【ポケモン】

色違いの確率増加は

(色違い確率)×(判定回数)で近似してOKか?

作成者は本ページで紹介するゲームに関して、公式とは全く関係がありません。下記のガイドラインに基づいて活動をしていきます。

ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン

色違いと出会う確率は、上げることができる

 色違いに出会える確率は1/8192(0.012%)あるいは1/4096(0.024%)と極めて低く、この状態でさまざまな色違いポケモンを集めるのは、いささか現実的ではない。そこで、ゲーム内では色違いに出会える確率を上げることができるお助けアイテムとお助けシステムが存在する。本ページはこれらのお助けアイテム・システムの効果に関する検討だ。大げさなことを書いているが、非常に簡単な数学(もしかすれば算数)レベルのお話なので、気楽に読み進めてほしい。以降は色違いの基本出現確率を1/4096として考えていく。色違いと出会う確率を上昇させる基本的な共通の手段は以下の2通りだ。


・ひかるおまもり

ゲーム内の収集要素の一つ、大体はポケモン図鑑の完成のときにもらえるご褒美である。色違いの判定回数を+2する。


・国際孵化

オスとメスを育て屋・預かり屋に預けるとタマゴが産まれるシステムがある。ここでオスとメスのポケモンを異なる国籍にしてタマゴを産ませることが通称「国際孵化」と呼ばれている。色違い判定回数を+5する。


これ以外にも基本確率以上の確率で色違いを出現させるシステムが存在するが、各ソフトでの固有のものであることがほとんどなので、ここでは考えない(ただし、基本的な概念は共通である可能性が高い)。ひかるおまもりと国際孵化の効果は重複するので、両方の効果がない場合、片方の効果しかない場合、および両方の効果がある場合で、色違いの判定回数は1、3、6、8のいずれかである。


色違いと出会う確率の計算はちょっと難しい

 これらは「色違い判定回数を増やす」という効果だとされていることから、「色違いでなければ色違い判定をやり直す」ということであると推察される。したがって、色違い出現確率をP(= 1/4096)、色違い判定回数をx(= 1 or 3 or 6 or 8)として、下記のように計算できる。

どういう手順で上記の計算式になるかというと、1 - Pが色違いが出現しない確率であり、それをx回かけることは、x回の判定で1度も色違いが出現しない確率を表している。1度も色違いが出現しない確率を1(= 全事象の総和)から引くことは、1回以上は色違いが出現する確率を示すので上記の式となる。

 簡単な例で上記の式を考えてみよう。今回の題材なら1/6の確率で1という色違いの出目が出る6面サイコロの例がイメージしやすいだろう。サイコロを3回投げて1が1回以上出る確率は、以下のような樹形図を書けば計算できる。

このように考えれば、3回投げたサイコロで1回以上1が出る確率は1 - (5/6)^3 = 91/216(約42%)と求めることができる。いうなれば色違い出現確率は、4096面サイコロを1~8回投げて1の出目が出る確率を求める作業だ。上記の図のサイコロを振る回数( = x)を1、3、6、8のいずれかにして、1が出る確率( = P)を1/4096とすれば同じ考え方ができる。

 さて、x = 1のときならば、計算は簡単であるが、x = 8となると、(1 - P)^x部分の計算はかなり面倒になることが予測できる。Pはわかっているので1/4096を代入して、1 - P = 4095/4096と計算したとしても、x = 8なので(4095/4096)^8 = {(4095)^8}/{(4096)^8}と極めて大きな数を計算する必要が出てくる。かといって、Pへの代入を後回しにして、(1 - P)^8を展開しようと思っても、こちらはこちらで煩雑だ。しかも、結局は大きな数の計算は避けられない。実際は計算ソフトを使えば一瞬であるが、簡単に近似値を知りたいと思うこともあるだろう。


