【コラムニスト:宮本向日葵 】2020.10.18
突然ですが、皆さんは心に浮かんだ言葉や感情をどう処理していますか?美味しいものを食べる、カラオケで歌う、友人と遊ぶ等々ストレス発散の方法というのは様々ですが、“思考の物質化”が発散方法になり得ると言われています。その手段であり筆者も活用している、書く瞑想とも言われている「ジャーナリング」について話をしていきます。
「ジャーナリング」とは、“頭に思い浮かんだ行為を紙に書き出す行為”を指します。方法は単純で、紙とペンを用いて、一定の時間とテーマを決め、テーマに沿って思い浮かぶことをひたすら文字に起こすだけです。この際に重要なことは、手を止めず思い浮かんだ感情をすべて書くこと。そうすることで、気持ちを外部に出す訓練になり、見える化される部分も増えていきます。
「ジャーナリング」に関わる研究は、テキサス大学の社会心理学者であるジェームズ・ペネベイカー教授によってされています。失業者を対象にしたこの研究調査によると、5日間連続で毎日20分間のジャーナリングを実践した人たちは、「ジャーナリング」をしなかった人たちに比べて、8ヶ月後の就職率が40%も高かったのです。「ジャーナリング」をした失業者は、大きなストレスや悩みで頭の中がモヤモヤしがちな就職活動を乗り切り、見事に就職することができたというわけです。
また、別の実験も行なっており、被験者を2つのグループに分け、一方には感情的に大きな影響を受けた出来事を書かせ、もう一方には日常的なこと(通りを行き交う車のことなど、感情とは関係ないこと)を書かせました。20分ずつ3日間続けた結果、感情的に大きな影響を受けたことを書いたグループは、日常的なことを書いたグループに比べて、心身の健康が大幅に向上したのだそう。実験の数ヶ月後でも、血圧の低下、免疫機能アップ、通院回数の減少、幸福感の高まりが続いたといいます。
このように、さまざまな心理学的指数やストレス指数の改善が見られることが証明されており、自分の心の内を紙にひたすら書いて自分の深層に向き合うことで、心身ともによい効果が得られることが分かっています。まだ手をつけていない課題や将来のキャリアなどは、心配ごとや不安、ストレスの原因になります。未来に不安があると集中力が削がれ、本来やるべき仕事ではなく他の作業を始めたり、ネットサーフィンをしたりして、現実逃避することが多くなってしまいます。そして、本来やるべきことに集中できない状態に陥り仕事の効率を下げます。仕事の効率を高めるには、マインドフルネス(今ここに集中する)な状態にもってくることが重要になります。マインドフルネスな状態に至る手軽な手段として注目されているのが「ジャーナリング」です。紙に書き出すことで集中力を高めることができるほか、自分や物事を客観視でき、そこから気づきや発見が得られます。これによって、否定的な感情の増幅を抑えることができるようになり、次に進む精神状態をつくり出すことができるようになります。
以前、作詞をする機会をいただき、作業を進めていた際に、疑問を抱いた“こころの内を書き起こす”という自分の行為を調べていた中で「ジャーナリング」という言葉と出会いました。私は、自分のこころを穏やかに保つための道具として使っています。もやもやしている原因が分からない際やアイデアを思いついた際、やってみてもいいかなと思ったら、是非活用してみてください。しなければいけないわけではない、やらされていない状態で自分と向き合う時間を設けることで、救われる感情があるかもしれません。