2025年7月3日
優生保護法最高裁大法廷判決から1年、
歴史的判決から始まった解決への道をさらに前に
優生保護法被害全国原告団
優生保護法被害全国弁護団
優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会(優生連)
2024年7月3日、優生保護法が最高裁判所大法廷で、憲法違反と判断され、国の過ちと責任を断罪してから1年が経ちました。最高裁大法廷での感動の涙と「人権の砦は生きていた」の実感は、今も鮮明によみがえります。同時に、すでに亡くなられた原告や被害者の痛みやつらさに思いを馳せるとき、「国は、どうしてもっと早く…」という悔しさと怒りは今も拭えません。
判決を受けて、政府はそれまでの主張を一転させ、岸田文雄元総理大臣による直接謝罪と優生保護法問題の全面解決への約束がなされ、こども家庭庁担当の加藤鮎子元大臣、小泉龍司元法務大臣の謝罪面談が相次ぎました。また今年1月17日の補償法施行の日には、石破茂総理大臣からも直接謝罪と岸田元総理の約束を継承する旨の発言がありました。そして3月27日の第1回定期協議では、これまで謝罪のなかった厚生労働省と文部科学省の政務三役から正式な謝罪がなされました。
他方、原告らは、「どんなに謝罪されても、体の傷もこれまでの人生も元には戻らない」と今も悔しさを募らせています。そのうえで、「声の挙げられない被害者がいることを忘れないで」「すべての被害者に謝罪と補償を届けて」「二度と同じことが起きないように」「命を分けない社会を」「差別をしない社会を」と未来の社会づくりへの強い望みを述べています。
国は、判決を機にようやく、全面解決に向けて動き始めました。2024年9月30日には、政府と原告・弁護団・優生連との間で、「被害の回復、優生思想及び障害者に対する偏見差別の根絶等、優生保護法問題の全面的な解決をめざす」とする基本合意が結ばれました。同10月には衆参両院で「謝罪決議」と「補償法」が全会一致で採択され、補償法は、今年1月17日から施行に移されています。
こうした中、最優先すべき課題は、原告をはじめ、声を挙げられずにいる被害者に国の謝罪と補償を届け、被害を受けた人たちの尊厳と名誉を回復することです。被害者の大半は後期高齢にあり、これらの課題解決は時間との闘いです。
最高裁の判決は、国だけでなく、各自治体、司法、医療、福祉、教育、マスメディア関係者などに対しても、半世紀もの間、優生政策に目をつむり、被害を増大させ、優生思想、障害者への偏見差別を広げた責任を問うものでした。合わせて、広く市民社会にも偏見や差別を無批判に受け入れてきたことについての責任と反省を迫るものです。
私たちは、最高裁判決から1年目を迎え、あの正義の判決を改めて心に刻み直します。
私たちは、すべての被害者と家族のみなさんに、国が優生保護法問題のすべての責任を認めて謝罪し、みなさんの尊厳と名誉の回復のために補償法を制定したことを最大限に生かすことを呼びかけます。
私たちは、市民のみなさんに、今も残る優生保護法問題の全面解決に向けて、いっしょに歩み続けていただくことを訴えます。
2025年7月3日
2025年3月6日
障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた行動計画に関する見解
全国優生保護法被害弁護団
優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会
2024年12月27日、内閣総理大臣をトップとした「障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた対策推進本部」(以下、対策推進本部という)が「障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた行動計画」(以下「行動計画」という)を発表した。
しかし、この対策推進本部は、2024年7月3日の優生保護法裁判をめぐる最高裁判決が背景となっているが、岸田元総理大臣から原告ら被害者へ謝罪の際の約束を踏まえているとはいえず、また「行動計画」が発表された後の2025年1月17日「旧優生保護法に基づく強制不妊手術などに対する補償金支給法」の施行日に、石破総理大臣が原告や私たちと面談した際の「政府の責任は極めて重大。真摯に反省する」「優生手術といった個人の尊厳を蹂躙する、あってはならない人権侵害を二度と起こしてはいけない」発言についても、推進本部の本気度は伝わってこない。従来の「理解促進・広報啓発の取組」と同様で、これまでの法律や仕組みを踏襲し、周知や啓発の範囲にとどまっていることは残念である。
優生保護法により社会に根付かせた障害者らへの差別・偏見については、最高裁判決でも国の責任は「きわめて重大」と認定されたが、それらの偏見・差別を解消し共生社会を実現しようとするためには、より具体的、実効性のある劇的な大改革が必要である。
私たち、優生保護法被害弁護団と全国25団体からなる「優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会」(略称:優生連)は、この度、発表された行動計画に対して、国が果たすべき役割と責任について以下の通り見解を表明する。
記
この行動計画は「優生保護法」問題から端を発しつくられたはずだが、優生保護法問題の全面解決に向ける視点が弱い。以下の各項目に優生保護法問題から観えた「障害者に対する偏見や差別のない共生社会への実現に向けた」視点を記すべきである。
1. 「Ⅰ はじめに」
① 「これまで障害のある人が受けてきた差別、虐待、隔離、暴力、特別視はあってはならないものである」とされているが、これは優生保護法の第1条目的「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止し」が、障害等のある人への偏見、差別を根付かせ、浸透させ、助長してきた最大の要因であったことを明記すべきである。
② また、総理指示に「優生保護法の過ちを二度と繰り返さないための取り組み」は入れるべきである。
③ 「Ⅲ 取り組むべき事項」
「基本的スタンス」に、最高裁大法廷での判決についての対策推進本部のスタンスの明記は必要である。また、「人権侵害に迅速に対応できる実効性のある体制の構築についての検討の取り組み」も必要だと考える。
④ 「Ⅳ 実施体系について」
「外部有識者や障害当事者の参画の下、実施状況を監視する体制を強化」とあるが、優生保護法について最高裁判決後に結ばれた基本合意の中にある「真相究明・再発防止のための調査・検証」「差別の根絶に向けた施策」の協議内容についても行動計画に位置づけ、取り組みに反映すべきである。
2. 「Ⅱ ヒアリングにおいて当事者の方々から示された主な問題意識」
行動計画策定に当たり4回のヒアリングを行ったとのことだが、幹事会アドバイザーに、精神障害者・知的障害者、女性が不在であることに強い違和感を覚える。
障害者権利条約委員会は、精神・知的、女性障害者など、より弱い立場に置かれがちな障害者を参画させるよう求めているが、今回のヒアリングの対象者や団体においては、障害種別やジェンダーバランスが考慮されておらず、優生保護法の原告へのヒアリングがされたことは一定の評価ができるが、長年、優生保護法問題に取り組んできた研究者や団体が不在であった。
こうした点からも、障害者に対する差別・偏見のない共生社会の実現に向けて取り組むという意気込みは、国の姿勢からは感じられない。
3. 「Ⅲ 取り組むべき事項」
全体として、当事者ヒアリングで出されたとされる10の主な意見や『III 取り組むべき事項』として示された(基本的スタンス)と、同じく取り組むべき事項としてあげられている4つの事項とでは、大きな乖離がみられる。また、それらを実現させていくための具体的な取り組みはみられない。
① 子育て等の希望する生活の実現に向けた支援の取組の推進
当事者ヒアリングからは、子を持ち育てることを希望する障害のある人への支援が、現状では不十分であり、新たに法律に盛り込むことが要望された。しかし、具体的取り組みにおいては、現行制度での好事例の動画等による周知等にとどまっている。また、優生保護法問題の根本にある「性と生殖の健康・権利」(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス・ライツ)に向けた視点が皆無である。
性と生殖について自分で決める権利を奪われてきた女性や障害者の権利を取り戻すには、単に出産・育児への支援だけでなく、自分自身の身体を大切にするための自己決定権を行使するために、正しい情報や手段が得られるための教育が重要である。
特に障害のある女性が、性被害による妊娠を回避するために不妊手術を受けさせられたことは国会報告書でも明らかになっているが、現在でも、情報や知識を得られない状況の中で知的障害のある女性が妊娠し、孤立出産に追い込まれ、遺体遺棄などで逮捕される事例がある。このような事態が起きないために、避妊や中絶も含め、正しい情報へのアクセスや手段を講ずることができるような支援が必要である。
性被害者にも加害者にもならないために、全ての人に対する包括的性教育を実施していくことが、障害女性の複合差別解消に取り組むうえでも重要である。
② 公務員の意識改革に向けた取組の強化
優生保護法の歴史的経緯や被害当事者の声を取り入れ再発防止に努めることや、障害当事者の参加の下、障害当事者の実体験、具体的事例の検討や優生保護法の措置を含む歴史的経緯なども含めた障害者差別に係る教材等を令和7年度中に作成することなど、新たな取り組みもある点は評価できる。その取り組みをより実効的なものにするためには、障害種別・ジェンダーなど考慮したメンバーによる取り組みとすることを前提とし考慮すべきである。
また、母体保護法に変わった後にも、強制不妊手術や中絶の強要が行われている実態がある。そして、この実態については、調査も検証もされていない。この実態の調査・検証を踏まえ、再発防止策も含めた検討は、障害者に対する差別・偏見のない共生社会の実現のためには必須である。
③ ユニバーサルデザイン2020行動計画で提唱された「心のバリアフリー」の取り組みの強化
職場や学校において障害のある人もない人も共に生きるインクルーシブ社会を目指し、教育や雇用の場で共に生きることが強調されているが、別紙『令和6年度以降の「心のバリアフリー」に係る取組』では、現状の分離教育において交流及び共同学習の機会を設けるという学習指導要領を推進することや福祉的就労の充実という現行の施策に重点が置かれており強化とはいいがたい計画である。
インクルーシブ社会を目指すには、「心のバリアフリー」といった慈悲や優しさではなく、障害の社会モデル/人権モデルの教育が必要である。
また早急な対応が求められる医療保護入院や身体的拘束等精神保健医療福祉の様々な課題については「精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会」を開催し、幅広く検討するという記述のみで、具体策は先送りされている。
④ 障害当事者からの意見を踏まえた今後に向けた更なる検討
「記憶を風化させないようにするための方策」とあるが、「優生保護法の被害実態の証言や資料などの保全、公開を含め、記憶を風化させないようにするための方策」と明確に示すべきである。
4. 「Ⅳ 実施体制」
当事者ヒアリングで出された意見や、今後も当事者の意見を聴いて更なるフォローアップを行うとのことだが、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価・検証)」「Act(改善)」の4つのフェーズからなる改善のためのPDCAサイクルの具体的な時期が示されていない。
