2023年秋季講座 第11回フランス文学講座
フランス文学に描かれた「戦争」~両大戦をめぐって

井上直子先生からご提供いただいた「パワーポイント資料」を以下に掲載しますのでご参照ください。

第1回講座
『チボー家の人々』

 「フランス文学に描かれた『戦争』―両大戦をめぐって」をテーマとする第11回フランス文学講座(講師:井上直子・大阪教育大学教授)が10月27日、51名の受講生をお迎えして、ホテルプリムローズ大阪3階の高砂の間で開講しました。

1回目は「マルタン・デュ・ガール『チボー家の人々』」と題し、第一次世界大戦を扱った『一九一四夏』と『エピローグ』を中心に、開戦前後の登場人物のふるまいを17の引用文に沿って読み解いていただきました。併せて、第一次世界大戦のヨーロッパの情勢がどのように描かれているかについてもお話しいただきました。

なお、秋季講座の受講生は56名、うち3割が新規の受講生です。井上先生には、レジュメとスライド資料、多方面にわたる多彩なエピソードを交えてお話しいただき、受講生の皆さんもフランス文学講座を楽しんでいただいたようでした。

第2回講座
プルースト『失われた時を求めて』

  秋季フランス文学講座の第2回講座が11月24日、「プルースト『失われた時を求めて』」をテーマに開かれました。

 井上先生には、最終巻「見出された時」を元に、タンソンヴィルの意味、大戦下のパリ、ゲルマント大公妃邸における無意志的記憶と「私」の美学のつながり、「私」の美学と戦争描写のつながり等について、読み解いていただきました。

 講座の中では、先生自筆の絵や、ネットにアップされている水中花の動画、フランスの地図などの資料をお示しいただきながら、プルーストの一見難しそうに見える作品を分かりやすく楽しくお話しいただき、時折り教室内に笑い声も聞こえる楽しい講座になりました。

第3回講座
コレット『シェリ』『シェリの最後』

  年も押し詰まった12月22日、秋季フランス文学講座の第3回講座が「コレット『シェリ』『シェリの最後』をテーマに開かれました。

 井上先生からは、作品のテーマについて、主人公レアが自身の「老い」にいかに向き合い、恋人シェリがそれをどのように受け取っているか。社会が戦争によってどのように変化したのか、戦争から戻ったシェリがそれをどのように眺めるのか、についてお示しいただきながら、自由奔放に生きつつもレジオンドヌール勲章を二度も受けたコレットの作品について読み解いていただきました。

 年末の慌ただしいなかにも関わらず9割に迫る出席率となったこの日の講座では、早くも2024年度春季短期講座のテーマ「フランス文学が描く”お金と暮らし”」についても触れていただき、受講生の皆さんの関心の高さが伺える講座となりました。

第4回講座
サガン『逃げ道』

    秋季フランス文学講座の第4回講座が1月26日、サガンの「逃げ道」をテーマに開かれました。

 フランソワーズ・サガンの生涯、作品「逃げ道」のあらすじ、当時のフランスの時代状況をご紹介いただいたあと、22の引用文をもとに作品を読み解いていただきました。井上先生からは時々「皆さんどうですか」と作品の世界に入り込める優しい声がけがあるなど、受講生の皆さんとの和やかで内容の濃いやり取りの中で進みました。

 この日は、刷り上がったばかりの2024年度秋季短期講座のパンフレットとプレ講座「西洋美術講座」のチラシも配付されました。春に向けて学びの計画を考える受講生が目立ちました。

第5回講座
デュラス『苦悩』

   秋季フランス文学講座の第5回講座が3月1日、デュラスの「苦悩」をテーマに開かれました。

 井上先生には、マルグリット・デュラスの生涯や当時の時代状況についてご紹介いただいたあと、ナチスの強制収容所にとらえられた夫を待つ「苦悩」、帰ってきた夫を見る「苦悩」、戦争に対する「苦悩」を、レジスタンス運動が起こった当時の戦況とデュラスの苦悩を追いながら読み解いていただきました。講座の初めには映画化された本作(邦題「あなたはまだ帰ってこない」)の予告編をネットを繋いで見せていただくなど、シニアの皆さんにも分かりやすい講座でした。

 春季短期講座の受講申込の受付が始まって10日、この日も数名の方々からお申し込みをいただき、募集人員を上回りました。

秋季最終講座はサルトルの『嘔吐』

   フランス文学秋季講座の最終講義が3月22日、サルトルの「嘔吐」をテーマに開かれました。


井上先生からは、まず作品を読むポイントとして、①第二次世界大戦と実存主義との関わり②実存主義と現象学、コギト(「我思う、ゆえに我あり」)の関係③小説に見られる二項対立④二つのエピソードーー以上4つの視点が示され、20の引用文を例に「嘔吐」を読み解いていただきました。


講座では、実存と本質など一見難しそうに見える言葉の概念をかみ砕いてご説明いただいたほか、9枚にわたる「日記の日付とできごと」や写真資料をふんだんに使ったスライドをお示しになり、受講生の皆さんも興味津々。時には笑い声すら漏れ聞こえる楽しい最終講座となりました。


この日で秋季講座は終わり、いよいよ来月からは春季講座「フランス文学が描く『お金と暮らし』」がスタートします。乞うご期待。