朽木は京都から北北東に伸びる安曇川沿いに北上した、琵琶湖の西方に位置する地域です。朽木の植生の特徴は、人の手が入った森林が成立していることです。今回は、「森林公園くつきの森」を訪れました。植物の同定、樹木を中心とした植生調査を行いました。
小坂康之(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科准教授)
岡田陸太郎(京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科M1)
2024年6月1日(土)
滋賀県高島市朽木(森林公園くつきの森)
17名(学部生6名[文4, 法1, 同志社大学-理工1]、院生7名[文4, AA研2, 立教大学-文 1]、研究員2名、教員1名、元教員1名)
8:30 京都大学吉田キャンパス時計台前集合、資料配布、自己紹介
8:40 京都大学出発
10:30 くつきの森到着、周辺地域の自然環境及び実習(植生調査)の内容について説明、図鑑を使用して植物の同定
11:30 班に分かれて調査のベルトトランセクトを設定
12:00 昼食
13:00 植生調査
14:00 植生調査結果の共有と解説
15:00 くつきの森出発
16:00 くつき温泉てんくうで日帰り入浴
18:30 京大着、解散
京都大学時計台前に集合し、車4台で「森林公園くつきの森」へ向かいました。道中で道の駅に寄りました。
今回の実習では、2人1組で樹木中心の植物同定を行った後、3班に分かれて植生調査を行いました。
植物同定は、樹木図鑑を用いて行いました。葉を手掛かりとして、種を特定していきます。どこが1枚の葉なのか(単葉・複葉)、葉のつきかた(互生・対生・輪生)、常緑樹か落葉樹かなどの情報から樹種を絞り込んでいきます。
各グループは、正確に植物を同定することに苦心していました。例えば、葉が落ちている枝があるものの、落葉樹ではなく常緑樹である種がありました。また、一見対生に見えるものの、実は互生である植物もありました。下の写真の視線の先の植物は、シキミでした。
植生調査では、ベルトトランセクトを設け、それに沿って地形の高低差、樹木の同定と胸高直径や、樹高を測定しました。これらの情報をもとに、地形断面に沿った植生分布図を作成しました。今回は幅1m、長さ15mほどのベルトトランセクトを設定しました。
地形を把握するために、高低差を計測しました。測定者は水平な場所に立ち、目線の高さと同じ高さに何があるかを調べます。この高さを基準として、折れ尺の0の位置をあわせます。測定者はハンドレベル(自分の目線と同じ高さがわかる器具)をのぞき、折れ尺の目盛を読み取ります。読み取った折れ尺の目盛は、基準からどれだけ離れているかを表しており、2地点間の高低差になります。この作業を繰り返すことで、地形断面図を作成します。
写真では、写真右の人物の帽子のツバが、観測者の目線の位置でした。そこで、帽子のツバを基準として、観測者がハンドレベルを用いて高低差を計測しています。
つづいて、胸の高さにおける樹木の直径を計りました。今回は1.2mの高さを目安として、巻尺を用いて樹木の直径を測定しました。測定した樹木にナンバーテープを用いて番号をふります。番号をふるのは、どの木のデータを集めたのかを明確にするためです。特に、同じ種の樹木が群落をつくっている場合には、ナンバリングの重要性が高まります。
樹高は、測定者と樹木の根元までの水平距離、目の高さから樹木の先端までの角度、測定者の目線まで高さの3つを測定することで求めることができます。測定者と樹木の根元までの水平距離は巻尺で測定します。目の高さから樹木の先端までの角度(仰角)は、角度付きハンドレベルで測定します。
下の写真では、ホオノキ(写真左の人物の位置にある樹木)の樹高を測定するために、写真右の人物が、仰角を測定しています。この後、tan(仰角)を計算し、tan(仰角)と、ホオノキから測定者までの水平距離をかけあわせます。最後に、測定者の目線までの高さを加えることで、樹高を求めます。
地形断面図に沿って、植生の情報を加えることで、地形断面に沿う植生分布図を作成しました。各班の調査結果は次のようになりました。
植生調査結果の報告後、集合写真を撮りました。
「くつき温泉てんくう」の前でも記念撮影を行いました。
皆様お疲れ様でした!