今後の取組を行う組織として内閣府障害者政策委員会の名があがっているが、これらの委員はすでに多様な課題を担っており、さらに優生保護法問題に取り組むには無理がある。また、内閣府障害者政策委員会には含まれていない精神障害や知的障害当事者、優生保護法問題に取り組んできた弁護団・優生連等を含めこの問題に詳しい人、また障害者委員の女性割合を増やした組織が必要である。
以上を踏まえ、今後、基本合意に基づき行われる国と原告団・弁護団・優生連との協議においても、この行動計画のフォローアップ(進捗確認)と検証が行われ、バージョンアップ(改訂)していくことを要望する。
以上
2024年10月8日
優生保護法補償法制定に際しての共同声明
2024年10月8日、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律」(以下、補償法)が成立しました。これに先立ち、「旧優生保護法に基づく優生手術等の被害者に対する謝罪とその被害の回復に関する決議」(以下、国会決議)が、両院本会議で採択されました。
補償法は、2024年7月3日、最高裁判所大法廷で、優生保護法が違憲であり、国会議員の立法行為が違法と判断したことを受けて制定されました。法の前文において、国の責任と謝罪を明確にしています。そして、強制不妊手術被害者及び配偶者だけでなく、人工妊娠中絶も被害の対象として国の責任が認められました。
裁判の原告の6人が、最高裁大法廷の勝訴判決を見ることなく、国からの謝罪を受けることなく亡くなられています。被害者の多くは高齢です。ようやく制定された補償法による被害者の尊厳の回復は、一刻の猶予も許されません。国は、9月30日に締結した基本合意書に基づき、そして今般成立した補償法に基づき、早急に全ての被害者に対して補償の実現を図るべきです。
また、国会決議においても、優生思想に基づく誤った施策を推進させたことの責任を認め、謝罪をしました。そして、優生思想に基づく差別の根絶と、すべての個人が疾病や障害の有無によって分け隔てられることのない社会の実現を決意しました。
国会決議と補償法に基づき、二度と同じ過ちを起こさないための調査・検証の実施や再発防止策の追求がなされ、基本合意書において約束された私たちとの継続的・定期的な協議において、それらの進捗状況を点検したいと思います。基本合意書を締結した9月30日は「優生思想をのりこえて、生きるに値する人とそうではない人という分断、差別を無くす出発の日」でしたが、本日の補償法の成立により、それを実現するための第一歩を刻むことができました。
国は、被害について今なお声を上げられない被害者の方が、私たちや都道府県の相談窓口に相談できるよう、今般採択・成立した国会決議と補償法を広く社会に周知・広報してください。あわせて、優生保護法の歴史や被害の実態について、学校教育などを含めより多くの市民に知らせる機会をもつべきです。
私たちは、これからも市民のみなさんと手を携え、一刻も早い優生保護法問題の全面解決を実現し、優生思想に基づく差別や偏見の根絶を図り、すべての人が尊重される社会をめざします。
2024年10月8日
全国優生保護法被害原告団
全国優生保護法被害弁護団
優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会
2024年10月4日
優生連声明
基本合意書で早期の全面解決を
すべての被害者に補償と尊厳の回復を
優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会(優生連)
2024年9月30日、国(内閣府特命担当大臣)と優生保護法被害全国原告団、優生保護法被害全国弁護団及び優生連との基本合意書の調印式で、優生連は「優生思想をのりこえて、生きるに値する人とそうではない人という分断、差別を無くす出発の日です」と宣言しました。
7月3日の最高裁大法廷判決を受けて、加藤鮎子内閣府特命担当大臣(7月4日)、岸田文雄総理大臣(7月17日)、小泉龍司法務大臣(8月2日)との面会・謝罪が一気に実現しました。
そして、9月13日には、最高裁にかからなかった訴訟について、「係属訴訟の和解等のための合意書」が調印され、各地の裁判は次々と和解に向かっています。
また、9月18日の優生保護法下における強制不妊手術について考える議員連盟総会で了承された「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律(仮称。以下、補償法)」は、謝罪決議と共に国会提出を待つばかりです。
2018年1月に優生保護法の訴訟がはじまってから6年8カ月、国は20年経過したから加害責任を問えないという民法724条の除斥期間を盾に、原告をさらに傷つける不毛な争いを続けてきました。その間に、最高裁大法廷の勝訴判決を見ることなく、国からの謝罪を受けることもなく、39人の原告のうち6人が亡くなられました。
人権を侵害され続けた原告の必死の訴え、そして原告団・弁護団・優生連の「1日も早い優生保護法問題の全面解決を」という思いが、最高裁大法廷判決に続いて、9月30日の基本合意書に結実しました。この合意に、わたしたち優生連が当事者として参画したことは、大きな前進であり、重要な意義をもっています。
これから、私たちは、すべての被害者に謝罪と補償が届けられ、二度と同じ過ちを起こさないための調査・検証の実施や再発防止策の追求など、基本合意書のより早い実現に取り組みます。優生連は、今後も原告団・弁護団と一体になりながら、多くの市民のみなさんと手をたずさえ、一刻も早い優生保護法問題の全面解決を実現し、優生思想に基づく差別や偏見を根絶し、すべての人が尊重される社会をめざします。
基本合意書
優生保護法被害全国原告団、優生保護法被害全国弁護団及び優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会(以下「優生連」という。)並びに国(内閣府特命担当大臣(こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画))は、旧優生保護法による被害者の被害回復、優生思想及び障害者に対する偏見差別の根絶等、優生保護法問題の全面的な解決をめざし、次のとおり、基本事項を合意する。
なお、内閣府特命担当大臣(こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画)は、旧優生保護法改正後の母体保護法を所管する立場であり、また、関係府省庁を代表する立場として合意するものである。
1 国の責任と謝罪
昭和23年制定の旧優生保護法に基づき、あるいはその存在を背景として、多くの方々が、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するという誤った目的の下、特定の疾病や障害を有すること等を理由に生殖を不能にする手術若しくは放射線の照射(以下「優生手術等」という。)又は人工妊娠中絶を受けることを強いられて、子を生み育てるか否かについて自ら意思決定をする機会を奪われ、これにより耐え難い苦痛と苦難を受けてきた。
特定の疾病や障害を有すること等に係る方々を対象者とする生殖を不能にする手術について定めた旧優生保護法の規定は立法当初から日本国憲法第13条及び第14条第1項に違反するものであり、国は、国家賠償法上の国の損害賠償責任を認めた最高裁令和6年7月3日大法廷判決を真摯に受け止め、日本国憲法に違反する規定を執行し、優生思想に基づく誤った施策を推進し、特定の疾病や障害を有すること等に係る方々を差別し、特定の疾病や障害を有すること等を理由に優生手術等という個人の尊厳を蹂躙するあってはならない人権侵害を行ってきたことについて、悔悟と反省の念を込めて深刻にその責任を認めるとともに、心から深く謝罪する。また、これらの方々が特定の疾病や障害を有すること等を理由に人工妊娠中絶を受けることを強いられたことについても、心から深く謝罪する。
国は、これらの方々に被らせてきた筆舌に尽くしがたい苦痛と苦難を踏まえ、この問題に誠実に対応していく立場にあることを深く自覚し、被害者の被害と名誉、尊厳の回復に全力を尽くすとともに、二度と同じ過ちを繰り返すことのないよう、優生思想及び疾病や障害を有する方々に対する偏見差別を根絶し、全ての個人が疾病や障害の有無によって分け隔てられることなく尊厳が尊重される社会を実現すべく、全府省庁をあげて全力を尽くす。
2 「補償法」に基づく全ての被害者に対する補償の実現に向けた施策
国は、優生保護法下における強制不妊手術について考える議員連盟(以下「議連」という。)において検討されている「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律案〔仮称〕」(以下「補償法」という。)に基づき、全ての優生保護法被害者に対する補償の実現をめざし、下記の各項目に掲げる施策の実施等に全力を尽くす。
(1)相談窓口の整備、情報保障
国及び各都道府県における相談窓口を整備し、相談及び申請に際しての合理的配慮及び情報保障を徹底すること。
(2)広報及び周知
特定の疾病や障害を有する被害者に対し、適切に情報が行き届くよう、広報、周知の方法を工夫、徹底すること。
(3)被害者に対し確実に補償を届けるための施策
個別通知を含め、被害者に対し確実に補償を届けるためのあらゆる施策 を検討し、実施すること。
3 恒久対策等の実施
国は、違憲とされる国家の行為が約半世紀もの長きにわたって合憲とされてきたという重い事実、優生思想に基づく誤った施策によって、特定の疾病や障害を有する被害者が子を生み育てることについて自ら意思決定する権利を侵害してきたという事実を踏まえ、優生思想及び障害者に対する偏見差別を根絶し、障害の有無にかかわらず子を生み育てることについて自ら意思決定できる社会、全ての個人が疾病や障害の有無によって分け隔てられることなく尊厳が尊重される社会を実現すべく、全力を尽くす。
そのために、下記の各項目に掲げる施策等を実施する。
(1)優生保護法被害者の被害の回復に向けた施策
謝罪広告をはじめ、可能な限りの被害者の名誉回復のための措置を検討し、実施すること。
(2)真相究明、再発防止のための調査・検証
二度と同じ過ちを繰り返さないため、第三者機関による、徹底的な調査及び検証を実施する。なお、実施主体や構成員として優生保護法被害全国原告団、優生保護法被害全国弁護団、優生連等障害者団体の代表を含むことをはじめ、その具体的な内容については、今後の議連での検討結果を踏まえつつ、最大限調整する。
(3)偏見差別の根絶に向けた施策の推進
優生思想及び障害者に対する偏見差別の根絶に向け、法制度の在り方を含め、教育・啓発等の諸施策を検討し、実施すること。
4 継続的・定期的な協議の場の設置
上記の各施策等の具体化をはじめ、優生保護法問題の全面的な解決に向けた施策等の検討、実施に当たっては、優生保護法被害全国原告団、優生保護法被害全国弁護団及び優生連と関係府省庁との協議の場を設置し、継続的・定期的な協議を行う。
障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた対策推進本部を構成する関係府省庁は、上記協議の結果を踏まえた施策等を実現すべく、全力を尽くす。
令和6年9月30日
優生保護法被害全国原告団
共同代表・東京地方裁判所平成30年(ワ)第15422号
原告
優生保護法被害全国弁護団
共同代表
優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会
共同代表
内閣府特命担当大臣(こども政策 少子化対策 若者活躍
男女共同参画)
