キャンパス中央の芝生では、毎年6月末になるとネジバナが咲き乱れます。
ネジバナは小さいけどランの仲間で、多年生の草本です。花の時期以外は地面に葉を這いつくばらせて地味に暮らしています。目立たないので草むしりを免れているようです。花期になると一気に茎を伸ばして花をつけます。
「植物科学」では、毎年、花の撮影を課題にしています。
多くの植物は昆虫を呼び寄せるために目立つ花びらを作ります。ところが、ミチタネツケバナの花びらは退化し、非常に小さいです。花びらが目立たないため、いきなり菜の花(菜種)のようなさやをつけるように見えます。4月に芝生のヘリに生えるので探してみてください。
受粉は、自分の雌しべと雄しべで自家受粉を行います。動物も植物も他の個体と交配するのが普通のはずですが、自家受粉しかしないで大丈夫なのでしょうか? この現象は、進化の研究者の研究対象になっています。
自家受粉の問題は「進化生物学II」で紹介します。
初夏から秋にかけて図書館前やB5号館裏で咲きます。キャンパス内のツユクサには青いものと薄紫のものの2種類あります。
花が青くなるためには、色素の蓄積場所である液胞のアルカリ化、補助色素の会合、色素分子の複合体形成など、複数のしくみが組み合わさることが必要であることがわかっています。ツユクサでは液胞のpHがアルカリにならない変異体や色素の会合がうまくできない変異体が知られていて、これらの花色は薄紫になります。キャンパス内には変異体と青色型が混在しているようです。
花色のしくみについては「植物科学」で解説します。
図書館前の並木はクスノキです。クスノキの花は小さいですが、顕微鏡で拡大してみるととても可憐です。
クスノキやモクレンなどは、花の咲く植物の進化の初期に分かれたグループです。これらの花は、雌しべ、雄しべの数や配置がアブラナなどと違っていて、有名なABCモデルを単純に当てはめることはできません。花のつくりと進化の問題は、未解決の問題がまだまだあります。
植物の進化については「進化生物学II」「植物科学」で解説します。
K1号館、K2号館の前の並木はハナノキです。掌状の葉をしていませんがカエデの仲間で、授業開始前の早春に小さな花をつけ実ができます。ハナノキには雄雌があり、実をつけるのは雌の木だけです。葉のない季節に赤い羽を付けた実だらけになるので、遠くから見ても目立ちます。実がつくのは新学期の慌ただしい時期で、注目されないのが残念です。