蚕糸学会での企画・学生発表賞
・日本蚕糸学会本大会で、学生会員が筆頭で発表を行う一般講演について、審査員による評価を行い、優秀な発表を表彰します。
第95回蚕糸学会本大会・学生発表賞(2025年3月・受賞者4名)
最優秀学生発表賞
受賞者:石田 響子
所属:東京大学大学院新領域創成科学研究科
演題タイトル:マイマイガ雄化遺伝子LdMascのW染色体パラログは雌性決定に関与する
受賞者インサイト:
この度は最優秀学生発表賞をいただくことができ、大変光栄に思います。今回の受賞は、ここまで指導してくださった先生、基礎研究を積み上げてくださった先輩方、そして共著者の皆様のお力添えがなければ成し得なかったことです。この場を借りて心より感謝申し上げます。
今回の発表では、マイマイガにおける第二の雌性決定遺伝子の発見と雑種の性決定への影響について報告しました。マイマイガの性決定の分子メカニズムはまだまだ未解明な点が多く、この魅力的な研究テーマに惹かれて研究を始めてから早一年が経ちました。初めての実験や飼育に苦戦しながらも、大きく成長できた一年になったと思います。一方で、発表準備にあまり時間をかけられなかったこと、研究背景を省略しすぎて聴衆の皆様に不親切な発表になってしまったことなど、反省も多い学会となりました。皆様からいただいたアドバイスを来年以降に生かしていければと思っています。
蚕糸学会への参加は今回が初めてで知り合いも少なく、緊張しながら臨んだのですが、発表をきっかけに声をかけてくださる方が多く、とても励みになりました。これも、素晴らしい発表の場を設けてくださった運営委員の皆様、審査員の皆様、そして当日足を運んでくださった方々のおかげです。本当にありがとうございました。引き続き、ご指導ご助力の程、どうぞよろしくお願いいたします。
優秀学生発表賞
受賞者:室智大
所属:東京大学大学院農学生命科学研究科
演題タイトル:ノメイガ類におけるボルバキア由来オス殺し因子Oscar
受賞者インサイト:
この度は、優秀学生発表賞をいただくことができて大変光栄です。今回は、自身が長く取り組んでいる、ノメイガ類昆虫と共生微生物ボルバキアに関するテーマで発表いたしました。共同研究者の皆様のご助力があってこそ発展できたテーマで、このような場で発表できたことを嬉しく思います。昨年は脇道にそれた別テーマで発表したということもあり、「腹毛の人」で終わらずに「ボルバキアの人」として印象を残し直せていたとしたら望外の喜びです。
今年の学生発表賞対象講演では、他のセッションと被らない時間帯で来場者全員に発表を聴いていただけるようスケジューリングしていただいた上、コメントシートの形で多くの方々から発表に対するメッセージを頂戴しました。対面参加の学会発表だと、発表に対するレスポンスを得る機会は案外限られるという印象も持っていましたが、コメントシートを通して、多くの方に講演を聴いていただけたとよく実感することができました。学生として参加する最後の大会でこのようなとても恵まれた機会を享受でき、ありがたい限りです。このような場を設けていただいた、企画・運営していただいた若手の会の皆様、大会事務局の皆様、審査員の皆様に心より感謝申し上げます。学生目線のますます充実した学生発表賞の企画が今後もきっと展開されると思うので、やる気のある学生のみなさんにぜひチャレンジしてほしいなと思います。
受賞者:長尾百華
所属:茨城大学大学院理工学研究科
演題タイトル:分散型動原体をもつホソヘリカメムシにおける動原体と染色体の時空間的解析
受賞者インサイト:
この度は、学生発表賞を頂戴し、大変光栄に思います。
私はカメムシを用いて動原体の研究をしており、本学会ではその成果について発表させていただきました。発表では多くの方が聞きなじみがない「分散型動原体」について、なぜ研究をしているか、この研究の面白さを伝えるために、背景から結果までを丁寧かつ端的に発表することを意識して何度も発表練習をしました。また、本研究を進める中で、染色体構造が他のカメムシでも保存されているか調べるために、植物生態学の先生に場所を聞いてマルカメムシの採集も行ったことは印象的な思い出のひとつです。研究室の飼育系統だけでなく、自分で採集した虫を使用した実験でも染色体構造を観察できた時は大変うれしかったです。
実験が順調に進まないときは、落胆することもありました。それでも、研究を続けられたのは、熱心にご指導してくださった先生や、毎日一緒に研究に取り組んだ研究室の同級生のおかげであり、今回の受賞はその協力があってこそだと思っております。
最後になりましたが、このような発表の場を準備してくださった蚕糸学会運営の先生方と蚕糸学会若手の会の先生方、審査をしてくださった先生方に感謝申し上げます。
第94回蚕糸学会本大会・学生発表賞(2024年3月・受賞者4名)
最優秀学生発表賞
受賞者:小杉海斗
所属:弘前大学農学生命科学研究科
演題タイトル:カイコ終齢致死変異体の表現型は前胸腺の発育阻害により誘導される
受賞者インサイト:
この度は学生発表賞を賜り大変光栄に感じています。これまでに指導していただきました先生方や研究室の方々に深く感謝申し上げます。今回の受賞を経て、より一層研究に対するモチベーションが高まりました。
今回受賞の対象となった発表は「カイコ終齢致死変異体」の時期特異的な致死の原因を検証した研究です。この変異体は、蛹変態せず終齢期で死亡する突然変異体系統であり、この致死の機構を明らかにすることで蛹変態に関する新たなメカニズムの発見に貢献すると考えています。