2024年9月1日
優生保護法問題の全面解決に向けた提言
優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会
(略称:優生連)
2024年7月3日、最高裁判所大法廷は、優生保護法被害国賠訴訟で、原告側の主張を全面的に認め、国に賠償を命じる判決を言い渡しました。
判決では、優生保護法は個人の尊厳を保障する憲法第13条と法の下の平等を定めた憲法第14条1項に違反するとしました。そして、不良な子孫の淘汰を目的とする優生条項は、立法当時の社会状況を勘案したとしても正当化できないとし、違憲の法律を作った国会議員の立法行為は違法だったと述べています。
また、国が長きにわたり、優生政策を積極的に推進し障害のある人を差別し、重大な人権侵害を生じさせたこと、優生条項が削除された後も賠償(補償)はしないという立場をとり続けてきたこと、訴訟提起の後に作られた「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律(一時金支給法)」も、国の賠償責任を前提とすることなく「見舞金」の支給にとどまったこと等を列挙し、このような国の加害責任の大きさに照らすと、「除斥期間の経過を理由に請求権が消滅したとして国が損害賠償責任を免れることは、著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することはできない」と述べています。さらに、これまでの最高裁判例そのものを変更し、国による除斥期間の主張は、「信義則に反し、権利の濫用として許されない」として、国に賠償を命じました。
私たちは、この判決を高く評価するとともに、国に対して、すべての被害者の人権回復、優生思想及び障害者に対する差別偏見の根絶に向けた具体的な取り組みを求めます。
被害者はすでに高齢で、一刻の猶予も許されません。私たち優生連は、最高裁判決を踏まえ更にそれを凌駕する視点から、早期の優生保護法問題の全面解決の実現のために、以下について提言します。
A 優生保護法被害に対する国の責任の明確化と謝罪について
1.国会で謝罪決議をすること
上記の最高裁判決で、国会の責任が厳しく断罪されている結果を受け止め、衆参両院において謝罪決議を行なうこと
B 新たな優生保護法被害を賠償(補償)する法律について
1.法律の名称と目的
(1)この法の名称には、①優生手術等被害者の人権回復、②賠償(補償)を含むこと。
例えば、「優生保護法に基づく優生手術等を受けた者の人権回復と損害賠償に関する法律」など
(2)この法の目的は、以下とすること
①優生手術等の被害者への謝罪
②被害者の尊厳の回復と賠償(補償)
③調査・検証
④優生思想の否定と再発防止
2.国の責任と謝罪を明文化
(1)法律において、国が責任の主体であること、ならびに被害者への謝罪と全面解決に向けた決意を明文
化すること
(2)国は以下の事項についての謝罪を明文化すること
①優生手術等により心身に大きな傷を与え、障害等を理由に「不良」との烙印を押して人間としての尊厳を侵したこと
②個人が子どもを生むか生まないかの選択・決定権を奪ったこと
③手術後も、痛みや体調不良など身体や精神へのさまざまな苦痛を与え続け、その後の人生の可能性をゆがめたこと
④積極的に優生政策を推進し、障害者等に対する差別偏見を正当化・固定化し、さらに助長してきたこ
と
⑤強制や欺罔等の手段を用いて、優生手術等が国の優生政策によることを被害者に認識できない仕組
みを作ってきたこと
⑥優生保護法のずさんな運用を容認し、より深刻な人権侵害を引き起こしたこと
⑦母体保護法に改定した後も、優生政策を人権侵害と認めず、被害を賠償(補償)せず放置し続けたこと
⑧優生手術等に関する記録や資料等の公文書を散逸・消滅させ、被害の証明や実態調査・検証を困難にしたこと
(3)優生保護法および国の優生政策のもとで、都道府県等自治体が積極的に優生施策を推進した責任について明記し、都道府県等自治体においても、被害者への謝罪と人権回復に向けた取り組みを行なうよう求めること
3.優生思想の否定と「性と生殖の健康/権利(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)」の尊重
(1)法律の前文で、優生思想(優生学にもとづく非障害者優先主義)をはっきりと否定すること
(2)障害のあるなしにかかわらず、子どもを生むか生まないかを自分で決める権利「性と生殖に関する健康/権利(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ=SRHR)」が尊重され、この実現のためには、誰もが必要な支援を得ることができ、教育や情報が提供されること(1996年優生保護法が母体保護法に改定された時の附帯決議を実現すること)。
4.被害を償うに足りる賠償(補償)
立法措置により、裁判の提訴・未提訴を問わずすべての被害者に対し、その人生被害を償うに足りる賠償(補償)を行なうこと
5.対象者
賠償(補償)の実施にあたっては、以下の者を対象とすること
(1)現在、「一時金支給法」で補償対象となっている、優生保護法下で疾病や障害を理由に優生手術を強いられた者と子宮・卵巣・睾丸の摘出やレントゲン照射など生殖を不能とする処置を受けた者に加えて、疾病や障害を理由に人工妊娠中絶を強いられた者
(2)母体保護法(1996~)下で、疾病や障害を理由に不妊術を強いられた者と生殖を不能とする処置を受けさせられた者、疾病や障害を理由に人工妊娠中絶を強いられた者
(3) 国民優生法(1940~1948)下で、疾病や障害を理由に優生手術を強いられた者と生殖を不能とする処置を受けた者、疾病や障害を理由に人工妊娠中絶を強いられた者
(4)上記の優生手術等や人工妊娠中絶を強いられた者の配偶者
6.請求期限
すべての被害者への賠償(補償)を実現すべく、請求期限は設けないこと
C 新たに優生保護法被害を賠償(補償)する法律の関連事項について
1.被害の認定機関
被害の認定機関はこども家庭庁(政府)ではなく、独立した機関とする。この独立した機関の構成は、優生保護法問題に取り組んできた障害当事者と支援者(弁護士・優生連等)、障害関係団体、研究者等を含み、障害種別やジェンダーバランスに考慮したものとすること
2.被害者への情報の周知の徹底、および相談・申請窓口の整備
(1)文字、点字、手話通訳、筆談やチャット、わかりやすい言葉等による情報保障など、合理的配慮がなされた相談・申請窓口を整備すること。窓口の設置・整備にあたっては、障害当事者団体と協議すること
(2)申請は本人だけでなく、家族や代理人でも可能とすること
(3)すべての被害者への賠償(補償)を実現すべく、国や自治体は、広報・周知を工夫・徹底すること。都道府県に被害回復に向けた機関を設置し、被害者情報の収集と賠償(補償)に関する入念かつ細やかな情報周知や相談、申請の支援を実施すること
(4) 国や自治体が公文書等で個人名を把握している被害者に対しては、本人あるいは関係者の名誉を回復するために、プライバシー保護に十分配慮しつつ、優生手術等の実施が誤りであったことを伝えて謝罪し、賠償(補償)につなげる個別通知を行なうこと
(5)すべての被害者に謝罪とともに賠償(補償)を届けることができるよう、未だに沈黙を強いられている被害者を含め優生保護法被害の実態解明および被害者の掘り起こしのために、都道府県や市町村が、行政・医療機関・高齢者や障害者関係の福祉施設・教育機関等が所有する個人情報を含む記録等の調査・収集ができる法的根拠を定めること。また、そのための人的配置を含む十分な予算措置を行なうこと
D 優生保護法問題の真相究明・恒久対策について
1.社会全体への被害回復に関する情報の周知と啓発
国や自治体は、被害回復に関する情報について、メディアの利用等さまざまな手段を駆使して、広く社会に向けて発信するとともに、医療・福祉・教育の現場等における情報周知・啓発を徹底すること
2.真相究明、再発防止のための施策の実施
二度と同じ過ちを繰り返さないため、独立した第三者機関を国や都道府県に設置し、調査・検証等の施策を実施すること。この独立した第三者機関の構成は、被害当事者、優生保護法問題に取り組んできた障害当事者と支援者(弁護士・優生連等)、障害関係団体、研究者等を含み、障害種別やジェンダーバランスに考慮したものとすること。調査・検証にあたっては、特に以下の点に重点を置くこと
①なぜこのような法律がつくられたのか
②なぜこの法律が50年近くも続いてきたのか
③なぜ優生条項撤廃(1996年)以降、被害者に適正な対応がなされてこなかったのか
④いつ、どこで、どのような被害が起きていたかの全国的な実態の把握
⑤優生保護審査会の審査実態
⑥国や地方自治体の行政やマスメディア・医療・福祉・教育・市民社会が果たした役割
⑦優生保護法から母体保護法への改定以降の実態調査
3.優生思想・障害者に対する偏見差別の根絶にむけた立法措置および施策の推進
優生思想および障害者に対する偏見差別の根絶にむけ、立法措置および教育、啓発等の施策を実施すること。あらゆる分野に影響を及ぼす基本法を作り、その中核には「優生思想は絶対に許さない」とする姿勢を明確に据えること(例えば、「優生思想根絶基本法」といったイメージ)。立法にあたっては、特に、以下の点に留意すること。
(1)障害者権利条約および総括所見の完全実施
(2)障害者差別解消法や障害者基本法など関係法令との整合性
(3)教育の中で優生保護法に関する学習を組み込むとともに、「性と生殖に関する健康/権利(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)」を含めた包括的な性教育を実施すること
(4)教育・医療・保健・福祉等の対人支援職種に対する人権教育と包括的な性教育研修の実施
(5)優生保護法及びその被害に関する資料・記録を保存し、事実を伝え、研究し学ぶ場である資料館等を設けること
4.継続的な協議の場の設置
被害と尊厳の回復、優生思想に基づく差別偏見の根絶にむけた施策の検証など、優生保護法問題の解決のための諸課題について、被害者、障害当事者と支援者(弁護士・優生連等)、障害関係団体、研究者等との継続的な協議の場を設置すること。
これに先立って、他の人権裁判と同様に、国と原告・弁護団との間で、早急に恒久対策等を盛り込んだ合意を締結すること。
以上
私たち優生連は、優生保護法問題の全面解決をめざして、この提言をもとに政府や国会および関係機関との交渉・調整をすすめていきます。
なお、今後の推移をみながら、必要に応じて修正や加筆を行なうこともあります。
優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会 構成団体(五十音順)
一般財団法人全日本ろうあ連盟
おおさか旧優生保護法を問うネットワーク
旧優生保護法裁判を支援する福岡の会
きょうされん
強制不妊訴訟不当判決にともに立ち向かうプロジェクト
公益社団法人大阪聴力障害者協会
滋賀県優生保護法被害者情報公開請求訴訟支援有志
静岡県聴覚障害者強制不妊手術調査委員会
全国青い芝の会
全国自立生活センター協議会
全国「精神病」者集団
DPI女性障害者ネットワーク
DPI日本会議
日本障害者協議会(JD)
ピープルファーストジャパン
母体保護法下の不妊手術・中絶手術被害者とともに歩む会
優生手術に対する謝罪を求める会
優生手術被害者とともに歩むあいちの会
優生手術被害者とともに歩むみやぎの会
優生保護法裁判を支援する大分の会
優生保護法による被害者とともに歩む兵庫の会
優生保護法被害者とともに歩む熊本の会
優生保護法被害者を支える市民の会・北海道
優生保護法を考える新潟の会
内閣総理大臣 岸田 文雄 殿
