今回は京都市左京区の市街地にて巡検を行いました。原植生を残しているとされる糺の森で氾濫原の代表的な樹種について学習しました。また周辺の歴史探訪をすることで、下鴨エリアの理解を総合的に深めました。
岡田陸太郎(京都大学アジア・アフリカ地域研究科M1)
2024年10月13日(日) 10時~
京都府京都市左京区 下鴨神社 高野川河畔
22名(学部生6名[文2, 教育1, 法1, 農1, 同志社大学-理工1]院生10名[文7, 人環1, AA研2] 研究員2名 元教員1名 社会人2 中学生1名)
10:00 叡山電車出町柳駅集合
10:15 下鴨神社糺の森(ただすのもり)で植生観察
12:00 昼食
12:45 下鴨エリアで歴史探訪(下鴨神社の七不思議)
13:45 高野川河畔北上
16:00 水野邸にてBBQ
集合後、秋晴れのもと糺の森へ向かいました。
3グループにわかれて、植生観察を行いました。葉で検索するタイプの樹木図鑑を用いて、主に落葉から樹種を同定しました。
例えばこちらの写真の葉を、それぞれケヤキ(ニレ科・写真左)・ムクノキ(アサ科・写真右)と同定しました。一般に、攪乱がおこりやすい場所では、ケヤキ・ムクノキ・エノキといったニレ科・アサ科などの落葉広葉樹林が成立しやすいです。下鴨エリア一帯も扇状地であるため、氾濫原ほどではないにせよ攪乱が比較的起こりやすく、落葉広葉樹林が成立する地域だと考えられます。なお、ムクノキとエノキは、従来はニレ科に分類されていましたが、現在のAPG体系ではアサ科に分類されています。
一旦鴨川デルタにおりて、集合写真を撮りました。
下鴨神社には、クスノキ(上写真左の木)などが植林されています。これは、1934年の室戸台風・1935年の京都大水害により、大量の倒木が発生したためです。糺の森は、人為的なものが加わっていないという意味での「原生林」ではないことがわかりました。
糺の森では、落葉広葉樹の更新が進んでいないという問題が発生しています。これは、クスノキなどの常緑広葉樹が、林冠を閉鎖してしまい、光がさえぎられることで、落葉広葉樹林の更新に必要な照度が足りなくなるためです。案内者は、平均気温の上昇も落葉広葉樹の更新を妨げる一因になっていると考察していました。クスノキの幼木が寒さで枯死しにくくなるためです。
下鴨神社境内にある御手洗(みたらし)池の近くで、下鴨神社の湧き水についての紹介がありました。
下鴨神社を含めた下鴨エリアは賀茂川・高野川が形成する扇状地の扇端にあたり、水が湧き出しやすいです。
ここでは、明治時代に作成された地図を用いた考察も行われました。地図からは、北西から流れる出雲橋周辺の鴨川は河床が砂礫で伏流しており、高野川と合流した後の府立病院周辺で、表流水となっていることがわかります。このことから、御手洗池も、もとは扇状地の扇端の湧水だったと考えられます。
その後、高野川沿いを北上しました。現在は、下の写真右手のトンネル状の部分から、疏水分線(琵琶湖疏水の一部)の水が高野川へ注いでいます。
巡検終了後にバーベキューを行いました。みなさまお疲れさまでした!