SNS採用アカウントでよく見かけるのが、新入社員の紹介コンテンツです。来年卒業する就活生や、同年代の第二新卒に向けて、「なぜこの会社を選んだのか」「どんな思いで働いているか」を語ってもらい、就活生に追体験してもらう──そんな構成が定番です。
彼らのフレッシュな表情や前向きな姿勢が伝われば、「この会社、いいな」と感じて、インターンや説明会に足を運んでくれるかもしれません。いわば“共感”を軸にしたアプローチです。
しかし、よく考えてみると不思議です。SNS採用コンテンツには、1〜3年目の若手社員が頻繁に登場し、4年目以降の中堅、特に10年以上勤務しているベテラン社員の姿はあまり見かけません。
なぜでしょうか?
私の仮説としては、採用担当者や制作側が「共感」を重視するあまり、“リアルすぎる現実”を避けているのかもしれません。4年目以降になると、成果に悩んだり、組織の課題とぶつかったり、キャリアに迷いが生まれやすくなります。そうしたリアルな話を出すと、ネガティブな印象を与えるのではと敬遠してしまっているのかもしれません。
葛藤や試行錯誤しながら仕事をして成果を地道に積み上げていく、これは“キャリアの本質”ではないでしょうか。
入社してから3年目までは、研修やOJT、先輩の支援を受けながら着実に成長していくフェーズです。しかし、4年目以降になると自立したプレイヤーとして、社内外の関係者と協力や連携、時には交渉しながら成果を上げてきます。責任の範囲と大きさがプレッシャーにとなり、ミスもあれば、スランプに陥ることもあります。他にも新規事業の苦労、組織変更の混乱、顧客に競合を比較されサービスのカスタマイズ…。色んな苦労や理不尽にもまれながら、会社に貢献し続ける人がいます。
そうした人々のキャリアには、物語があります。
もし、勤続10年以上の社員が、これまでの苦労や転機、乗り越えた体験を語ってくれるコンテンツがあったとしたら──。就職活動中の学生たちは「ここには頼れる人がいる」、「この人のようになりたい。そう思い、よりリアルで具体的なキャリアパスを想像できるのではないでしょうか。
勤続10年。たったそれだけの肩書きでも、実際には複数の転機や挑戦をくぐり抜けた証拠です。多くの求職者は「長く働ける会社かどうか」、「信頼できる人がいるか」を重視しています。勤続10年のベテランがインタビューや動画で会社説明、職場と仕事の内容、やりがい、苦労や辛い事となどを語れば、求職者に十分伝わると思います。
企業のリソースが限られる中、早期に採用活動を行い、質の高い母集団を形成するには、他社と異なる魅力の伝え方が必要です。その一つが「社内にいるベテラン社員の魅力再発見」ではないでしょうか。中堅・ベテラン社員のキャリアの語りは、まさに“信頼と未来”を示すリアルなモデルケース。若手の熱量と合わせて、社内の多様なキャリアを見せることが、今後の採用ブランディングにおいて重要になってくるはずです。
プロフィール
フリーのウェブマーケティングディレクター
愛知県一宮市に在住。ウエブ広告やSNSの運用代行・アクセス解析で企業の成長を支援。
中小企業様の成長をサポートしたい!そんな想いで活動中。元大手求人サイトで培った経験と実績を活かし、伴走型で企業支援します。