2024(令和6)年7月17日
最高裁大法廷判決を受けての優生保護法問題の全面解決要求書
優生保護法被害全国原告団
優生保護法被害全国弁護団
優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会(優生連)
2024(令和6)年7月3日の最高裁判決を受け、優生保護法問題の全面解決のため、速やかに以下の対応を行うことを要求します。
第1 政府・国会による謝罪及び決意表明
1 内閣総理大臣談話の発出及び今後の対応に向けた決意表明
内閣総理大臣談話を発出し、国としての謝罪の意を表明するとともに、今後の対応に向けた決意(訴訟事件の早期解決及び全被害者の被害回復のための法律制定、恒久対策(被害回復、再発防止、偏見差別の根絶に向けた諸施策等)を検討するための協議の場の設置等)を対外的に表明すること
2 国会における謝罪決議
国会として、あらためて原告ら及び全被害者に対し謝罪を行うこと
第2 全被害者に対する被害を償うに足りる一日も早い賠償・補償の実施
1 訴訟の解決に向けた基本合意の締結
所管庁(こども家庭庁)担当大臣・長官が、優生保護法被害全国原告団・弁護団との間で、訴訟の全面解決に向けた基本合意を締結すべく、直ちに協議を行うこと
2 全被害者に対する被害を償うに足りる補償法の制定
全被害者に対する被害を償うための補償法を速やかに制定すること
3 被害者への情報の周知の徹底
全被害者への補償を実現すべく、調査、広報、周知(個別通知を含む)等を徹底すること
第3 恒久対策の実施
1 真相究明、再発防止のための検証の実施
二度と同じ過ちを繰り返さないとともに、次項の施策を推進するため、被害当事者団体、弁護団及び第三者から構成される機関により、(一時金支給法第21条に基づく「調査」に止まらない)旧優生保護法に基づき推進された優生施策及び当該施策の社会への影響等を含む「検証」(提言を含む)を実施すること
2 偏見差別の根絶にむけた立法措置及び教育等の施策の推進
優生思想及び障害者に対する偏見差別の根絶に向け、立法措置及び教育・啓発等の施策を実施すること
3 継続的な協議の場の設置
被害の回復、優生思想及び障害者に対する偏見差別の根絶に向けた施策の検討など、優生保護法問題の解決のための諸課題について、優生保護法被害全国原告団・弁護団及び関係者(優生連等)と、関係各省庁との継続的な協議の場を設置すること
以 上
2024年7月3日
~最高裁判所判決をうけて~
優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会(略称:優生連)
7月3日、優生保護法被害者国家賠償請求訴訟の5つの事件について最高裁判所(戸倉三郎裁判長)は、国の責任を断じ政府に賠償を命じました。
判決では、この事件は、憲法13条の幸福追求権、法の下の平等を定めた14条1項に違反する著しい人権侵害であり、除斥期間についても適用をするべきではないと政府の訴えを退けました。私たち優生連は、この判決を心より歓迎します。
こうした判決の背景に、原告・弁護団の切実かつ説得力のある訴えがあったことは言うまでもなく、合わせて優生連が最高裁判所に「人権の砦として正義・公平な判決を」と求めた署名に、333,602人もの声が寄せられるなど、メディアを含む多くの市民のみなさんの共感と支援がありました。
1948年、国会は全会一致で、優生保護法を制定し、障害のある人を中心に、統計上明らかになっているだけでも約2万5千人に不妊手術を強いました。原告ら39人(うち今回の最高裁判所大法廷の原告は12人)は、皆さん高齢で、既に6人が亡くなられています。
国会と政府は、1996年の優生条項撤廃時にも、そして2019年の一時金支給法制定時にも、優生保護法による被害の調査、謝罪、救済、総括はしませんでした。「戦後最大の人権侵害」といわれる事件が、どうしてこんなに長い間、放置されてしまったのか、私たちは、国の無責任な姿勢と人権意識の希薄さを許すことはできません。
被害を放置した、国会と政府は、原告ら被害者の人生を奪い、命の継承を奪った責任を今すぐにとるべきです。私たちは、最高裁判決のもと、国会・政府に対して以下の諸点を強く求めます。
1.国会と政府は責任を明確にするため、それぞれ謝罪決議や謝罪談話を公表すること。
総理大臣は、速やかに原告・被害者に直接謝罪すること。
2.原告・弁護団と国のあいだで、定期協議等を盛り込んだ基本合意文書を作成すること。
3.すべての被害者に対し被害を償うに足りうる賠償・補償の実施をすること。
4.被害当事者等を含む第三者委員会を立ち上げ、被害の真相究明と検証・総括を行うこと。
5. 優生思想をなくし、再発防止を図るための法整備に早急に着手すること。
なお、本裁判においては、情報保障や各種の障壁除去など障害のある人の司法参加のあり方が問われました。一定の改善はみられたものの多くの課題を残してしまいました。
私たちは、これからも一丸となって優生保護法問題の全面解決をめざします。そのために市民・メディアのみなさんに、引き続きのご理解とご協力を呼びかけます。
2024年7月3日
「優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会」(略称:優生連)
2024年5月31日 「国が放置してきた優生保護法の被害に対し最高裁判所に人権の砦として
正義・公平の理念にもとづく判決をもとめる」署名
「国が放置してきた優生保護法の被害に対し最高裁判所に人権の砦として
正義・公平の理念にもとづく判決をもとめる」署名をスタートします!!
ぜひみなさまのご支援・ご協力をお願いたします!!
私たち「優生連」は、最高裁判所に対して「正義・公正の理念に基づく判決をもとめる」署名を、今日2023年9月11日からスタートする事に致しました。この署名は来年の3月末までの約7か月間に、100万筆署名を目標にしています。
優生保護法の裁判は、2022年2月の大阪高裁、3月の東京高裁、2023年3月の札幌高裁・大阪高裁(兵庫地裁控訴審)で原告が勝訴しました。しかし国は最高裁判所に上告受理申し立てをしました。そして、2023年6月の仙台高裁、札幌高裁判決では原告が敗訴し、今度は原告側が、最高裁に上告受理申し立てを行ないました。
この真っ向から二つに分かれた判断は、今、最高裁へと移っています。今後、最高裁の審議、判決は長引くことが予想されていますが、原告や被害を受けた多くの方は、すでにご高齢で、一日も早い解決が求められています。
去る2023年3月28日に開催した「優生保護法問題の早期全面解決を求める院内集会3.28院内集会」には、会場にあふれんばかりの人が集い、その中で、与野党の国会議員が「早期の全面解決に力を」と約束されましたが、今では「最高裁の判断待ち」としか思えない状況になっています。
この署名が、優生保護法問題の早期の全面解決につながり、優生保護法問題を自分の事として考えられる社会づくり、命を分けない社会づくりに広がることを願っています。
みなさま、ぜひご協力ください!!
2023年9月11日
優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会一同
署名いただいた用紙は、各構成団体が公開している送付先か、以下送付先のいずれかまでお送りください。
【送付先】
・〒164-0011 東京都中野区中央5-41-18 東京都生協連会館4F
きょうされん本部 宛
・〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-11-8 5階
DPI日本会議 浜島 宛
・〒650-0012 神戸市中央区北長狭通8-1-14 兵庫障害者センター内
優生保護法による被害者とともに歩む兵庫の会(略称:歩む兵庫の会) 宛
【署名用紙 表】
最高裁判所 御中
国が放置してきた優生保護法の被害に対し最高裁判所に人権の砦として
正義・公平の理念にもとづく判決を求めます
優生保護法(1948~1996)は、国が勝手に「不良」と決めつけた人々の人権を無視し、子どもを生むか生まないかを自分で決める自由を奪いました。
さらに優生保護法が社会に深く根付かせた障害のある人への差別や偏見は、いまなお広がっています。津久井やまゆり園殺傷事件をはじめ、次々と起こる精神科病院や入所施設等での虐待事件などの背景には、優生保護法の考え方が根強く残っています。
優生保護法による強制不妊手術は、日本国憲法のもとでの他に類をみない人権侵害です。
優生保護法による強制不妊手術の実施を認める都道府県優生保護審査会には、裁判官も参加していました。障害等を理由とする強制不妊手術が人権侵害とは気づかないくらい優生思想が蔓延している社会の中で、原告ら被害者は「自分が悪い」と思い込まされ、被害を隠さざるを得ず、心身ともに苦しめられてきました。
すでに地裁や高裁において、優生保護法が違憲であることが認められているにも関わらず、手術から20年経ったことを理由に国の責任が認められない(除斥期間を適用する)ことは、著しく正義・公平の理念に反します。
最高裁におかれましては、司法の果たすべき役割ならびに人権の砦としての立場を深く自覚してください。優生保護法による被害者の尊厳を回復する判決を求めます。
名 前 (フルネーム) 住 所 (番地までご記入ください)(以下5人枠)
※オンラインでも同趣旨の署名にとりくんでいます。
オンライン署名はこちらから⇒https://www.change.org/yuuseihogohousaikousai
同じ人が、両方に署名しないようご注意ください。
※この署名のとりくみは、「個人情報の保護に関する法律」には抵触しません。署名用紙に記入された名前・住所は、最高裁に提出する目的以外に使用することはありません。
【呼びかけ団体】優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会(略称:優生連)HP:https://sites.google.com/view/yuuseiren/home
【送付先】
【署名用紙 裏】
#優生保護法裁判に正義・公平の理念にもとづく最高裁判決を
「子どもをつくれなくする手術・生理をなくすために子宮をとる手術」を強要された人たちが、今、最高裁でたたかっています
「正義・公平の理念にもとづく判決」を求める署名、ぜひご協力ください
人生、本当に返してもらいたい
(国に)きちんと責任取ってもらわないと終われないです
1997年から優生保護法の被害者として、国に謝ってほしいと訴え続け、2018年にようやく、仙台地裁に裁判を起こすことができた飯塚淳子さん(仮名、70代)の言葉です。16歳で何も知らされないまま、子どもの産めない身体にされました。
無念の思いで逝きたくありません
国の責任が明らかになるまで、戦いつづけます
北三郎さん(仮名、80歳)は、施設にいた14歳の時、なんの説明もなく手術され、直後は激痛で歩けませんでした。ずっと親と施設を恨んできました。優生保護法を知ったのは、手術から60年後、仙台での裁判の新聞記事を読んだ時です。
■優生保護法の裁判とは? (原告38人のうち5人がすでに死去/2023年8月現在)
2018年1月に優生保護法の裁判はスタートしました。これまでに、4つの高等裁判所(大阪・東京・札幌・大阪)で、国に賠償金を払うよう命じる原告勝訴の判決が出ました。優生保護法は憲法違反であり、民法で定める除斥期間(20年経ったら時間切れで責任を問えないというルール)をこの優生保護法の被害にあてはめることは、「正義・公平の理念に反する」と判断しました。しかし、2023年6月の仙台高裁では、除斥期間が当てはまると判断され、原告は負けてしまいました。
■なんで署名にとりくむの?