(色違い確率)×(判定回数)で近似できる

 そこで次のような近似が役立つことを紹介しよう。


色違い出現確率 = 1 - (1 - P)^x ≒ x × P

 

x × P(以下xP)、すなわち(色違い確率)×(判定回数)は前節で紹介した正確な色違い出現確率の良い近似となるのだ。これは非常に簡単だ。たとえ、x = 8であっても色違い出現確率は8/4096と大差ないと言える。もちろん、P = 8192でも、x = 3でも大丈夫だ。ただ 1 - (1 - P)^xとxPとでは、式の形が全く違うし、近似が成り立つのかにわかには信じがたい。これらの2つの式は特定の条件で近い値となることを、まずは以下の図を見て確認しよう。

図 Pが0~1、xが1、3、6、8のときの色違い出現率とその近似

Pが0から1までの範囲(左)、および左図を拡大した0から0.01までの範囲(右)。黒線は正確な出現確率(1 - (1 - P)^x)を示し、赤線は近似(xP)を示す。左図の青線はP = 0.05を示す。

上の図を見ると、Pが小さい値、特にP = 0.05より小さいときには正確に計算された確率と近似では大きな差がないことがわかる。さらにPが0~0.01の範囲で拡大して確認してみると、図では黒線(正確な確率)と赤線(近似)でほとんど線が重なっており、1%の違いもないことがわかる。実際はP = 1/4096や1/8192で0.01の1/10以下である。したがって、確かに近似は成立しているのだ。ただし、Pが大きいときは全く近似が成り立っておらず、出現確率を表しているはずなのに100%を超えてしまっている部分があることに留意してほしい。次は式を眺めて確認してみよう。

使っている知識は高校生レベルの数学であるが、苦手な人は最後の式だけ見て、こうなるんだ~くらいの気持ちで見てほしい。上記のように正確な確率を計算する式を紐解くと、近似式みたいな形にすることができる。ただし近似式だけでなく、その後ろにいくつか項が並んでいる。正確な確率を計算する式と近似式の値を比べた図を見て思い出してほしい。Pが大きい時でも、正確確率を計算する式では100%を超えることがないのは、近似式以降の修正項があるおかげなのだ。逆に近似式では、これらの項がないので100%を越えてしまうことがある。

 正確な確率を計算する式と近似式の値の差は、修正項の部分を計算すればわかる。修正項の値が十分小さければ、近似式を使って考えても問題ない、ということだ。Pが0より大きいがとても小さな値の時、例えば、P = 1/100だとすれば修正項はP^2 = 1/10000以下の値をかけた二項係数の和となっている。この時、修正項の1項目の{x(x-1)/2}(P^2)の絶対値が最も大きくな、f(P)の値は無視できるくらい小さくなる。すなわち修正項の1項目が正確な値からのずれを生み出す主因となる。したがって、Pがとても小さいときは{x(x-1)/2}(P^2)を計算すれば、正確な値からのずれを評価できるといってよい。x = 8であれば、x(x-1)/2 = 28となる。修正項の1項目が1%以上の誤差を生み出すためには28(P^2) > 0.01を解けばよく、これはP > √(1/2800) ≒ 0.019 > 1/100のときである。xがより小さな値の時は、Pはもっと大きな値でないと、1%以上の誤差が発生しない。つまり、P ≦ 1/100を考えるときは、修正項の1項目も1%以下の誤差しか生まない、つまり近似式はほとんど正確な値と一致するのである。実際のPの値は1/100よりずっと小さいので、発生する誤差も1%よりかなり小さい。


おわりに

 Gamesのページの初めての更新であったが、いかがだっただろうか。作成者は暇があるとこんなことばかり考えている。題材はポケモンにおける色違い出現確率についてであるが、まじめに考えだすと数学的に面白いことが見えてくる。高校生くらいであれば、確率計算や(明示的に扱わなかったが)微分のちょうどいい復習なのではないだろうか。今後も、ゲームに出てくる現象などをこんな感じで考察していく予定である。なお、読みやすさを重視して、正確な議論を飛ばしたりしているが、そこはご容赦いただきたい。もし、何か不正確なことなどあれば、ご連絡いただけると幸いである。