菜の花の表皮細胞
菜の花の表皮をはいで正面から観察しました。細胞は丸く盛り上がっています。上から見ているため山々を空から眺めているイメージです。
黄色系の色素(カロテノイド)は有色体に蓄積し、有色体は細胞のてっぺんに多く存在しています。細胞壁には縦縞模様があります。不思議な光景です。
マリーゴールド花の表皮細胞
マリーゴールド(園芸品種)花びらの断面です。表側の表皮細胞は円すい形で、中に有色体(クロモプラスト)があります。有色体の中には黄色系の色素(カロテノイド)があるため、黄色く見えています。
細胞が円すい形なのは、光を反射しやすくするためとも、昆虫が滑りにくくするためとも言われていますが、よくわかっていません。
有色体は葉緑体の仲間です。藻類は葉緑体しか持ちませんが、花の咲く植物は葉緑体(厳密には色素体と言います)がさまざまに変化し、花では赤や黄色の有色体になります。進化の過程で葉緑体はさまざまに変化する能力を獲得し、花で昆虫を呼ぶのに働くようになりました。
なでしこ花の表皮細胞
花びらの細胞は不思議な形をしているものが多いです。写真はなでしこ(園芸品種)の表皮を斜めから見たところです。表皮細胞は角(つの)のような形をしています。赤色は恐らくアントシアニンが液胞に蓄積しているためでしょう。花の色素には液胞に蓄積するものと有色体に蓄積するものがあります。
花の色については「植物科学」で解説しています。
サニーレタスの表皮細胞
サニーレタスの葉を小さく切って空気を抜き、プレパラートを作ると表皮細胞が見えます。敷石細胞(pavement cell)と呼ばれるジグソーパズル状の細胞、気孔、葉脈の細長い細胞が見えています。
サニーレタスの色は表皮細胞の色です。表皮を剥ぐと表皮細胞が傷ついてしまい、紫色の細胞を見るのは難しいです。脱気してそのまま見ることにより、無傷の細胞が見えるようになりました。
ニラの葉肉細胞
ニラの葉を脱気して観察してみました。
気孔の内側は空気の通り道になっていて細胞がありません。気孔と内側の細胞の両方を1枚の写真で撮影するのは、同時にピントが合わないので難しいですが、ニラの葉の撮影をしていて、偶然、撮影に成功しました。
空気の面に接して葉緑体が並んでいるのもわかります。
レッドロビンはなぜ赤い
生け垣のレッドロビンの新芽は鮮やかな赤色をしています。切片を作ったところ、表皮に沿った葉肉細胞に赤い色素(恐らくアントシアニン)の蓄積が見られました。若い葉の細胞を紫外線から守っていると考えられます。
植物科学「液胞の機能」で紹介しました。
写真はサフラニン染色したアルファルファの道管です。道管は根から茎の先端まで水を運ぶ管で、水圧に耐えるため、丈夫な細胞壁を持っています。螺旋や穴あきの模様が印象的です。道管を見つけた学生たちの声で実験室は盛り上がっていました。
※学生実験では豆苗を使いました
1年生の実験で、ムラサキツユクサの雄しべの毛を使った原形質流動の観察を行いました。大きくて見やすい細胞で、細胞内を細胞小器官が流れる様子が見えます。
原形質流動は高校の教科書に載っている有名な現象で、モータータンパク質のミオシンが働きますが、詳細な仕組みはわからない点が多いです。最近、早稲田大、千葉大などのグループは、ミオシンを高速に動くものに入れ替えたところ、植物の大きさが大きくなることを発見しました。
2023年度の1年生の最初の顕微鏡観察はミカヅキモの長さ測定でした。ミカヅキモの長さと幅を釣り糸との相対値から求めました。
植物に最も近い藻類はシャジクモと言われていましたが、2014年の研究結果により、ミカヅキモやアオミドロなどの接合藻類であることがわかりました。それ以来、植物の持つ性質の起源を探るため、接合藻類の遺伝子解析が活発に行われています。
植物の起源については「進化生物学II」で解説します。