、と結んでいる。
おそらく社会学や女性学ではこういった説明がされているのではと思うが、心理学では、どのように紹介されているのかな?先日も心理学の先生に夢判断をしてもらったら「ピストル」は「男性」を表すと言われたという話をきいた。これもフロイト理論からの派生だろうか。
でるくい創刊号 1999年11月