このため、これらの裁判は、最高裁で争われることになりました。国が決めた法律により、体も心も傷つけられるという人権侵害に対して、「20年経ったから国に責任はありません」という判決が許されてよいのでしょうか。人権の砦である最高裁で、被害者にきちんと向き合い、正義・公平の理念にもとづく判決を出してもらえるよう、私たちはこの署名活動にとりくみます。命を分けない社会にむけて、みなさんのご協力を心から呼びかけます。
●優生保護法(1948~1996年)の被害者の数:
子宮・卵巣や睾丸の摘出など、優生保護法で定めていた範囲を超えて手術された人もいたので、実際の被害者の数はもっと多いと言われています。
<障害等を理由とする不妊手術と人工妊娠中絶の件数>
不妊手術 本人の同意なし 16,475人
本人の同意あり 8,518人
妊娠中絶 58,972人
合 計 83,965人
(2018年5月24日厚労省提出資料参照)
2024年5月24日
最高裁判所長官
戸倉 三郎 様
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野富志三郎
優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会
共同代表一同
きこえない・きこえにくい人の裁判、裁判傍聴における情報保障についての緊急要請書
2024年5月29日(水)の旧優生保護法に関する国家賠償請求事件の弁論、および傍聴における法廷内での情報保障について、昨日5月23日(木)に最高裁判所から「回答できません」というお返事をいただき、その理由についてもお聞きしましたが、それについても「回答できません」とのことでした。きこえない人・きこえにくい人たちの最高裁判所での情報保障については、傍聴券配布から手荷物検査等のための2名の手話通訳が初めて認められたにもかかわらず、5月22日にいただいたお返事は、法廷内における情報保障については「回答できない」、またその理由も「回答できない」ということでした。
裁判において、言葉の理解や、やり取りが判らないままでは、裁判にはなりません。裁判官は、きこえない・きこえにくい原告らの手話での弁論を理解できるのでしょうか。傍聴に来ているきこえない・きこえにくい人たちに、どうやって内容を伝えることができるのでしょうか。裁判所における情報保障は、きこえない・きこえにくい人のためではありません。裁判官やきこえる人にとっても、不可欠の情報手段と考えます。
私たちは、以下について再度の緊急要望をいたします。公平かつ速やかな対応をお願いします。
【緊急要請事項】
1. 最高裁判所の法廷内でのきこえない人、きこえにくい人たちへの情報保障
(手話通訳配置、要約筆記配置等)を最高裁判所の責任で実施してください。
2. 配置にあたっては、その経費の全額を最高裁判所で負担してください。
優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会 構成団体(五十音順)
1.一般財団法人全日本ろうあ連盟
2.おおさか旧優生保護法を問うネットワーク
3.旧優生保護法裁判を支援する福岡の会
4.きょうされん
5.強制不妊訴訟不当判決にともに立ち向かうプロジェクト
6.公益社団法人大阪聴力障害者協会
7.滋賀県優生保護法被害者情報公開請求訴訟支援有志
8.静岡県聴覚障害者強制不妊手術調査委員会
9.全国青い芝の会
10.全国自立センター協議会(JIL)
11.全国「精神病」者集団
12.DPI女性障害者ネットワーク
13.DPI日本会議
14.日本障害者協議会(JD)
15.ピープルファーストジャパン
16.母体保護法下の不妊手術・中絶手術被害者とともに歩む会
17.優生手術に対する謝罪を求める会
18.優生手術被害者とともに歩むあいちの会
19.優生手術被害者と共に歩むみやぎの会
20.優生保護法による被害者とともに歩む兵庫の会
21.優生保護法被害者とともに歩む熊本
22.優生保護法被害者を支える市民の会・北海道
23.優生保護法を考える新潟の会
24.優生保護法裁判を支える大分の会
共同代表名簿(50音順)
及川 智 (優生手術被害者とともに歩むみやぎの会)
大竹 浩司(一般財団法人 全日本ろうあ連盟)
大橋 由香子(優生手術に対する謝罪を求める会)
桐原 尚之(全国「精神病」者集団)
小谷 晴子(優生保護法被害者を支える市民の会・北海道)
利光 恵子(おおさか旧優生保護法を問うネットワーク)
藤井 克徳(日本障害者協議会 JD)
藤原 久美子(DPI女性障害者ネットワーク・優生保護法被害者とともに歩む兵庫の会)
山崎 恵(優生保護法被害者を支える市民の会・北海道)
山本 秀樹(旧優生保護法裁判を支援する福岡の会)
HP:https://sites.google.com/view/yuuseiren/home
2024 年5月20 日
最高裁判所長官
戸倉 三郎 様
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野富志三郎
優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会
共同代表一同
(別紙添付)
きこえない・きこえにくい人の裁判、裁判傍聴に
おける情報保障についての要望書への回答について(緊急)
2024 年5月29 日(水)の旧優生保護法に関する国家賠償請求事件の弁論の傍聴における情報保障等について、2024 年5 月16 日(木)付けで最高裁判所のホームページに掲載されたものを拝見しました。きこえない・きこえにくい人たちの情報アクセシビリティの配慮についてご理解いただいたことをお礼申し上げます。
しかし、今回の法廷内の手話通訳や要約筆記に関わる費用は当事者側の手配であり、裁判所の負担としないこと、抽選で当選した人でないと情報保障者であっても敷地に入れない等の課題があります。
連盟より「きこえない・きこえにくい人の裁判、裁判傍聴における情報保障についての要望書(緊急)」(連本第230751 号)を2024 年3月21 日(木)に提出しています。要望では、全ての裁判において、きこえない・きこえにくい人が手話言語でアクセス出来ること
が重要であり、そのための情報保障に関わる手配、費用負担は裁判所の責任で行うこと等について、最高裁判所に要望いたしましたが、まだ回答をいただけておりません。
改めて2024 年5月22 日(水)までに回答をいただけますようお願い申し上げます。
最高裁判決を待つまでもない!優生保護法問題の政治的早期・全面解決を求める3.21院内集会アピール
「国は、俺たちが早く死ぬるのを、待っとるとしか見えませんもんね」と、語っておられた熊本の原告渡邊數美さんが、2月1日に亡くなりました。3月13日の福岡高裁判決を前にした突然の悲報でした。2018年にはじまった優生保護法の裁判は、すでに6年目をむかえ、39人の原告のうち6人の方が亡くなっています。優生保護法問題の全面解決は、一刻の猶予も許されません。
2022年2月22日の大阪高裁勝訴に始まった4つの高裁勝訴判決(東京高裁・札幌高裁・大阪高裁兵庫訴訟)と、2023年6月1日の仙台高裁敗訴判決、これら最高裁に上訴されている5つの事件について、最高裁判所は大法廷で審理することを、11月1日の集会の日に公表しました。
その後の裁判は、2024年1月26日に大阪高等裁判所で、3月12日には名古屋地方裁判所で、原告勝利の判決が続き、司法の流れは固まってきています。
他方、かつて優生保護法を全会一致で成立させた国会は、優生保護法問題の解決に向けては、足踏み状態が続いています。国として「最高裁の判決を待つまでもなく」成すべきことがあるはずです。私たちはこれまでも、国に対し、原告・被害者に、心を寄せた直接の謝罪と充分な補償と差別思想や優生思想のない社会づくりを求めてきました。
国は、今すぐに、優生保護法問題の全面解決にむけて、舵を切ってください。国は、原告をはじめとするすべての被害者を置き去りにすることのないよう、先の「優生保護法問題の早期全面解決を求める11.1集会」での要請を踏まえ、以下のことに早急に着手することを強く求めます。
1. 国は、2023年10月25日の仙台高裁判決、1月26日の大阪高裁判決の上告を今すぐ取り下げてください。また3月12日の名古屋地裁判決に対し控訴しないでください。
2. 原告・被害者の大半は高齢であり、一刻の猶予もありません。国は直ちに被害を受けたすべての人に謝罪と補償を行なってください。
3. 国は、国会が行なった調査結果を基本に、二度と同じ過ちを繰り返さないためにも、当事者や関係者等を含めた第三者による検証体制を確立してください。
4. 国は、優生思想をなくすため、障害者権利条約第8条で、加盟国に義務付けられている「社会全体の意識を向上させ、障害者の権利及び尊厳に対する尊重を育成する」ことについて、直ちに具体的な取り組みを開始してください。
2024年3月21日
最高裁判決を待つまでもない!
優生保護法問題の政治的早期・全面解決を求める3.21院内集会参加者一同
1.26加山裁判大阪高裁判決 ~優生保護法問題の全面解決を求める関西集会 決議
本日、大阪高裁は、「不良な子孫の出生防止」を目的に掲げた旧優生保護法は、個人の尊厳や法の下での平等を保障した憲法に違反するとし、国の責任を厳しく断じました。そして、正義・公平の立場から除斥期間の適用を制限し、国に損害賠償を命じました。一昨年2月22日および昨年3月23日の判決に続いて、大阪高裁としての司法の正義と良心が示されたものと考えます。
国は、この判決を重く受け止め、決して上告をすることなく、原告らの被害回復に早急に取り組むべきです。原告の方々は御高齢で、これまでに全国で提訴された38人のうち、既に5人が亡くなられました。一刻の猶予も許されません。
私達は、改めて、優生保護法問題の全面解決に向けて、国に対して、「謝罪せよ!補償せよ!同じ過ちを繰り返すな!」と訴えます。
国は、旧優生保護法のもとで、障害を理由に「不良」との差別的な烙印を押して人としての尊厳をそこない、心身に多大な苦痛を負わせ、子どもを生み育てるか否かの意思決定の自由を暴力的に奪いました。同時に、社会の中に、障害者を劣ったものとみなす優生思想を広く植え付けてきたのです。国は、その責任を明確に認め、被害者に謝罪することを求めます。
そして、期限を設けることなしに、被害をこうむった人すべてに対して被害に見合った補償を行ってください。障害等を理由に不妊手術や子宮・卵巣・睾丸の摘出、放射線照射を受けさせられた人達、障害ゆえに中絶を強いられた人達、手術を受けた人の配偶者に対して、謝罪し補償することを求めます。国の責任で、今も声を上げることができないでいる多くの被害者を掘り起し、その被害と人権の回復を早急に行ってください。
また、二度と同じ過ちを繰り返さないために、被害実態や優生政策の全容を明らかにし、被害当事者を含めた第三者による検証を行うよう要望します。そして、障害者に対する差別・偏見をなくするための教育・啓発等の施策の実施、及び、すべての人々の「性と生殖に関する健康・権利」を保障するための支援の充実を強く求めます。
この優生保護法問題は、決して過去の問題ではありません。私達がこれからどのような社会を目指すのかを照らし出す問題です。生産性や能力の有無により人間の生命に格付けをし、選別・排除していく優生思想は、今も、社会の隅々に根深く存在します。私達は、これと対峙し、全ての人の尊厳が守られ、差別のない社会を目指すことをここに決議します。
2024年1月26日
「優生保護法被害の全面解決を求める関西集会」参加者一同
優生保護法問題の全面解決を求める全国連絡会(優生連)
2024年1月24日
優生保護法下における強制不妊手術について考える議員連盟
会 長 尾辻 秀久様
会長代行 田村 憲久様
加藤 勝信様
緊 急 要 請 書
