その1、日本語前夜 ~1975年、タケカワユキヒデ・ソロデビュー~
雑学『ゴダイゴ』英語日本語概論
先ほども書きました通り、タケカワさんは英語で曲を作り、歌うロックをカラーとしていますので、彼のソロデビューアルバムは全12曲、全て英語詞で書かれています。
全曲かっこいい。この時すでに、スタイルを確立しちゃってる感じです。
ここで面白いのは、ほぼ全曲、英語タイトルの他に日本語タイトルも付けられてる。
これは、ビートルズやその他、日本でヒットした洋楽のタイトルには、独自の日本語タイトルが付けられていることが多い、というところからきたアイデアだと思います。
ただこれ、ちょっと多いかなあと思います。
ビートルズでも、アルバム内で多くて半分。他はそのままカタカナです。
アルバムタイトルで日本語になっているものは、映画のサントラ的要素が含まれるものになっています。
ジャケットに写るアーティストも見た目日本人風で(実際日本人なので)、アーティスト名もカタカナ表記ではありますが日本人名です(実際日本人なので)。
今でこそアリかなとは思いますが、先を行きすぎちゃってる感じです。
しかもこの日本語タイトルたちが、けっこうかっこいいんですよ。洋楽の日本語タイトルって、「え?」ってなるようなのもあったりするじゃないですか。ここにはそういうものは、無い。逆に洗練されすぎちゃってて、かえって普通に日本人ロックアーティストが出した普通のアルバムと思わせちゃう感じすらあるって思います。帯には"英語で歌うことに抵抗がない"とは書いてあるけど、まさか全曲全編に亘って英語詞しかないアルバムだなんて思ってなかった、みたいなこともあったんじゃないかと。この頃には逆に、いかに日本語で洗練されたロックを作るか、みたいな動きも盛んに行われていて、そこを真っ向から真逆に行ってるアルバムってなるわけです。ちょっと分が悪かった感あるかもしれません。
実際このアルバム、1978年に再発されたとき、アメコミっぽいイラストジャケになって、アーティスト名も"TAKE"ってなってるので、一部で『テイク』という名の外国のバンドだと思われたりしたそうです。
曲としてはそのくらいとびぬけてポップです。バックを演奏するメンバーも今や超レジェンド級のミュージシャンばかりです。
そんな中、数曲参加したミッキー吉野氏。
このアルバムのプロデューサーでもあり、ジョー山中率いるフラワートラベリンバンドの海外進出をサポートもしたジョニー野村氏は、デビュー前のゴールデンカップスのメンバーとも交流があったと言います。その縁から、バークリーから帰ってきたミッキーをこのアルバムの制作に引き寄せました。ここが、現在のゴダイゴの発信地と言えると思います。
このアルバム、それ自体は当時としてはそれほど売れたわけにはいかなかったわけですが、ここに収録された"Happiness"『僕らの幸せ』という曲は、その後ゴダイゴ大ヒット直後の1979年、某ビール会社のCM曲に使われます。日本語詞が付けられ、日本語タイトルも『ハピネス』となり、飛ぶ鳥を落とす勢いと化したゴダイゴの演奏によって再録音され、タケカワ氏のソロシングルとして発売。大ヒットとなります。ファーストアルバムの方も、この曲のみゴダイゴ演奏版ニューバージョンの方に差し替え、改定版の英語詞で収録されて再発。こちらも大ヒットします。
受け手にどうやって伝わるかの違いだけ。本質的には何も変わっていないと言えるこのアルバムの、マイナーチェンジ含めた3度目の再発、4年がかりのリベンジは、なんとも爽快なエピソードです。