豆苗は、価格が安く、多くのスーパーで売っているため、学生実験に使いやすい材料です。
ここでは、これまでに豆苗で行った学生実験の内容を解説します。
1.豆苗の茎と葉はどこか
2.茎頂分裂組織の観察
3.葉の透明化
4.葉の表皮細胞の観察
5.茎の道管と表皮の観察
豆苗は若いエンドウの芽生えです。エンドウはマメ科なので、複葉を持ちます。複葉は複数の小さな葉(小葉)に分かれます。中央の軸は茎ではなく葉の一部です。茎と葉の違いは厳密には難しいのですが、茎は先端に芽があって伸び続けるのに対して、葉の先端はこれ以上伸びないのが目安です。
エンドウの葉は、根元に托葉と呼ばれる葉があるので、中央の軸が茎のように見えますが、托葉から先は葉になります。茎の先端の芽は若い托葉に挟まれています。
若い托葉を開くと芽があります。芽はたくさんの小さい葉からできています。透明化という処理をすると、緑色が抜けて透明になり、組織の内部まで見ることができます。透明化した芽から葉をはがすと、たくさんの小さい細胞からできている茎頂分裂組織(矢印)が、できたての小さい葉に囲まれている様子がわかります。茎頂分裂組織は細胞分裂をしながら、若い葉を次々と作り出す場所です。
豆苗は、葉の細胞の観察をするのにも良い材料です。いろいろな方法がありますが、ここでは透明化の方法を紹介します。アルコール酢酸混合液で固定した後でグリセロールなどを含む透明化液に漬けると、細胞の透明度が上がって葉の奥まで見えるようになります。ピントを変えるといろいろな細胞が見えます。たとえば、葉脈は水の通り道になっている道管を含んでいます。表面にピントを合わせるとジグソーパズル状の表皮細胞や気孔が見えます。
豆苗の葉の表皮は比較的はがしやすいので、表皮をはいで染色することもできます。ただし、この実験をするには、買いたての豆苗ではなく、袋を破って空気中でよく育った葉を使う必要があります。袋入りの豆苗の葉は柔らかすぎて表皮がはがれにくいです。
はがした表皮を酢酸バイオレットを含む染色液で染色し、グリセロールを含む水溶液でプレパラートを作ると、細胞壁と核が染まって見えます。透明化と違ってすぐに見えるのが良いところです。
豆苗の茎は道管を見るのに良い材料です。通常の切片観察では茎を輪切りにしますが、それでは教科書等に書かれた道管の縞模様は見えません。輪切りでなく、細胞を横方向から見る必要があります。
確実に道管を見るには、茎を斜めに切ると良いです。角度はゴボウのささがきをイメージすると良いでしょう。切片はサフラニン水溶液で染色します。道管の模様はらせん状と穴がたくさん開いたものの2パターンあります。