優生保護法被害全国原告団
優生保護法被害全国弁護団
優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会
「旧優生保護法に基づく優生手術を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」(以下、「一時金支給法」とする。)について、以下、緊急に要請します。
なお、従前より我々が要請している、「すべての被害者に対して被害を償うに足りる補償を行い、優生保護法問題を全面的に解決するための法制定(法改正)を行うこと」についても、最高裁判決を待つことなく、早急に検討を行うよう引き続き求めます。
1 2024年4月23日までとされている一時金の請求期限を撤廃すること。
2 一時金支給法第21条に基づく調査等について、2023年6月に衆参両院議長宛に提出・公表された調査報告書に加え、「二度と同じ過ちを繰り返すことのないよう、共生社会の実現に資する観点」で、より広範で詳細な追加調査を行うこと。さらに、被害当事者を含む第三者による検証及び総括を行うこと。
3 以下について、こども家庭庁と協議し、早期かつ確実に実施すること。
① 一時金支給法の周知徹底のため、障害種別に応じて、わかりやすい文章、点字、手話など、情報提供の在り方を工夫し、障害等のある被害当事者、家族、関係者に、一時金支給法の情報が行き渡るようにすること。
② 国、各自治体において一時金支給法の相談窓口を広げ、身近で安心して相談できる体制を充実させること。
相談があった場合には、「請求受付」につなげるべく、本人及び関係者の話を丁寧に把握し、関連する行政機関、医療・福祉施設等に対する詳細な調査を実施する体制を整えること。
以 上
2023年7月28日
優生保護法問題の全面解決を求める要望書
優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会 共同代表
及川智・大竹浩司・大橋由香子・桐原尚之・小谷晴子
利光恵子・藤井克徳・藤原久美子・山崎恵・山本秀樹
2022年2月22日に出された大阪高裁判決と同年3月11日の東京高裁判決、2023年に入って相次いで示された熊本地裁(1月23日)、静岡地裁(2月24日)、仙台地裁(3月6日)での判決、及び札幌高裁(3月16日)と大阪高裁判決(3月23日)では、いずれも優生保護法は違憲であり、国によってもたらされた非人道的かつ重大な人権侵害であるとして、国の損害賠償責任が認められました。
また、2022年9月に、国連障害者権利委員会から日本政府に出された勧告でも、「全ての被害者が明示的に謝罪され適切に補償されるよう」補償制度を見直すよう求めています。現在、施行中の「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給に関する法律」(以下、「一時金支給法」)は、被害の回復にはきわめて不十分です。責任の所在が不明確な上、被害に対する賠償・補償ではなく単なる「一時金」にすぎず、支給額も甚大な被害に見合った額とは到底言えません。また、請求期限は残すところあと8ヶ月であるにもかかわらず、いまだに認定された人は国の統計が示す全被害者のわずか4%です。くわえて被害者は高齢化しており、次々と亡くなられています。解決に向けて、一刻の猶予も許されません。
これらを踏まえて、裁判を即刻終結し、優生保護法問題について速やかな全面解決をはかるための基本合意を結ぶことを求めます。そして、新たな法律を制定し、二度と同じ過ちを繰り返さないために、全ての被害者の尊厳回復と補償、優生思想や障害者差別の根絶に向けた施策を実現するよう求めます。
優生保護法問題の全面解決にむけて、以下のとおり要望します。
A 責任の明確化と謝罪
1 謝罪決議
上記の高裁判決・地裁判決で、国会の責任が厳しく断罪されている結果を受け止め、衆参両院において謝罪決議を行うこと
2 法律(優生保護法被害を補償する法律)における国の責任の明文化
(1)法律において、国が責任の主体であることを明確化し、被害者への謝罪と全面解決に向けた決意を明文化すること
(2)謝罪の主体は「国」とし、以下の事項について謝罪すること
①優生手術等により心身に大きな傷を与え、障害等を理由に「不良」との烙印を押して人間としての尊厳を侵したこと
②個人が子どもを生むか生まないかの選択・決定権を奪ったこと
③手術後も、痛みや体調不良の持続など身体や精神へのさまざまな苦痛を与え続け、その後の人生の可能性を狭めたこと
④積極的に優生政策を推進して、障害者らに対する差別偏見を正当化・固定化、さらに助長してきたこと
⑤強制や欺罔の手段を用いて、優生手術等が国の優生政策によることを認識できない仕組みを作ってきたこと
⑥法の杜撰な運用を容認し、よりいっそうの人権侵害を引き起こしていたこと
⑦母体保護法改定後も、優生政策を人権侵害と認めず、被害の補償をせず放置し続けたこと
⑧優生手術等に関する記録や資料等の公文書を散逸・消滅させ、被害の証明や実態調査・検証を困難にしたこと
3 法律(優生保護法被害を補償する法律)の名称と目的
(1)法の名称には、①優生手術被害者の人権回復、②補償を含むこと。
例えば、「旧優生保護法等に基づく優生手術等を受けた者の人権回復と損害賠償に関する法律」など
(2)法の目的は、以下とする。
①優生手術等の被害者への謝罪
②被害者の尊厳の回復と補償
③調査・検証
④優生思想の否定と再発防止
4 優生思想の否定と「性と生殖の健康/権利(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)」の尊重を明記すること
(1)法律の前文で、優生思想(優生学にもとづく非障害者優先主義)をはっきりと否定すること
(2)障害のあるなしにかかわらず、子どもを生むか生まないかを自分で決める権利「性と生殖に関する健康と権利(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ=SRHR)」が尊重され、実現のために教育、情報、手段、支援が提供されることを明記すること
B 被害を償うに足りる賠償・補償の実施
1 被害を償うに足りる賠償・補償
訴訟の早期全面解決を図るため、上記の国の損害賠償責任を認めた各高裁判決、地裁判決に従って、立法措置により、裁判の提訴・未提訴を問わずすべての被害者に対し、その人生被害を償うに足りる補償を行うこと
2 対象者の拡充
賠償・補償の実施にあたっては、以下の者を対象とすること
(1)現在、「一時金支給法」で補償対象となっている、優生保護法下で疾病や障害を理由に優生手術を強いられた者と子宮・卵巣・睾丸の摘出やレントゲン照射など生殖を不能とする処置を受けた者に加えて、疾病や障害を理由に人工妊娠中絶を強いられた者
(2)母体保護法下で、疾病や障害を理由に優生手術を強いられた者と生殖を不能とする処置を受けた者、疾病や障害を理由に人工妊娠中絶を強いられた者
(3)国民優生法下で、疾病や障害を理由に優生手術を強いられた者と生殖を不能とする処置を受けた者、疾病や障害を理由に人工妊娠中絶を強いられた者
(4)上記の優生手術等や人工妊娠中絶を強いられた者の配偶者
3 請求期限の撤廃
全ての被害者への賠償・補償を実現すべく、除斥期間の適用を行わず、請求期限を撤廃すること
4 被害の認定機関
被害の認定機関は厚生労働省(こども家庭庁/政府)ではなく、独立した機関とすること
5 被害者への情報の周知の徹底、および相談・申請窓口の整備
(1)文字、点字、手話通訳、筆談やチャット、わかりやすい言葉など、その人の障害に合わせた情報保障について合理的配慮がなされた相談・申請窓口を整備すること
(2)申請は本人だけでなく、家族や代理人でも可能とすること
(3)全ての被害者への賠償・補償を実現すべく、国や自治体は、広報周知を工夫・徹底すること。各自治体に被害回復に向けた機関を設置し、被害者情報の収集と補償に関する入念かつ細やかな情報周知や相談、申請の支援を実施する
(4)少なくとも、国や自治体が公文書等で個人名を把握している被害者に対しては、プライバシー保護に十分配慮しつつ、本人あるいは関係者の名誉を回復するために、優生手術等の実施が誤りであったことを伝えて謝罪するとともに、補償に繋げること
6 社会全体への情報の周知と啓発
国や自治体は、被害回復に関する情報について、メディアの利用等さまざまな手段を駆使して広く社会に向けて発信するとともに、医療・福祉の現場における情報周知・啓発を徹底すること
C 真相究明・恒久対策
1 真相究明、再発防止のための施策の実施
二度と同じ過ちを繰り返さないため、国や都道府県に第三者機関を設置し、調査・検証等の施策を実施すること。調査・検証にあたっては特に以下の点に重点を置くこと
①なぜこのような法律がつくられたのか
②なぜこの法律が50年近くも続いてきたのか
③いつ、どこで、どのような被害が起きていたかの全国的な実態の把握
④優生保護審査会の審査実態
⑤国や地方自治体の行政やマスメディア、医療、福祉、教育、市民社会が果たした役割
⑥優生保護法が母体保護法へ改定されて以降の実態調査
2 優生思想・障害者に対する偏見差別の根絶にむけた立法措置および施策の推進
優生思想および障害者に対する偏見差別の根絶にむけ、立法措置および教育、啓発等の施策を実施すること。立法措置は、あらゆる分野に影響を及ぼす基本法であり、その中核には「優生思想は絶対に許さない」とする姿勢を据えること(例えば、「優生思想根絶基本法」といったイメージである)。特に、以下の点に留意すること。
(1)障害者権利条約および総括所見の完全実施
(2)障害者差別解消法や障害者基本法など関係法令との整合性
(3)教育の中で旧優生保護法に関する学習を組み込むとともに、「性と生殖に関する健康/権利」を含めた包括的な性教育の実施
(4)教育、医療、保健、福祉等の対人支援職種に対する人権教育と包括的な性教育研修の実施
3 継続的な協議の場の設置
被害と尊厳の回復、優生思想に基づく偏見差別の根絶にむけた施策の検証など、優生保護法問題の解決に向けた諸課題について、被害者、障害当事者、関係団体及び弁護団等との継続的な協議の場を設置すること。
これに先立って、他の人権裁判と同様に、国と原告・弁護団との間で、早急に基本合意を締結すること。
私たちは、今後、優生保護法問題の全面解決を目指して、この要望書をもとに政府や国会および関係機関との交渉・調整をすすめていきます。
以上
2023年6月9日
仙台高裁判決への抗議声明と、全面解決にむけた対話の呼びかけ
優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会(優生連)
私たちは、2022年5月、優生保護法裁判を支援し、優生保護法問題の全面解決をめざすために全国の22団体によって結成された連絡会です。
2023年6月1日、仙台高等裁判所第1民事部(石栗正子裁判長)が出した優生保護法被害者である控訴人らの請求を棄却する判決に、私たちは強く抗議します。国による深刻な人権侵害を前にしながら、その被害回復の責任を見逃す、正義と公正に反する冷酷な判断は、断じて許すことはできません。
判決では、優生保護法が憲法14条1項に違反することを認めました。しかし、被害者が強制不妊手術の被害を受けてから20年以内に裁判を起こすことは、「客観的におよそ不可能であり又はその行使の機会がなかったとまではいえない」とし、除斥期間の適用を認めました。これは、時代背景や本人の条件を無視した不合理で誤った認定です。控訴人らはいずれも15~16歳で、本人への説明もなく手術されており、当時、自分たちがされた手術が、優生保護法によるものであることなど、本人も家族も知りようもありません。
