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第1弾 『「合う」のメカニズムを科学する : 影響し合う「あなた」と「わたし」の心理学』
2023年12月26日刊行
阪口幸駿、富田健太(編) ミネルヴァ書房
A5 272ページ
価格 2,700円+税
ISBN978-4-623-09580-3
コミュニケーション方法の変化、多様性の時代への突入等、ダイナミックな社会変容の最中にある現代は、多様な他者との合う/合わないに端を発した社会課題を抱えている。本書では、人間関係において重要な「合う」「合わさる」「合わせる」という現象に注目し、私たちが行うコミュニケーションの裏側に隠された心理メカニズムを、日常で出会う出来事を取り上げながらわかりやすく解説する。現代社会を生きるヒントを提供する一冊。
【目次】
はじめに――「合う」のメカニズムを解剖する
第Ⅰ部 相性の合う/合わないあなたとわたし
第1章 あの人とは息が合うのに,あの人とは合わないのはなんで?(富田健太)
1 はじめに
2 コミュニケーションにはリズムがある
3 コミュニケーションにはリーダー・フォロワー役割がある
4 対人以外とのコミュニケーション場面ではみんながリーダーになりたがる
第2章 あの人とは脳が合うのに,あの人とは合わないのはなんで?(栗原勇人)
1 はじめに
2 あなたとわたしの脳が合わさる時
3 誰と脳が合わさるのか
4 ヒト以外の動物同士でも脳が合わさるか
5 「脳が合わさる/合わさらない」研究のさらなる発展
第Ⅱ部 互いに合わせ合うあなたとわたし
第3章 まねし合うことから始まるコミュニケーション(石塚祐香)
1 はじめに
2 わたしがあなたをまねする
3 わたしがあなたにまねされる
4 あなたとわたしがまねし合う
5 まねは互いにわかり合うための橋渡し
第4章 表情を交わし合うコミュニケーション(緒方万里子)
1 はじめに
2 表情は大事なコミュニケーションの1つ
3 表情ってどんな種類があるんだろう
4 感情はどうやって生じるのだろう
5 表情は何のためにあるのだろう
第5章 教え合いで発展するコミュニケーション(石塚祐香)
1 はじめに
2 教える行動の獲得と活用
3 教え合いを学校教育の中に取り入れる
4 教え合いをツールとして活用する
第6章 モノに想いを託して伝えるコミュニケーション(阪口幸駿)
1 はじめに
2 モノに想いを託すことって,実は難しい
3 託された想いを汲み取ることって,もっと難しい
4 そして想いは,あなたとわたしの共同のものとなる
第7章 文化のバトンを受け継ぐコミュニケーション(中田星矢)
1 はじめに
2 先人の知恵を受け継ぐことが社会の発展の基盤となる
3 合わせないことの効用
4 「合わせる」も「合わせない」も必要
第Ⅲ部 自然に合わさるあなたとわたし
第8章 あなたが悲しいと,わたしも悲しい(齋藤菜月)
1 はじめに
2 「あなたとともに感じる」の不思議
3 どうやってともに感じる?
4 共感はよいことだ! ……本当に?
5 あなたが悲しいとわたしも悲しい。では,あなたが嬉しいとわたしも嬉しい?
6 ともに感じるって何だろう
第9章 あなたが笑えば,わたしも笑う(谷本 彩)
1 はじめに
2 どんな時に,どんなふうにヒトは笑うの?
3 動物も笑う!?
4 誰かと一緒に笑う時に脳の中で起こっていること
5 人間らしく笑う
第10章 あなたの感覚を,わたしも感じる(緒方万里子)
1 はじめに
2 身体の感覚から感情が生まれる?
3 身体の内側で感情を判断している?
4 わたしたちは身体でまず理解し合っている
第11章 あなたが踊れば,わたしも踊る(富田健太)
1 はじめに
2 ダンス・歌唱をすることが集団の結束を高めてきた?
3 イヌは踊らないけど,ヒトは踊る?
4 ヒトのダンスの特徴とは?
第12章 あなたの規則に,わたしも従う(吉川正人)
1 はじめに
2 あなたを見て,規則を見つける
3 わたしたちは規則に従う
4 あなたとわたしで規則をつくる
5 規則のヒト「ホモ・レギュラリス」
第Ⅳ部 合わさって影響を受けるあなたとわたし
第13章 あなたといると,引っ張られてしまうわたし(坂田千文)
1 はじめに
2 共同知覚
3 共同記憶効果
4 気にする必要がないのに引っ張られてしまう
第14章 あなたと目が合うと,ちゃんとしてしまうわたし(小林佳世子)
1 はじめに
2 見られていると,気になって……
3 ニセモノの目でも……?
4 でもやっぱり,ニセモノの目には効果がない?
第15章 合わせたいけれど,ちょっとだけ特別でもいたいわたし(小林佳世子)
1 はじめに
2 合わせてしまうヒトの心
3 でも,特別でもいたいわたし
4 自信過剰なわたしたち
5 生存と繁殖の戦略――適応合理性
第16章 あなたと協調すると,絆を感じるわたし(栗原勇人)
1 はじめに
2 相手と協調するとはどういうことか
3 誰と協調する/できるのか
4 相手と協調すると絆が深まる
第17章 あなたとともに,愛を誓うわたし 阪口幸駿
1 はじめに
2 愛とは何か?