本発表を行うにあたっては、1か月以上前から準備を重ね、中でも発表スライド作成に力を入れました。スライドは、発表要旨とは異なり読むというよりも「見る」資料であることを心がけ、見やすいスライドを作成するのに多くの時間を費やしました。本番は手が震えるほど緊張しましたが、準備してきた成果を発揮することができこのような賞をいただくことができて本当に嬉しいです。
本学会発表への参加は2回目なのですが対面での参加は初めてだったため、学会の雰囲気を肌で感じることができました。学会では様々なイベントがあり、ランチョンセミナーや懇親会を通して他大学の方々との交流を通して非常に有意義な時間を過ごすことができました。ここで得られた交流がこれからも続いていければと思います。私は4月から社会人として働くことになりますが、今回得られた学びや経験を活かして精一杯頑張りたいと思っています。本当にありがとうございました。
優秀学生発表賞
受賞者:坂上裕喜
所属:名古屋大学大学院生命農学研究科資源昆虫学研究室
演題タイトル:AcMNPV感染カイコ細胞におけるリボソームタンパク質の挙動の調査
受賞者インサイト:
このたびは、学生発表賞優秀賞をいただくことができ、大変光栄に思います。まずは、私の研究を支えてくださった全ての方々に心より感謝申し上げます。特に、研究の進行中に助言や激励をいただいた先生方や研究室の皆様には深く感謝しています。この受賞は、私一人の力では成し得なかった成果であり、研究チーム全体の努力と協力の賜物です。
ここで、発表準備の心得について触れたいと思います。発表の準備は、研究成果を効果的に伝えるための重要なステップであり、いくつかの基本的なポイントを心に留めることが大切だと考えています。まず、発表は論理的で分かりやすい構成が求められます。資料やスライドを用いる際は、情報をシンプルにし、視覚的に支援するものであるべきです。過剰なテキストや複雑なグラフは避け、要点を簡潔に伝えるよう心がけました。さらに、リハーサルの重要性も忘れてはいけません。実際の発表に近い環境でリハーサルを行い、タイミングや話し方、視覚資料の使い方などを確認することで、当日の緊張感を和らげることができました。発表前日に同じ研究室の同級生とお互いの発表を聞き合い練習したことは今でも良い思い出です。リハーサルを通じて、発表の内容がスムーズに伝わるかどうか、必要な修正を加えることができます。最後に、自分自身の準備とメンタルケアも重要です。十分な準備を行うことで自信を持ち、リラックスして発表に臨むことができます。ストレスや緊張感を和らげる方法を見つけ、平常心で発表に臨むことが成功への鍵です。
今回の受賞は私にとって大変嬉しい出来事であり、今後の励みとなります。今後も研究への深い取り組みと発表技術の向上に努め、より一層の成長と挑戦を続けていこうと考えています。引き続きご指導、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。
受賞者:室智大
所属:東京大学農学生命科学研究科
演題タイトル:アワノメイガ類のオス特異的な腹毛形質の遺伝様式
受賞者インサイト:
この度は優秀学生発表賞をいただくことができて大変嬉しく思います。蚕糸学会大会には毎年参加していて、今までノメイガ類昆虫とボルバキアという共生微生物の相互作用に関して発表してきましたが、今回はそれと異なる初めて学会発表を行うテーマで臨みました。アワノメイガ類における腹毛形質の遺伝に着目した本テーマは、研究対象昆虫の飼育を普段行なっている中で、興味の赴くままに脇道にそれて始まったものです。何とは無しにアディショナルな交配区を仕掛けた修士1年冬当時はこの話題で学会発表をすることも想像していませんでしたが、自身としては初の、ようやくの対面開催となった蚕糸学会大会で、その上学生発表賞の審査対象講演としてこのテーマを話せたことを感慨深く思います。
特に今回扱ったテーマはほとんどの聴衆にとって馴染みのないものであるはずなので、発表に際しては、①当該形質等に関する背景情報を(煩雑にならないように)丁寧に説明する、②この研究が今後どのように面白く発展していくかという展望にもしっかり言及する、といった点を踏まえ、分野が大きく異なる方や当該昆虫に馴染みのない方にも研究の位置付けや面白さが伝わることを目指しました。最後になりますが、学生発表賞の企画・運営をしてくださった蚕糸学会若手の会の皆様、審査員を務めてくださった皆様、本研究に関して日頃から議論や他愛もない雑談に付き合っていただいている昆虫遺伝研究室の皆様、共同研究者の皆様に感謝申し上げます。
受賞者:前田麻亜子
所属:北海道大学農学院
演題タイトル:カイコにおける新規バイナリーシステムの探索
受賞者インサイト:
初めて口頭で研究発表をさせていただきました。12分という短い持ち時間の中で自分の研究に興味を持ってもらえるように、発表のストーリーやスライドの構成にこだわって発表に臨みました。
発表練習は先生方だけでなくラボのメンバーにも何度も付き合っていただき、たくさんアドバイスをいただきました。最終的に完成した発表スライドは最初に作ったものからほとんど別物になっていて、自分だけではここまでブラッシュアップできなかったと思います。今回の受賞はラボメンバーの協力があってのものだと感じており、とても感謝しています。
発表を通して自分の研究の立ち位置や意義について改めて考え直すことができたこと、学会中に様々な方からご意見をいただけたことは今後研究を進めていく上で非常に有意義だったと思います。発表前は準備も時間がかかるし、何日も前から緊張するし…と大変だったのですが挑戦してみて良かったです。