また、優生保護法が母体保護法に改定される1996年当時に日本障害者協議会や謝罪を求める会(正式名称「優生手術に対する謝罪を求める会」)などが要望を出したこと、障害者基本法や障害者差別解消法などの法整備がされたこと等をもって「手術の違法性を訴えることが不可能に近い状態であったとまではいえない」とするのは、論理のすり替えであり、こじつけ以外の何ものでもありません。
思い起してください。原告のひとり飯塚淳子(仮名)さんが厚生省に被害を訴えても「当時は合法・適法だった。謝罪も補償も調査もしない」と冷たい対応が繰り返されました。宮城県に対して証拠書類の開示を求めても、本来、保存されているはずの書類は破棄されていました。法曹関係者に相談しても、証拠書類がなければ裁判を起こすのは不可能と言われました。耳を傾けるマスメディアも国会議員も、ごくごく少数でした。そして障害者差別や偏見が蔓延していたからこそ、それを解消する法整備が必要だったのです。優生保護法のもとでの強制不妊手術という大きな人権侵害が、なかったことにされてしまうという危機感のもと、被害者と共に国会や行政への働きかけを重ね、国際社会にも訴えていった結果、ようやく2018年1月に裁判が可能になる状況が開けたのです。これらの努力を、提訴が可能だったことの根拠とする仙台高裁判決は、歴史の見方をゆがめるものです。
しかし、このような判決ですら、優生保護法は憲法違反であり、被害は重大な人権侵害であったと認めています。2022年の大阪高裁、東京高裁、2023年の熊本地裁、静岡地裁、仙台地裁、札幌高裁、大阪高裁(神戸地裁の控訴審)と、除斥期間を適用しないという公正な判決が積み重なり、この論調は定着してきました。
私たちは、次の2つを要望します。
1)政府は、これらの7判決をこそ尊重し、控訴や上告を取り下げ、全面解決に向けての一歩を踏み出す時です。まずは、高齢の原告たちに対面し、謝罪してください。
2)国会は、旧優生保護法が違憲であったことを明確に表明し、衆参両院で謝罪決議を行うとともに、すべての被害者の尊厳回復と被害に見合う補償を実現してください。「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」を見直すに際しては、法律制定後に明らかになった原告たちの実態に耳を傾け、この問題の専門家集団である障害者団体や市民団体が集まった優生連の意見や提案をきいてください。
2023年6月2日、新たな提訴が北海道と福岡でありました。北海道の83歳の原告は「訳が分からないうちに連れていかれてやったことですし、今さら何を言ってもと思ってあきらめていました」とおっしゃっています。 現在もなお、声を上げられない被害者がたくさんおられるのです。
人の価値に優劣をつけた優生保護法問題を解決し、あらゆる人が差別や偏見に苦しめられることなく、人権が尊重される共生社会をつくるために、私たちとの建設的な対話を求めます。
【優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会】
共同代表:及川智・大竹浩司・大橋由香子・桐原尚之・小谷晴子・利光恵子・藤井克徳・藤原久美子・山崎 恵・山本秀樹
構成団体:
一般財団法人全日本ろうあ連盟
おおさか旧優生保護法を問うネットワーク
旧優生保護法裁判を支援する福岡の会
きょうされん
強制不妊訴訟不当判決にともに立ち向かうプロジェクト
公益社団法人大阪聴覚障害者協会
滋賀県優生保護法被害者情報公開請求訴訟支援者有志
静岡県聴覚障害者強制不妊手術調査委員会
全国青い芝の会
全国「精神病」者集団
DPI女性障害者ネットワーク/DPI日本会議
日本障害者協議会(JD)
ピープルファーストジャパン
母体保護法下の不妊手術・中絶手術被害者とともに歩む会
優生手術に対する謝罪を求める会
優生手術被害者とともに歩むあいちの会
優生保護法被害者とともに歩むくまもとの会
優生手術被害者とともに歩むみやぎの会
優生保護法による被害者とともに歩む兵庫の会
優生保護法被害者を支える市民の会・北海道
優生保護法を考える新潟の会
以上
2023年3月28日 優生保護法下における強制不妊手術について考える議員連盟あて要請書
2023年3月28日
優生保護法下における強制不妊手術について考える議員連盟
会 長 尾辻 秀久 先生
会長代行 田村 憲久 先生、加藤 勝信 先生
国会議員 各位
要 請 書
優生保護法被害全国原告団
共同代表 飯塚 淳子(仮名)・北 三郎(仮名)
優生保護法被害全国弁護団
共同代表 新里 宏二・西村 武彦
優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会
1 要請の趣旨
優生保護法問題の早期かつ全面的な解決のために、
(1) 国会として衆参両院で謝罪決議を行った上で、優生保護法問題の被害者の人生被害にみあった補償を行うこと及び二度と同じ過ちを繰り返さないための実効的な調査検証等の施策の実施を含め、同問題を解決していくための新たな法律の制定を速やかに検討すること
(2) 国が、本年3月16日の札幌高裁判決及び同月23日の大阪高裁判決に対して上告せず、早期の司法解決を図るべく原告団及び弁護団との間で基本合意の締結に向けた協議を速やかに開始すること、ならびに内閣総理大臣及び厚生労働大臣が、優生保護法問題の被害当事者と面談し、謝罪する場を設けることに尽力頂くこと
を要請いたします。
2 要請の理由
昨年の2高裁判決(2月22日大阪高裁、3月11日東京高裁)、今年に入ってからの3地裁判決(1月23日熊本地裁、2月24日静岡地裁、3月6日仙台地裁)及び直近の2高裁判決(3月16日札幌高裁、3月23日大阪高裁)は、いずれも、優生保護法の違憲性、障害者等に対する偏見差別を正当化・固定化させた責任の重大性等を指摘し、国の損害賠償責任を認めました。3月23日の大阪高裁判決においては、国が優生条項の憲法違反を認めない限り除斥期間は進行しないとし、裁判で争い続ける国の姿勢を厳しく断じています。司法の判断は完全に固まりました。被害者が高齢化し、次々と亡くなる現状において、これ以上、国が解決を先延ばしにすることは許されません。
私たちは、すでに昨年、優生保護法問題の全面解決にむけた要請の骨子をまとめ、提出しています。今こそ国は、全ての被害者の尊厳回復と補償、そして優生思想や障害者差別の根絶に向けた施策を実現すべく、優生保護法問題の全面解決にむけて舵を切るべきです。
憲政史上最大の悪法とも指摘される同法を長年放置してきた国会においては、自らの重大な責任に鑑み、上記要請の趣旨記載のとおり、対応頂くことを求める次第です。
以 上
2023年3月28日 「優生保護法問題の早期・全面解決を求める3.28院内集会」アピール
「優生保護法問題の早期・全面解決を求める3.28院内集会」アピール
私たちは、優生保護法問題に関する昨年の大阪高裁判決、東京高裁判決ならびに今年に入っての1月23日熊本地裁、2月24日静岡地裁、3月6日仙台地裁、3月16日札幌高裁に続く、3月23日大阪高裁判決を心から歓迎します。直近の大阪高裁判決においても、裁判長から言い渡された勝訴判決に、原告、弁護団、支援者は手を取りあい、喜びの涙を流しました。さらに、関連する3月24日大津地裁の優生保護法情報公開請求裁判でも、情報開示を認める勝訴判決が出されました。
国がつくった優生保護法の恐ろしさは、「不良な子孫の出生防止」という目的の下で、子どもを持ってよい人/持ってはならない人を決めつけたことです。強制不妊手術を推進するために、都道府県に対して、「身体拘束や麻酔を打ってもいい、だましてもいい」と通達を出し、強制不妊手術を推進しました。犠牲者の数は、当事者の同意無しで進められた人工妊娠中絶手術と合わせて、約84,000人に及びます(厚生労働省調査分)。加えて、優生保護法を支える「障害は不幸だ」という価値観は、今も障害者差別、偏見の温床を成し、誤った障害者観と共に優生思想を日本社会に深く広くはびこらせています。また国は、多くの自治体で強制不妊手術の証拠となる資料がすでに破棄され、手術の実態がつかめない状況を放置したままです。
この間の7つの判決は、そうした国の非人道的行為を断罪しました。優生保護法は憲法違反で著しい人権侵害であること、この法律が障害者差別や偏見を助長したことに言及し、司法は、人権の砦としての役割をしっかり果たしてくれました。
しかし、昨年2月の大阪高裁判決から今年3月の仙台地裁判決にいたる一連の勝訴判決に対し、国は、除斥期間の適用を制限したことを不服とし控訴、上告を続けています。私たちは、この3.28院内集会で次のことを国に要求します。
1.今すぐ控訴、上告を取り下げるとともに、札幌高裁、大阪高裁判決に対して上告しないこと。憲法に違反し、著しい人権侵害をしておきながら、控訴、上告をすることは絶対に認められません。
2.国は今すぐ、優生保護法が違憲であること、及びその責任を明確に認め、被害を負った原告らに、謝罪すること。
3.今なお名乗りを上げられない被害者の救済を優先すべく、調査と検証に全力を尽くすこと。
4.二度と同じことを繰り返さないために、これまでのことを総括し、当事者、関係者とともに優生思想を許さない方策の検討と具体策の制定に力を尽くすこと。
2018年1月の仙台地裁提訴からもう5年が経ち、すでに5人の原告が亡くなっています。高齢になった原告らの大事な人生を、苦痛と苦労の中で終わらせることは許せません。原告らが身をもって教えてくれている「命を分けない社会」「障害があろうとなかろうと、すべての人たちの人権を大事にできる社会」の実現のチャンスは今しかありません。私たちは、原告と全国の被害者の名誉と権利の回復のために、そして、優生保護法問題の全面解決のために、より一層、団結し、力を合わせ、運動し続けます。
2023年3月28日
「優生保護法問題の早期・全面解決を求める3.28院内集会」参加者一同
2023年3月24日 内閣総理大臣・厚生労働大臣あて要請書
2023年3月24日
内閣総理大臣 岸田 文雄 様
厚生労働大臣 加藤 勝信 様
要 請 書
優生保護法被害全国原告団
共同代表 飯塚 淳子(仮名)・北 三郎(仮名)
優生保護法被害全国弁護団
共同代表 新里 宏二・西村 武彦
優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会
1 要請の趣旨
優生保護法問題の早期かつ全面的な解決のために、
(1) 国が、本年3月16日の札幌高裁判決及び同月23日の大阪高裁判決に対して上告せず、早期の司法解決を図るべく、原告団及び弁護団との間で基本合意の締結に向けた協議を速やかに開始すること
(2) 内閣総理大臣及び厚生労働大臣が、優生保護法問題の被害当事者と面談し、謝罪する場を設けること
を要請します。
2 要請の理由
昨年の2高裁判決(2月22日大阪高裁、3月11日東京高裁)、今年に入ってからの3地裁判決(1月23日熊本地裁、2月24日静岡地裁、3月6日仙台地裁)及び直近の2高裁判決(3月16日札幌高裁、3月23日大阪高裁)は、いずれも、優生保護法の違憲性、国による加害行為及び被害の重大性を明確に指摘し、国の損害賠償責任を認めました。
このような裁判状況は、国にこの問題の責任を果たすことを強く促しているものです。3月23日の大阪高裁判決においては、国が優生条項の憲法違反を認めない限り除斥期間は進行しないとし、裁判で争い続ける国の姿勢を厳しく断じています。司法の判断は完全に固まりました。被害者が高齢化し、次々に亡くなるという現状において、これ以上、国が解決を先延ばしにすることは許されません。
そこで、政府には、内閣総理大臣及び厚生労働大臣が、優生保護法問題の被害当事者と面談し、謝罪するとともに、早期の司法解決(係属中の全ての訴訟の和解等による解決)と今後の全面解決にむけた道筋をつけるための基本合意の締結に向けた協議を速やかに開始することを求めます。