3 共同コミットメントの魔力
4 交感的コミュニケーションの魔力
5 真実の愛
おわりに――相互理解と相互尊重のはざまで
引用・参考文献一覧
第2弾 検討中
番外編 『言語進化学の未来を共創する』
2022年10月刊行
岡ノ谷一夫・藤田耕司(編) ひつじ書房
A5 326ページ
価格 4,200円+税
ISBN978-4-8234-1161-8
階層性と意図共有を言語進化の2つの柱として、言語学および脳科学・生物学など各関連分野から未来の言語進化学への提言を行う。本書は、文科省新学術領域研究『共創言語進化』を進める中で組織された「若手の会」メンバーにより企画され、若手による意欲的な論考12編と、領域計画班代表5名によるコメント論文、そして自由闊達な座談会からなる。2022年9月に金沢で開催の国際学会『言語進化合同会議』(JCoLE)開催記念出版。
【目次】
まえがき
「若手の会」について
第1章 言語進化の2つの柱 岡ノ谷 一夫
1. 学術的背景
2. 統合の方向性
3. 作業定義
第Ⅰ部 階層性
第2章 生成文法にとっての言語進化 松本 大貴
1. 生成文法の展開
2. 極小主義と言語進化
3. 言語の進化=併合の進化か
4. 結びにかえて
第3章 言語から考える人間の本性と在り方 赤池 敬
1. はじめに
2. 二重過程理論
3. 言語と理性の働き
4. 人間と人工物の融合
5. おわりに
第4章 自然数は階層構造に依存するか 中井 智也
1. カウンティング階層構造依存仮説
2. ヒトにおける複数の数量把握能力
3. カウンティング能力と言語能力の対比
4. まとめと展望
第5章 階層構造の外在化における言語外的特徴 岡久 太郎
-統語的曖昧性を解消するジェスチャー
1. 言語の階層性と線条性から生じる曖昧性
2. 発話の統語構造とジェスチャーに関する先行研究
3. 統語的曖昧性を持つ発話に共起するジェスチャーの内容に関する実験的調査
4. 調査結果の分析と考察
5. 原始的ジェスチャーとマルチモーダル性を持ったジェスチャー
第6章 言語神経科学のこれまでとこれから 松本 大貴・中井 智也
1. 言語進化研究にとってなぜ神経基盤の解明が重要なのか
2. 乱立する言語脳地図と考えられるその要因
3. これからの言語神経科学へ向けて
第7部 第Ⅰ部コメント ヒトらしい心の探究における階層性 橋本 敬
1. 生成文法にとっての言語進化(松本大貴)
2. 言語から考える人間の本性と在り方(赤池敬)
3. 自然数は階層構造に依存するか(中井智也)
4. 階層構造の外在化における言語外的特徴─統語的曖昧性を解消するジェスチャー(岡久太郎)
5. 言語神経科学のこれまでとこれから(松本大貴・中井智也)
6. おわりに
第Ⅱ部 意図共有
第8章 動物の情動発声と意図共有の萌芽 齋藤 優実
1. 意図共有:ミラーシステムによる神経メカニズムの理解と共感との関連
2. ラットの超音波発声
3. ラットUSVと共感の研究
4. 総括
第9章 終助詞の発話意図明示機能 田中 悠介
-「よ」と「ね」を手がかりとして
1. はじめに
2. 終助詞の機能
3. 言語進化と終助詞
4. おわりに
第10章 ヒトおよび動物の同期・同調から見る意図共有 藤原 正幸・近藤 聡太郎・阪口 幸駿
1. 同期・同調から見る意図共有への接点
2. ヒトおよび動物の同期・同調から意図共有への道筋
3. 動物における同期・同調行動
4. ヒトにおける同期・同調
5. 音楽的同期と社会的協調
6. まとめ
第11章 第Ⅱ部コメント ヒトによる意図共有とは何か? 小林 春美
1. 動物の情動発声と意図共有の萌芽(齋藤優実)
2. 終助詞の発話意図明示機能─「よ」と「ね」を手がかりとして(田中悠介)
3. ヒトおよび動物の同期・同調から見る意図共有(藤原正幸・近藤聡太郎・阪口幸駿)
4. 意図共有とは何か?
5. おわりに
第Ⅲ部 階層性と意図共有の接点
第12章 外在から内在へ 米納 弘渡
-階層性と意図共有の発生順序に関する考察
1. 階層性と意図共有の定義
2. 進化論的な観点からの外在/内在の区別
3. 階層性と意図共有の発生順序に関する考察
4. まとめ
第13章 発声の階層構造を考える 堀川 遼太
1. ヒトの言語音の階層構造
2. 鳥類の歌の階層構造
3. ヒトと鳥類の階層構造の比較
4. 結語
第14章 階層性と意図共有が出会うところ 阪口 幸駿
-ヒトのヒトらしさの根源
1. 階層性、意図共有、それから統合戦略
2. 階層性と意図共有の統合を叶える認知モデル
3. 汎用併合を実現する認知基盤
4. 今後の言語進化研究に向けて
第15章 仲良くなければ生き残れない村と家畜たち 徳増 雄大・外谷 弦太
1. 脆弱なヒトビトの強靭な環境構築
2. あなたの家畜化はどこから?
3. まとめ:楽しい言語進化学
第16章 第Ⅲ部コメント 階層性と意図共有の進化史 井原 泰雄
1. 外在から内在へ─階層性と意図共有の発生順序に関する考察(米納弘渡)
2. 発声の階層構造を考える(堀川遼太)
3. 階層性と意図共有が出会うところ-ヒトのヒトらしさの根源(阪口幸駿)
4. 仲良くなければ生き残れない村と家畜たち(徳増雄大・外谷弦太)
5. おわりに
第17章 階層性と意図共有を繋ぐ 藤田 耕司
1. 思考とコミュニケーション
2. 階層構造の進化と認知発達
3. 多重注意による統合の試み
4. (自己)家畜化の関与はあるか:結びに代えて
巻末付録 『言語進化学の未来を共創する』座談会
索引