広島大学 ハラスメント相談室 准教授
北仲 千里
一部の大学では、「性の多様性ガイドライン」「SOGIポリシー」などの導入がされていたりしますが、他方で、大学の中でハラスメントが起きることもあり、それらの対策もあります。どちらも、大学によって、その取り組みはまちまちです。それから、ハラスメント対策についての、多くの人のイメージと、被害者支援の実情のずれ、というものもあると思います。この分科会では、次の二つの点から、お話をし、ディスカッションをしてみたいと思います。
(1)大学のSOGI施策の進展度
①全国の大学のSOGI施策の進展状況や、大学教員の認識について、私が参加する研究グループで調査した結果から
②私がこうした施策づくりにかかわった時に、実際にどんなことが大切にされたり、難しかったりしたのか
(2)大学のハラスメント問題やその対策と、実際にどんな対処法があるのか
(そもそも社会の色々なところで、ハラスメント問題の相談支援はどうあるべきなのか)
北仲 千里(きたなか ちさと)
現職 広島大学ハラスメント相談室 准教授 (ハラスメント対応の専任相談員)
専門 社会学 とくにジェンダー論
1996年頃より 大学院在学中、大学でのセクシュアル・ハラスメント問題に関わり、キャンパス・セクシュアル・ハラスメント全国ネットワーク結成(1997年)に関わる。
2000年より 名古屋でのDVや性暴力・セクシュアル・ハラスメントなどの被害者支援を行うNPO設立に参加。大学での非常勤講師をしながら、DVシェルターでの被害者支援や、セクシュアル・ハラスメント、ストーカー事件の相談や裁判支援などを行う。
2007年4月より 広島大学ハラスメント相談室 准教授。
同時に現在 NPO法人 全国女性シェルターネット共同代表
NPO法人 性暴力被害者サポートひろしま代表理事
主な著作
『アカデミック・ハラスメントの解決』寿郎社 横山美栄子との共著2017年8月
中京大学「社会科学研究」, 41巻, 2号, pp. 181-230, 2021.3.31 (共著者:風間孝・藤原直子・林夏生・釜野さおり)
『脱セクシュアル・ハラスメント宣言 法制度と社会環境を変えるために』かもがわ出版 2021年3月 (「大学でのセクシュアル・ハラスメント」の項目を執筆)角田由紀子・伊藤和子編著
「断片化されたままの日本のドメスティック・バイオレンス被害者支援 ー女性支援法は現場をどう変えるのか」『ジェンダー法研究』第10号 2023年12月 信山社
この分科会では、北仲さんより、
パート1 大学のSOGI施策
パート2 ハラスメント対策
に分けて、広島大学での施策策定の過程や、全国の大学に行った調査の結果を交えながら、大学での、SOGIに係わる施策の実際と、ハラスメントがあった場合、どのような対応が可能かといった具体的なお話をしていただきました。
また、質疑応答では多くの質問にも丁寧にお答えいただきました。
さらに、交流会には北仲さんもご参加いただき、多くの交流が行われました。
北仲千里さん
分科会では、様々な角度からご質問をいただいて、私自身も励まされました。大学のSOGI施策はまだ始まったばかりで、実態や効果はまだわからないことが多いです。
この模索のプロセスを広く多くの人と注目し少しでもよいものにしていけたらと思っています。
自分も大学や短大に在籍経験があり、また大学と関連する法人で勤務していたこともあり、大学組織にお世話になる期間が長くありました。国立大にも在籍しましたが今回紹介された各大学の取り組みが始まった時期よりも前のことであり、当時自分のアイデンティティに気づいていたとして相談自体を考えただろうかと思うとやはり疑問があります。大学院や通信での在籍については今も考えているので、今回お話していただいた内容は自分には過ぎたことではない当事者性を感じる部分もあります。理解増進法の効果がどれほどあったのかという話もありましたが、やはり法的に仕組みの拡充がされていかれてほしいとおもいます。
大学で行われているSOGIのガイドラインについて、歴史的な経緯とSOGIハラスメント対策の現場での現在の立ち位置を知ることができ、会に参加して良かったと思った。
いま、大学に籍はないが、時々、授業の中でお話をしてくださいと言われ、多くは1回90分の枠で授業をすることがあり、自分に係わる可能性がある問題として、受講しました。
また、現在進行形の問題としては、友人が登壇する授業で、大きな人権侵害の事象が発生して、大学当局に対応を求めたが、大学が問題の重大性を把握せず、十分な対応がなされず、友人がとてもしんどい思いをしています。
大学の組織の在り方などをお聞きしましたが、有効性のある組織になっているか? 対応する担当者の人権意識、さらには、学長など責任ある立場のある方の人権意識が、問題を把握し、解決していくためには重要なのでは、と思っています。
講座、Q&Aを通じて、北仲さんのお話は、とても分かりやすく、大学という組織の特徴や、困ったことが起きたときにどのように行動したらいいかを、明確に教えていただきました。
まだまだ、すべての大学で十分な取り組みがなされていないことも分かりましたので、わたしたちも、必要に応じて声を上げていきたいと思います。
ありがとうございました。