私たちは、すでに昨年、優生保護法問題の全面解決にむけた要請の骨子をまとめ、提出しています。今こそ国は、全ての被害者の尊厳回復と補償、そして優生思想や障害者差別の根絶に向けた施策を実現すべく、優生保護法問題の全面解決にむけて舵を切るべきです。
そこで、上記のとおり、要請する次第です。
以 上
2023年3月6日 優生保護法訴訟仙台地裁判決に対する声明
2023年3月10日
優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会
共同代表 及川 智・大竹 浩司・大橋 由香子
桐原 尚之・小谷 晴子・利光 恵子
藤井 克徳・藤原 久美子・山崎 恵
山本 秀樹
私たちは、優生保護法裁判の勝利と優生保護法問題の全面解決をめざす全国団体です。2022年5月に、各地の訴訟・被害者支援に取り組む22団体で結成しました。同法下で多くの障害者や病者に不妊手術や中絶手術を強制した国に対して、充分な謝罪、補償、検証、総括を求めています。また、各地の訴訟に関する情報交換や優生保護法問題についての集会・学習会の実施、国会及び関係省庁へのロビー活動などに取り組んでいます。
2023年3月6日、仙台地方裁判所第3民事部(髙橋彩裁判長)は、国に対し、優生保護法被害者である原告らへの損害賠償を命じる判決を言い渡しました。これは、2018年1月に宮城県の女性が提訴した国家賠償請求訴訟につづく全国の一連の裁判で、5つ目の勝訴判決でした。
判決では、優生保護法が憲法13条、14条1項、24条2項に違反することを認めました。また、被害者が、手術の内容やその実施主体および根拠について認識することが困難な仕組みをつくりだしたのは、国であったと認定しています。さらに、国が同法にもとづく優生思想の普及を目的とした政策を継続し偏見・差別を強化したこと、法改正後も優生手術が適法であるという立場を取り続けたこと等によって、原告らは提訴をするための情報や相談機関にアクセスすることが困難な状況であったとしました。そしてその困難さは、原告らが2018年1月以降に優生保護法国賠訴訟の報道を知り、関係者の支援を経て、法律相談を実現したときまで解消しなかったと述べています。このような特段の事情を踏まえて、除斥期間の適用は著しく正義・公平の理念に反するとして、除斥期間の適用を制限しました。
特筆すべきは、被害者が被害を訴えることの困難さにも言及している点です。優生手術について損害賠償請求することは、障害や不妊手術というプライバシーにかかわることを弁護士に告知し、法廷で公表することを伴い、報道対象にもなるうえ、自身や親族・関係者に影響が及ぶことも想定されることから容易ではないとしました。提訴に至るまでにはいくつもの障壁があり、関係者や法律家による支援によって初めて実現するものであったという原告の事情を的確に踏まえた判決であり、高く評価します。
本判決を受けて、国は、優生保護法に基づく人権侵害の実態と、障害のある人に対する偏見・差別が払拭されていない現状に真摯に向き合うべきです。違憲の法による人権侵害に対する損害賠償から逃れ続けることは、何重もの人権侵害をいまだに続けていることにほかなりません。いまこそ、控訴することなく、本判決を速やかに確定させ、原告らの人権回復を開始するよう求めます。
加えて、現行の「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」の運用にとどまらない、すべての被害者に対して、その被害に見合う補償と尊厳回復の措置を求めます。さらには、人権教育の強化等、社会に染み付いてしまった優生思想を取り除くための政策をより一層進めるよう強く要請します。
以上
2022年12月20日 北海道江差町「あすなろ福祉会」不妊処置についての声明
2022年12月20日
優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会
共同代表/及川智・大竹浩司・大橋由香子
桐原尚之・小谷晴子・利光恵子・藤井克徳
藤原久美子・山崎恵・山本秀樹
北海道江差町の社会福祉法人「あすなろ福祉会」のグループホームで、知的障害のカップルらに20年以上前から不妊処置をしていたことが明らかになりました。私たち「優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会」(以下、優生連と略す)は、障害のある人の尊厳と当たり前の生活を営む権利を奪う行為であると強く抗議します。
この行為は、1948年から96年まで続いた優生保護法と無関係ではありません。そして、このような行為が「あすなろ福祉会」だけの問題だとは、到底思えません。
知的障害があっても、社会的資源を活用し、周囲からのサポートを得て子どもを生み育てているカップルはたくさんいます。本来は支援の側に立つべき立場にもかかわらず、今回の「あすなろ福祉会」のような実態は、まさに「優生保護法」時代を彷彿とさせます。
国は、今すぐに他の障害者福祉事業所において、同じような行為が行なわれていないか実態調査をすべきです。
今回の行為の温床に、国が「優生保護法」について、被害者に対し正式な謝罪も補償もせず、実態調査や検証・総括もせずに、長年にわたって放置してきたことが深く関係することは明らかです。
国は、これ以上、障害のある人の人権を奪うことのないよう、直ちに優生保護法問題の解決に向けて真摯に対応すべきです。そのために、国は早急に優生保護法やそれにかかわる被害について第三者を含めた実態調査や検証をし、総括し、その結果を国民に示すべきです。
「あすなろ福祉会」の行為についてマスコミの報道を耳にした心無い市民からの、障害のある人が子どもを産み育てることについての差別発言が後を絶ちません。そのひとこと一言が、多くの障害のある人たちや関係者を傷つけています。
子どもを生むか生まないかを自分で決める当たりまえの権利が奪われない社会、差別や優生思想のない社会を実現することは、障害のある人だけではなく、すべての人にとって大切なことです。
今年9月に出された国連障害者権利条約の対日審査の総括所見の中でも、「障害のある人に対する否定的な固定観念・偏見・有害な慣行を排除する国家戦略の採択を」と勧告されたばかりです。
優生保護法問題は決して終わってはいません。このような人権侵害が、「障害があるから」という理由で平然と続けられ、正当化されることを、私たちは、絶対に認めることはできません。障害の有無にかかわらず、人としての尊厳は決して奪われてはならないからです。
今回の許しがたい行為は、今日の日本の障害者差別、優生思想を如実に表しています。優生保護法問題を全面的に解決し、一日も早い差別や優生思想のない社会の実現にむけて、優生連として声を上げ、運動を大きく広げていくことに全力をあげていきます。
以上
2022年10月25日 優生保護法問題の全面解決を求める請願書
2022(令和4)年10月25日
優生保護法問題の全面解決を求める請願書
優生手術被害者・家族の会
共同代表 飯塚 淳子(仮名)・北 三郎(仮名)
全国優生保護法被害弁護団
共同代表 新里 宏二 ・ 西村 武彦
優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会
共同代表 及川 智・大竹 浩司・大橋 由香子
桐原 尚之・小谷 晴子・利光 恵子
藤井 克徳・藤原 久美子・山崎 恵
山本 秀樹
優生保護法問題の速やかな全面解決をはかるよう、以下のとおり要求します。
第1 被害を償うに足りる賠償・補償の実施
1 被害を償うに足りる賠償・補償
訴訟の早期全面解決を図るため、2022年2月22日大阪高裁判決、同年3月11日東京高裁判決に従って、立法措置により、裁判の提訴・未提訴を問わずすべての被害者に対し、その人生被害を償うに足りる補償を行うこと
2 対象者の拡充
優生手術を強いられた者の配偶者、人工妊娠中絶手術を強いられた者等も賠償・補償の対象とすること
3 請求期限の撤廃
全ての被害者への賠償・補償を実現すべく、除斥期間の適用を行わず、請求期限を撤廃すること
4 被害者への情報の周知の徹底
全ての被害者への賠償・補償を実現すべく、広報周知を工夫・徹底すること
第2 責任の明確化と謝罪
1 謝罪決議
2つの高裁判決で、国会の責任が厳しく断罪されている結果を受け止め、 衆参両院において謝罪決議を行うこと
2 法律における国の責任の明文化
法律において、国が責任の主体であることを明確化し、被害者への謝罪と全面解決に向けた決意を明文化すること
第3 真相究明・恒久対策
1 真相究明、再発防止のための施策の実施
二度と同じ過ちを繰り返さないため、第三者機関による検証等の施策を実施すること
2 優生思想・障害者に対する偏見差別の解消にむけた施策・立法措置の実施
優生思想および障害者に対する偏見差別解消にむけ、教育、啓発等の施策および立法措置を検討・実施すること
3 継続的な協議の場の設置
被害の回復、優生思想に基づく偏見差別の解消にむけた施策の検討など、優生保護法問題の解決に向けた諸課題について、被害者、障害当事者、関係団体及び弁護団等との継続的な協議の場を設置すること
以上
2022年10月25日 優生保護法問題の全面解決をめざす10.25全国集会 アピール
優生保護法問題の全面解決をめざす10.25全国集会 アピール
優生保護法は、1948年から1996年までの48年間存在し、障害のある人たちを中心に強制不妊手術や中絶手術を強要された被害者は、厚生労働省の公表で約8万4千人いると言われています。
原告の多くは、2018年にはじまった仙台地裁の裁判報道や全日本ろうあ連盟の実態調査で、自分が受けた手術が優生保護法によるものだったと知りました。2022年9月26日には、25人の原告に加え、新たに6人が提訴しています。原告らは、裁判で、すさまじい過去を語り、「元の体に戻してほしい」「同じ過ちを二度と繰り返さないで」と訴えました。原告らの憤り、差別や偏見の中で生きてきた苦しみが、裁判を通じて明らかになりました。
津久井やまゆり園の殺傷事件をはじめ、障害のある人に対する虐待事件や心無い差別は後を絶ちません。このことは、優生保護法の条項「この法律は、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」と無関係だとは思えません。優生保護法は、障害のある人たちの人権を奪っただけではなく、社会に誤った障害観を植え付け、優生思想を根付かせてしまったのです。
この法律をつくった国会議員それを運用し強制手術に関わった行政、医療関係者、そして地方裁判所の裁判官たちは、どんな思いで原告の訴えを聞いたのでしょう。福祉、教育、メディア関係者、市民の多くも、ここに集う私たちもどこまで真剣にこの問題に向き合ってきたでしょう。
被害者は高齢になり、原告のうち5人が亡くなりました。解決に向けて一刻の猶予も許されません。私たちは、今日の集会で「優生保護法問題は終わっていない」こと、障害のある人への根深い差別や優生思想を、自分の問題として考える大事さを、改めて確認しました。
私たちは優生保護法問題の全面解決のために、過去の過ちを見直し、原告と被害者の人権と尊厳を取り戻し、「いのちを分けない」未来を創るために、国に以下のことを求めます。
1.国の責任を認め、被害者すべてに謝罪と補償、そして人権と尊厳の回復を求めます。
2.優生保護法の被害実態の調査・検証、再発防止策の確立を求めます。
3.国は2022年2月22日大阪高等裁判所、3月11日東京高等裁判所の判決に対する上告を直ちに取り下げ、すべての裁判で原告の訴えを認め、裁判の終決を求めます。
4.改正後も被害を生み出している優生保護法問題の解決をめざし、差別のない、いのちを分けない社会をつくる施策の検討のため、被害者、障害当事者、関係団体及び弁護団等との継続的な検討協議の場を求めます。
2022年10月25日
優生保護法問題の全面解決をめざす10.25全国集会参加者一同