日本の大学には、文学部や理学部に地理学科が設置されており、その地理学科は多くの場合、人文地理学講座と自然地理学講座からなっています。人文地理学は都市地理学、経済地理学、農業地理学、文化地理学、歴史地理学などからなり、自然地理学は地形学、気候学、水文学、植生地理学、土壌地理学などからなります。しかしながら、1907年に日本で初めて京都大学に地理学講座が創設されたものの人文地理学のみで、京都大学には100年以上自然地理学の講座が設置されず、他大学のように学生が、学部や大学院で自然地理学を学ぶ機会を得ることはできませんでした。そのため、関東に関する多数の自然地理学の文献が出版されているのに対し、関西に関しては限られています。
私は1996年に京都大学の大学院アジア・アフリカ地域研究研究科に教員として赴任し、1997年に全学共通科目(一般教養科目)で自然地理学の講義を始めたところ、多くの学生から自然地理学を勉強できる機会を学内に設けて欲しいという要望を受けてきました。そのような強い要望を受けて、2001年に自然地理勉強会(後に、自然地理研究会と改称)を発足させることになりました。
このような歴史から、この会は、自然地理学を勉強したい、調査したい、研究したい、楽しみたいという願望を持つひとならいつでも自由に参加できます。最初は受け身の参加者であったひとたちも会の中で少しずつ知識や技術を身につけ、次第に積極的に会を運営する方に回ってきています。運営する方に回るとますます自然地理学のおもしろさがわかってくるのではないでしょうか。この会は会員制を採用していないため会費はなく、登録者には毎回案内が回ってきて、参加時にわずかな参加費を支払います。研究会後にバーベキューや温泉などの交流会があるときもあります。
この研究会の最大の特徴は、いろんな大学、学部、大学院の学生たちがメンバーで、中には興味をもった中学生らも参加し、留学生の参加者も少なくないため、学部・大学院・学校・国籍を超えて、それぞれの興味から議論を交え、情報交換できるという点です。留学生は10カ国以上にわたり、イスラームの学生が参加したときはバーベキューの食材にも配慮しました。
2015年に私は文学研究科(地理学専修)に異動し、8年間、学部や大学院で自然地理学の講義や実習を行うことができました。しかし、2023年3月に定年退職することになり、また、京都大学の中で常勤教員から自然地理学を学ぶ機会がなくなりました。
2025年で、自然地理研究会は発足から四半世紀が経ちます。この会を通じて、ひとりひとりがたとえ微力であろうとも積極的に関与していき、楽しみながら自然地理学の発展や各個人の多様性の育成に幾分でも貢献できればと考えています。
自然地理研究会主宰者
水野一晴(京都大学文学研究科 名誉教授)