その日の夢にシンタ先生は現れなかった。 まるでダイヤルをかちりと切り替えたように、いつもとは見える景色が違った。
漆黒。 黒い液体が静かにうねっていて、しばらくしてそれが海だと気が付いた。 暗い海の上に、上半身だけ浮いた少年が浮かんでいる。 彼は海の上を流されているのか、それとも岸へたどり着こうとしているのかわからない。 何か木片のようなものにしがみついて、息も絶え絶えに絶え間なく揺らめく赤い光を見ている。
赤い光。 それは穏やかに海面に映ってはいたが、その先――
前へ 次へ