北海道

小島喜久夫さん実名

 農家に引き取られ育つが2歳で小児麻痺による右足の障害が残る。養父母間の弟・妹誕生により家族関係が悪化し素行が荒れるようになる。19歳で警官に手錠を掛けられ、精神科・中江病院に連行され入院。数ヶ月後に「精神分裂病」を理由に強制不妊手術を受ける(手術の記録は無い)。1年後に病院から脱走して叔母に保護される。

 仕事をするために免許を取りタクシー運転手になり結婚もしたが、当然子どもはできない。妻には「おたふく風邪のため」と嘘の説明をしてきた。2018年1月末に仙台での提訴の記事を読み、初めて同じ境遇の人を知り、妻にやっと真実を告げた。かなり悩んだが、「事実なら電話相談したら」と背中を押され、弁護士と話をして裁判を起こすことを決心した。


裁判の情報


●札幌地裁

第1回 2018928

第2回 12月21日

第3回 2019年3月15日

第4回 10月18日

第5回 12月26日

結審 2020年9月25日

判決 2021年1月15日敗訴


●札幌高裁

第1回 2021年11月26日

結審 2022年10月26日

判決 2023年3月16日勝訴


●最高裁
2023年11月1日 国が上告申立受理
         大法廷回付へ

2024年5月29日 大法廷弁論

    7月3日  判決(予定)


道央のご夫妻 Aさん(妻)

Bさん(夫・死亡)

 妻は親族との入浴中に妊娠に気付かれ、夫と共に中絶手術への同意書署名を説得される。市立病院にて中絶及び優生手術(優生手術の記録無し)を受ける。

妻は38歳の頃に念願のお子さんを身籠りご夫婦は手を取り合って喜んだそうである。「親戚も医者も憎い。私を大事にしてくれる夫と二人で一緒に育てたかった。」と話す。夫は、手術に同意してしまった呵責に苛まれ、妻と子が不憫で手術後すぐに白木の位牌を購入し供養を続けてきたとの事。「この問題を初めて新聞報道で知って本当に嬉しかった。二人でずっとじっとして手術のことを話せずにきたが、やっと妻を救ってもらえる。私は我が子を奪われた悔しさ、悲しさを裁判で問いたい。」と意見陳述をされていました。

 夫が82歳でお亡くなりになっても、この思いは強く私たちの胸に残っています。

裁判の情報


●札幌地裁

第1回 2018年6月28日

第2回 11月12日

第3回 2019年3月14

第4回 8月29日

第5回 10月31

第6回 2020年1月9日

結審 1029

判決 2021年24日敗訴


●札幌高裁

第1回 2021年10月16

第2回 12月15日

結審 3月1日

判決 6月16日敗訴

石狩管内在住の男性(匿名)

男性が18歳頃の1958年生活保護法に基づく岩見沢市内の救護施設に職業訓練を受けられると考え、入所。そこは主に知的障害者を受け入れていて、期待した職業訓練は受けられず、各種の雑用をやらされた。
60年20歳頃に施設職員に連れられ、説明もなく強制不妊手術を実施された。施設での職員の指示に従い疑問を口にしないという生活が身に染みていたので手術の説明や理由を尋ねなかったが陰嚢の手術であった為、生殖に関わる手術だろうと理解していた。「訳の分からないうちに連れて行かれ、自分でもどうしたらいいか分からなかった」と振り返っていた。縁談もあったが、どこからか手術の件が伝えられたようで破談となった。「今さら何を言ってもと諦め、全ての事を忘れることにした」と思って過ごしてきたが、「私が表に出ることで他の人の後押しになれば」と考え親族と弁護士会電話相談に連絡をして提訴を決意した。


裁判の情報


第1回 2023年7月25日

第2回 9月29日

第3回 12月15日


優生保護法被害者を支える市民の会・北海道

(構成団体:DPI北海道ブロック会議、日本国民救援会北海道本部、日本キリスト教団北海教区ハラスメント防止協会・性差別問題担当委員会など)


●小島さん 

 2018年5月に札幌の小島喜久夫さん、6月に道央のご夫妻が損害賠償を求めて提訴しました。この情報に触れて『支援する市民の会・北海道』がスタートしました。「つい最近まで優生手術は中江病院が行ったことと思っていたが、国が強制的に行ったと知った。法律や政策で人生を狂わされた被害者に国は責任を認めてきちんと謝罪してもらいたい。中江病院で同じく手術を強制された仲間に自分の事を思い出して訴え出てくれたらと思うので、実名で提訴する」との小島喜久夫さんの胸を突く言葉や思いがどれほど、私たちの背中を押してくれたかは計り知れません。

 札幌地裁での結審や判決に向けて、支援する会では『旧優生保護法国家賠償訴訟に対する真の被害者救済判決を求める署名』行動を行い、集約の際にこの問題の啓発を行ってきました。残念ながら、「除斥事項」の壁に阻まれて請求は棄却され敗訴となりましたが、小島さんの闘うお気持ちは変わらずに強く、「絶対 裁判長に通じると信じて思いを述べた。元気なうちは頑張っていく。応援よろしくお願いします」とお話しされていました。さらに私たちの背を押し続けておられます。

●道央のご夫妻

 2018年5月に札幌の小島喜久夫さん、道央のご夫妻が損害賠償を求めて提訴しましたが、道央のご夫妻は、地裁第1回目の裁判からこれまで一度も法廷に出席したことはなく、我々支援の会のメンバーも傍聴でお姿に接する機会を得ずにいました。北海道弁護団はこの点を考慮し、最大限にご本人の言葉や思いを伝えるべく努力をしてくれました。この中から、妻のせっかく授かった子を意に反して中絶され、さらに不妊手術を強制された過酷な被害、夫の手術への同意を迫られて妻を守りきれなかった慟哭の思いを知る事ができました。

 札幌地裁での結審や判決に向けて、支援する会では『旧優生保護法国家賠償訴訟に対する真の被害者救済判決を求める署名』行動を行い、集約の際にこの問題の啓発を行ってきました。残念ながら、地裁判決は優生手術の事実認定をせず、さらに中絶手術は「経済的理由」に基づく可能性まで示唆した最低最悪の内容で請求は棄却され敗訴となりました。夫は19年に亡くなられ 改めて、この裁判の被害者の高齢化の課題に直面もしました。幸い、夫の甥にあたる方がご遺志を継いで控訴審にも臨んでくださっていますので、さらに私たちもこれまで以上に支援を続けて行こうと思っています。