ネット・プレゼント・バリュー(NPV)とは、投資分析や資本予算において広く使用される基本的な財務指標です。NPVは、将来のキャッシュフローの現在価値を計算し、それが投資の初期コストを上回るかどうかを評価するために使用されます。今回はキャッシュフロー≒売上として人的資本への活用事例を説明します。
企業が人的資本に対して投資を行う際、ネット・プレゼント・バリュー(NPV)を使用することで、将来的な収益性を数値化して意思決定を支援することができます。特に、採用やトレーニングなどの人材関連投資は、即座に成果が出るわけではなく、長期的なリターンを見込むことが一般的です。以下は、架空の企業における事例を用いて、NPVの活用方法を示します。
あるIT企業が、将来の幹部候補となる中堅社員に対してリーダーシップトレーニングを行うことを検討しています。トレーニングにかかるコストは一人あたり50万円ですが、トレーニングを受けた社員が会社に5年間で1,500万円のキャッシュフローをもたらすことが期待されています。ただし、トレーニングを受けた社員のうち20%が3年以内に転職する可能性があると予測されています。
初期条件
トレーニングコスト: 50万円
5年間で得られるキャッシュフロー: 1,500万円
3年以内の離職率: 20%
ここで、企業はNPVを使用して、トレーニングがどの程度の価値を持つのかを評価します。
トレーニングを受けずにそのままの状態で運用する場合、キャッシュフローは次のようになります。
離職しない確率: 80%
離職する確率: 20%
キャッシュフロー期待値 = 1,500万円 × 80% = 1,200万円
これに対し、トレーニングによる投資を追加するかどうかを評価します。
トレーニング後、社員の能力向上により、キャッシュフローが1,800万円に上昇すると予測され、離職率も10%に下がるとします。この場合、トレーニングによるキャッシュフロー期待値は次のように計算されます。
離職しない確率: 90%
トレーニングコスト: 50万円
キャッシュフロー期待値 = 1,800万円 × 90% = 1,620万円
これにより、NPVは次のように計算されます。
投資前の期待キャッシュフロー = 1,200万円
投資後の期待キャッシュフロー = 1,620万円 - 50万円 = 1,570万円
NPV = 1,570万円 - 1,200万円 = 370万円
このように、NPVがプラスであるため、トレーニングへの投資は企業にとって有益であることがわかります。企業はこのようにして、人的資本への投資の是非を数値的に判断することができます。
NPVを元に採用費を算出も出来ます。仮にキャッシュフローに対して10%を採用費を割り当ててる場合。
投資前の採用費 = 1,200万円 × 30% = 360万円(5年間) 72 万円/年間
投資後の採用費 = 1,570万円 × 30% = 471万円(5年間) 94.2万円/年間
この事例が示すように、NPVを活用することで、短期的なコストよりも将来的なリターンに注目して、人的資本に対する長期的な投資の有効性を評価できます。特に、トレーニングや人材開発は企業の競争力を向上させ、持続可能な成長に貢献するため、NPVのような定量的評価指標を用いることは重要です。
NPVを利用すると人的資本への投資に対する有効性がわかり、意思決定がしやすくなります。さらに、NPVを利用して採用費も求められることも理解できます。慣習で採用金額は決められていて「実際に必要な金額がいくらだろう」と悩んでいたら、こちらを試してみましょう。
プロフィール
フリーのウェブマーケティングディレクター
愛知県一宮市に在住。ウエブ広告やSNSの運用代行・アクセス解析で企業の成長を支援。
中小企業様の成長をサポートしたい!そんな想いで活動中。元大手求人サイトで培った経験と実績を活かし、伴走型で企業支援します。