実験地の概要
担当者:奈良県立橿原考古学研究所 岡田憲一
田原本町教育委員会 藤田三郎
協力者:株式会社パレオ・ラボ 辻康男、菊池有希子
近畿各地の大学の考古学専攻生
田原本町教育委員会
唐古・鍵遺跡史跡公園事務所
(指定管理者:京阪園芸株式会社)
所在地:奈良県磯城郡田原本町大字唐古
水田情報:国史跡唐古・鍵遺跡は、多重環濠で囲まれた弥生時代の拠点的な集落遺跡です。奈良盆地のほぼ中央、初瀬川と寺川に挟まれる現氾濫原面(埋没自然堤防上)に立地します。当時の水田は、隣接する埋没後背湿地にあったと推定されますが、今回の実験水田は、復元整備された多重環濠内に設定しました。2013~2014年度に行われた公園整備に伴って、復元環濠は、旧地表面より1.0~1.5m盛土して基本的形態を造成し、環濠法面および底面にベントナイト系防水シートを敷設、旧水田作土を厚さ0.3mにわたって客土して作られています。整備以降、2020年度に復元環濠D内に公園事務所がイベント用水田を設置し、2021年度、同環濠の隣接地に実験水田を設営。2022年度には、復元環濠E内にも新たに実験水田を設定しました。
実験概要:唐古・鍵遺跡史跡公園実験水田では、水田開墾および耕起の道具の違いにより、イネの成長と作土の形態にどのような変化が見られるかを課題として実験を行っています。復元環濠D内のイベント水田(圃場A)の耕耘機使用に対し、隣接する実験水田(圃場B)は鉄製刃、木製刃、石製刃、無耕起です。半数を移植、半数を直播で栽培しています。復元環濠E内の実験水田(圃場C)では、実験条件として水管理を変え常時湛水とし、鉄製、木製、石製刃、そして無耕起の4種の圃場を設営しています。すべて移植栽培しています。現在は、現代品種であるヒノヒカリ1種ですが、今後、栽培品種も検討する予定です。
実験水田の位置
最寄駅は、近鉄橿原線石見駅、徒歩約20分。
お車の場合は、史跡公園東側の駐車場をご利用ください。
実験状況
写真01 2021年5月16日
開墾前の状況です。雑草が繁茂していました。
写真02 2021年5月16日
石製刃(復元打製石斧)を使った開墾。力ある男子大学生でも雑草の根が断ち切れず苦労しました。
写真03 2021年5月16日
木製刃(復元広鍬)を使った開墾。雑草の根をシート状に捲るように起こせます。
写真04 2021年5月16日
開墾同日、半分に乾田直播(条播)しました。
写真05 2021年6月26日
残り半分(写真右)に移植(30×30cm間隔)しました。
写真06 2021年10月23日
復元石庖丁による穂刈りと鉄鎌による株刈りを行いました。
写真07 2022年4月23日
2021年度の集大成として実験水田断ち割り観察ワークショップを行いました。水田遺跡の発掘にも参加している複数の大学の考古学専攻生が自らの観察所見を述べ議論しました。あわせて分析試料の採取も行いました。
写真08 2022年5月22日
2022年度も圃場Bは同条件で耕起しました。昨年度に比べ土が柔らかく作業がはかどりました。
写真09 2022年5月22日
同日、半分に乾田直播しました。今年度は点播としました。
写真10 2022年5月22日
2022年度は陸稲環境として、はたけ栽培にも挑戦。
写真11 2022年6月19日
圃場Cでは湛水状態での耕起を行いました。新たに加わった泥除け付き復元広鍬の効能を体感しています。
写真12 2022年6月19日
同日、圃場B、Cともに移植しました。
写真13 2022年8月28日
出穂、開花を確認しました。
写真14 2022年9月25日
実るほど頭を垂れる稲穂かな。圃場Bの無耕起区は雑草だらけですが頑張っています。