その4、日本語の夜明け② ~1978年-2、映画『キタキツネ物語』サウンドトラック~
雑学『ゴダイゴ』英語日本語概論
CM Song Graffitiが発売になった1978年の夏、彼らは次なる重要なアルバムを発表します。
東宝東和創立50周年記念作品、映画『キタキツネ物語』のサウンドトラック盤です。
1978年
7月1日 シングル『赤い狩人』発売
7月10日 アルバム『キタキツネ物語』発売
映画の公開が7月15日ですから、映画制作サイドとしてサントラにも同じく力を入れていたことがうかがえます。
このアルバムの特徴は、映画のサウンドトラック盤でありながら、アルバムだけでも一つのストーリーを物語る、コンセプチュアルな作りになっているところです。
演奏はほぼ全曲ゴダイゴでありながら、ボーカルを担当した人物がタケ以外にもいるため、ゴダイゴのアルバムとしての発売ではありません。
しかしアルバム内にタケボーカルの曲が4曲も存在しており、2曲を除くほぼ全曲の作曲もしている。演奏もほとんどの曲をゴダイゴが担当していて、かなりゴダイゴ感の強いアルバムです。
ボーカル:
町田義人(A-1, 2, 6, B-3, 5, 6)
牧ミユキ(A-4, B-4)*映画は朱里エイコ
タケカワ・ユキヒデ(A-3, 5, 7, B-1)
なお、B-2はインストゥルメンタル、B-6とA-1は同一曲同一バージョンです。
この映画は日本初の動物もの大作ドキュメンタリー映画でした。
この映画がヒットして、この後もこの類の映画がたくさん作られますが、ここまで動物しか出てこないコンセプトで作られたものは、そうとう近年になるまではなかなかなかったと思います。
登場するのはキタキツネで、セリフをしゃべらないので、基本的にナレーションで進行していくのですが、さすがにナレーションだけでは厳しいということだったのか、ミュージカルのように歌が使われます。
つまり、歌もセリフの役割を兼ねています。映画に登場する主人公キタキツネの歌、その相手役のヒロインキタキツネの歌、その子供たちキタキツネの歌。まるでそれぞれが歌っているかのように、歌詞が書かれています。画面に映るキタキツネたちに、より感情移入できるように作られています。
日本語詞を作られた三村順一氏はこの映画の助監督さん。元になる英語詞はゴダイゴの詞をずっと担当し、のちに舞台の世界でも活躍される奈良橋陽子さんで、お二人のディスカッションによって、映画のストーリーをメロディアスに語る素晴らしい詞が作られています。
歌詞カードも映画の各シーンが散りばめられた8ページの写真集になっていて、各歌詞ごとにどんな場面のものかの解説も載っています。実際自分もこのアルバムを聴いたのは発売からずいぶん経ってからで、映画を観ることはそのかなり後までなかったのですが、まるで一本の映画を観るかのように聴くことのできる秀逸な作りになっています。この辺り、『いろはの“い”』や『ハウス』のサウンドトラック盤とは違う、むしろ、彼らのアルバム『新創世記』や『デッドエンド』に近いものがあると感じます。
そしてここで、もう一つ、重要な転機が訪れます。
映画は日本制作で日本公開なので、ナレーションなどは当然日本語。歌詞も全編日本語、です。
ということで、子供たちの歌をボーカル担当したタケカワ・ユキヒデ氏、初の日本語歌唱レコード化となります。
これがもう、たまらなく素晴らしいです。
これはやはり、あとのお二人(三人)とのボーカルバランスが絶妙なんです。
主役ボーカルの町田義人さん、ヒロインボーカルの牧ミユキさん及び朱里エイコさん、それぞれ大変魅力的なボーカリストで、大人の歌声を情感たっぷりに聴かせてくれます。
そこに、タケの明るい歌声。まさに子供たちの天真爛漫な雰囲気、無邪気さ、純粋さを、ストレートに表現していて爽快です。
ゴダイゴとしても、いきなり正面切って日本語歌います、じゃなかったので、ほんとに絶妙にいいタイミングだったと感じます。
これで、彼のメロディーとゴダイゴのサウンドがあれば、日本語だとか英語だとか関係なく通用するということが、このアルバムで分かります。
しかも、例えボーカリストが変わっても、タケのメロディーとミッキーのアレンジ、ゴダイゴの演奏があればそこにマジックが生まれる。それほどタケのメロディーメーカーとしての力は絶大で、それをゴダイゴは最大限に引き出しているということが、このアルバムから伝わってきます。
歌詞カードにタケ本人の手記が載ってもいるのですが、アルバム中10曲と、未収録曲1曲の全11曲、ここまで多くの曲を一度に作ったのは初めてだったとのこと。
年明けに発売された"CM Song Graffiti"は、これまでに作った曲を集めたものでした。ゴダイゴデビュー当時や、ゴダイゴ以前に作られたものもありましたから、一枚にまとめられたとは言っても今回とはかなり違ったと思います。前年までに『いろはの“い”』や『ハウス』でサウンドトラック制作を経験していたミッキーの存在は大きかったと思います。
そのミッキーも同時期これとは別に、2年前から関わっているドラマ『男たちの旅路』のサウンドトラックアルバムを制作、なんと同じ月の7月25日に発売されています。ドラマの時のスコアを使っての再録音を行ったものらしく、タケ以外のゴダイゴメンバーも演奏に参加していて、なんと36時間で一気にレコーディングしたものだとのこと。しかもこんな時期に。驚異的すぎます。
『キタキツネ物語』の方も、映画とアルバムは女性ボーカリストが別だったり、各曲ミックスが違ったりと、同時進行の制作はなかなか大変だったんじゃないかと思います。特に主題歌となる『赤い狩人』に関しては、映画で使われたバージョンとシングル/アルバムに使われたバージョンは同じではなく、アルバム冒頭の、あの印象的な浅野氏のエレキによるイントロ部分は、映画では使われていません。映画がキタキツネ主体でドラマチックに描かれているのに対して、アルバムが音楽だけで映画に匹敵するほどドラマチックに聴けるのは、あのイントロの力強さだと感じています。だから、アルバムの最初と最後に、全く同じバージョンだけど、2回入ってる。最後にもう一度入れることで、フレップ(主人公キタキツネ)の物語として始まった映画が、最後にシリカ(成長したフレップの子どもキタキツネ)の物語がまた新たな冬に始まっていくことを物語って、アルバムが終わっていく。アルバムだけで映画を観たような手応えを感じさせてくれます。まさにゴダイゴマジックです。
アルバムも好評を博し、ジャケットのマイナーチェンジも含めての増産が成されます。初版帯の宣伝文句は映画のサントラとしてのものですが、2版帯では"ゴダイゴ"の文字が大きく印刷され、"スーパーグループゴダイゴと町田義人の…"と、ゴダイゴのアルバムとしての宣伝文句に切り替えられています。なおアルバム同様、シングルにも2種類のジャケットが存在するようです。のちにアルバムがCD化された際は2ndジャケットが使用されていますが、ゴダイゴのCDボックスセットや近年の書籍、パンフレットなどの紹介では1stジャケットが多く使われています。
持てる力を結集して作った、傑作サウンドトラックアルバムの完成です。手ごたえを感じるバンドの元に、さらに新たなドラマのサウンドトラック制作の話がやってきます。
1978年10月放映開始、日本テレビ開局25年記念番組、『西遊記』です。