その3、日本語の夜明け① ~1978年、CM Song Graffiti 及びその周辺~
雑学『ゴダイゴ』英語日本語概論
ゴダイゴはもともとミッキーの発想で生まれたバンドだったこともあり、1stアルバム以降のアルバム制作はミッキー主導で行われてきたイメージもあります。
これはミッキーが、ドラマや映画のサントラという、「まとまった音楽作品群」が必要とされるオファーを受けていたからであり、それをまとめてアルバムにしようという流れにしやすかったということも考えられます。
もちろんこの時期、タケもミッキーと別で楽曲制作の依頼を受けていました。多く手掛けたのがCMソング。彼の1stアルバムの爽やかなメロディーラインと美しい英語の発音に耳を奪われた企業やCM制作サイドから、こういう曲をぜひうちに書いてほしいというオファーが殺到。とにかくたくさんの曲を書いたといいます。
これらも演奏ではゴダイゴの出番も多くあり、そうして知らないうちに曲がずいぶんと溜まっていました。
そこで、ここまでのCMソングをまとめて1枚のアルバムにしたらいいんじゃないか、という企画が持ち上がります。
これが彼らのヒットアルバムにして通好みの名盤、"CM Song Graffiti Godiego Super Hits"です。
1978年1月15日発売
この前の年、同じくコロンビアから発表された大瀧詠一さんのアルバム『ナイアガラCMスペシャル 』の成功も、このアルバム制作への大きな要因となったようです。
CM用の曲をひとつの楽曲としてとらえる、という見方は、この頃はまだまだ一般的ではありませんでした。CM曲をシングルにする、またはその逆に、シングルをCM曲に使用してもらう、といったことは、この2枚のアルバムの成功よりかなりあとになって出来上がった図式で、一時代を築きました。
ゴダイゴのこのアルバムの曲も、一つ一つはテレビでの使われ方として彼らの曲だというアピールはありません。画面の下隅にバンド名が表示されるということもありません。しかしその1曲1曲のクオリティーの素晴らしさに対して、さらにここでアルバム用に演奏をやり直すなどして、ロックバンドのアルバムとして申し分のないものが出来上がります。いままで培ってきた楽曲制作、アルバム制作のノウハウがここに集約されるのです。きらびやかな音色、キャッチーなメロディー、美しいハーモニー、ドライブの効いたサウンド。どれをとっても一級品です。これがCMソングの集まりなのか、と、耳を疑うほどです。
そして、ここで別角度からひとつ副産物が生まれます。
それは、ほぼ全ての楽曲のタイトルが英語表記をカタカナにしただけ、になったのです。
考えられる理由は、それぞれがCMソングであるということを主張するため、だと思われます。
ここで曲名として日本語タイトルをつけてしまうと、もともとの曲のイメージが薄れてしまいます。それぞれ、何のCMで使われていたかも歌詞カードには記載されており、そうなると、その商品のイメージとも離れてしまう恐れが出てきます。
ということでここで初めて、全曲カタカナタイトルのアルバムになりました。
こうなると、曲のイメージとタイトルがビタッと一致します。
中には商品名そのままだったり、商品のキャッチコピーなどを反映させたタイトルになっているものもあるので、こうなると余計タイトルをいじりにくいということにもなります。
CM曲が元なので、そこまでわかりにくい、理屈っぽい単語もありません。一番長い"What did you do for tomorrow"にしても、普通に理解できる分かりやすい文章です。
そして実際にアルバムを聴けば、CMソングなのでどこかで聞いたことある曲のオンパレードです。聞いた時も英語で歌われてましたから、何の違和感もありません。驚きと言えば、「え!これ日本人が歌ってたの?!」ということだったでしょう。
そしてついにここで、なんと日本語歌詞をサプライズ登場させます。アルバムの一番最後の曲の、一番最後の1行、最後の最後で。
「♪あかーいシャポーの、あじのーもーとー」
なんとも痛快です!
このあたりの遊び心は、『ナイアガラCMスペシャル 』に通じるものもあるように感じます。
大瀧詠一さんとゴダイゴのメンバーは、特に表立って交流があったようには伝えられていませんが、なんといっても大瀧さんが第1期ナイアガラレーベルとしてコロンビアに所属したのは1975年から。タケソロデビューと同じ年です。日本語ロック派と英語で歌う派の双璧が、この時期同じレコード会社に所属していたことは、なんとも興味深いです。大瀧さんはミッキーの3つ年上です。逆にミッキーのゴールデンカップス加入は、はっぴいえんどデビューの3年前です。
このアルバムは、全13曲中12曲がタケの作曲による作品となりました。ここへきて彼のメロディーメーカーとしての才能にさらに注目が集まります。そして、ゴダイゴというバンドにも、一気にスポットが当たります。
日本語詞(と言ってもキャッチコピーそのままではあります)を入れたこの1曲だけ、作曲はミッキーなのですが、このあたりに彼のアレンジ力、プロデュース力を感じます。最後のダメ押しをここでもってきているわけです。
そして、タケに日本語を歌わせよう作戦の、おごそかなる幕開けといった感じでもあります。
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このアルバムに関連したシングルが、2枚先行して発売されています。
1977年
5月1日 シンフォニカ/ナウ・ユア・デイズ
12月10日 ミラージュのテーマ/水滸伝のテーマ
途中映画『ハウス』関連のシングルを挟みますが、このアルバムに向けての動きも同時進行で行われていたことがうかがえます。
『シンフォニカ/ナウ・ユア・デイズ』の2曲は、当時レコード店などでかけられていた販促用LPに収録されていたものがあります。第6回東京音楽祭世界大会グランプリのマリリン・マックー&ビリー・デイヴィスJR.『ふたりの誓い』を筆頭に、ロッキーのテーマやスティーヴン・ビショップ、ザ・クルセイダース、チャカ・カーン、ポコ等と並んでこのアルバムの最後に2曲ともラインナップされています。(成田賢の歌う『ハウスのふたり』も収録されていました。)
『ミラージュのテーマ』は、アメリカのカレッジフットボールの試合『ミラージュボウル』のテーマソング及び三菱ミラージュのCM曲で、販促用ジャケットのものも作られました。こちらの歌詞カード裏面には、ミラージュのテーマの楽譜も掲載されています。また、B面曲『水滸伝のテーマ』はトミーのボーカルで、1973年放送の日本のテレビドラマ『水滸伝』を1977年イギリスで放映した際、元のテーマ曲を英語詞にしてミッキーがアレンジしたものを使用、めちゃめちゃゴダイゴカラーになってゴダイゴのシングルとしてイギリスでも発売、ヒットしたものです。
アメリカの大規模スポーツイベントのテーマ曲と、イギリス放映ドラマのテーマソング。まさにワールドワイドな2曲のカップリングです。
こうなるときっと、レコード屋さんでは「サントラ」コーナーに置かれることになったんじゃないでしょうか。
2枚のシングルとも、ジャケットにアーティスト写真は使いませんでした。これが、邦楽新譜コーナーや、「か行」に置かれていて、はたして気付いてもらえたか。そのくらい、日本を飛び越えたサウンドと楽曲内容です。
これを日本のバンドのシングルとして認知してもらうには。
やはり、日本語で歌ってもらうしかないんじゃないか。
そんな思いにも駆られるほど、絶品のシングルたちです。