好きな色が与えてくれる力

ヘンプとウッドビーズ

好きな色は何ですか?

なぜその色が好きですか?

ずっとその色が1番でしたか?

その色は今そばに有りますか?

あした、その色の服を着ますか?

子供が大学受験で頑張っていた頃、何も頑張れない親は仕方ないので出掛けてみました。

石川県にある松井秀喜さんの記念館だったと思います。駐車場でふと空を見上げると、大きな彩雲が横たわっていたんです。

なんて凄い。

と、思って周りを見ると、意外なことに誰も空など見上げていない。あんなにも大きくて鮮やかな彩雲など滅多に見られるものでもないだろうに、まるで虹色の雲なんか珍しくもないというような顔をして記念館の方へ行ってしまう。記念館から戻ってくる人も、何も気付かないかのように車に乗って行ってしまう。

不思議だな。

彩雲というのもなかなか不思議な物ですが、人々の関心の無い様子を、余所の星にでも来たような気持ちで眺めていました。

きっと私は色への関心やコダワリが強いんです。

例えば青が好きと言っても、思う青色はたった1つの青で、青の仲間ならなんでもいいというわけでもないという具合。服が欲しい、カバンが欲しい、というのではなく、この青の物を何か身に着けたい、とか思って探すのでなかなか大変です。

街は誰かが決めた流行色ばかり。

街で想い通りの色の商品を見つけるのは簡単ではありません。

好きな色が似合う色とは限らない事も知っていました。

でも、ほんの小さな何かでいいから好きな色を身に着けると幸せな気分になれるんです。

なぜそれが好きなの?

と尋ねる人はよく居ます。

わからないです。理由が必要な気もしなかったし。

高校生の頃、赤紫の物が欲しいと思って探し廻った事がありました。通っていた高校に馴染めず、学校を変えたいとまで悩んでいた頃です。親には相手にされず、担任の先生は縁談の最中で忙しかったみたいです。

美術部の友人にオカマの子が居て、「大丈夫。あんたなんかでも幸せに成れるわよ。」と言いました。励ましてくれたつもりでしょうか。彼はいつも恋をしていて大体無理そうでしたから。彼の思う幸せなら、多分私の方が叶えやすかったでしょうが。

欲しかった赤紫は彩度があってもキツくない果実のような色でした。そう簡単には見つからないと分かっていたと思います。服なんかショッピングセンターでしか買った事がなかったのに、この時は果敢にも通りの小さな衣料品店、接客の人が出てくるような敷居の高い店も廻りました。

ふと気がつくと、一人で行動する日が続いていました。一人で行動した日々は当時の私にとって、やっと手にした一枚のブラウスより有意義なものだったと思います。学校では友達が多い程エラいみたいで、友達と一緒に居ないと変なヤツみたいに見られる。それしきの事が自分には重荷だったのだなと、なんとなく理解したからです。

ちょっとラクになりました。

最近探したのは黄色です。大人しい黄色ではなく、ヒマワリのように元気な黄色。こんな世の中だし、ネットで探せば簡単だと思ってました。

なかなかの利き色なのでアクセサリーのような小さな物で探そうと思いました。自分にも見えるよう身に着けたかったのでブレスレットがいい、とか。

少しのくすみも無く、オレンジに寄り過ぎないサンフラワーイエロー。この黄色がまた無い。

探しても見つからなければ、作ってしまえ。と、ブレスレットなんか作った事もないのに材料を探し出します。

「サンフラワーイエロー ビーズ」で検索したら、出てきたのはたった1商品だけ。チェコ産の6ミリのガラスビーズで、それがたまたま思い通りの色でした。

ビーズを通す糸も忘れず探します。知識が無いので何を選ぶか色々見ていたら、ヒマワリの葉の色をしたワックスコードに出会います。これで繋げばヒマワリの花のようなブレスレットが出来る。ワックスコードが何かもよく知らず、ただ色だけで選んだようなものでした。

いざ手にしてみるとビーズの通し穴は想像以上に小さく、通るかどうかどころではない。それでもシロウトは自分がヘタクソだから通らないと思い、糸通しを買いに行き、何本も糸通しを破壊したところでようやく悟るのです。無理だと。

で、通し穴の大きいビーズを調べます。なんで糸を変えようと思わなかったのでしょうね。ウッドビーズなら通し穴が大きいと知ります。でも思うような色がありません。

木なら染められる。

無い色を諦めない毎度のシブトサでそんな方向へ。で、染めてみたら自由に好きな色が作れるだけでなく、グラデーションも自由自在。

台所を製麺所のようにしてたくさん染め続けると、いつしか黄色へのコダワリも和らぎ、色々な色を使うようになります。

今度は糸もいろんな色を使いたいと思い、継ぎ方を調べます。そして焼き留めの事を知りました。そこまで来てやっとライターを買い、もっと早くこの手法を知っていたなら、と残念に思った時には、もう幾つかの作品をコンテストに応募していました。

「好きな色」は時々私の心に取り憑いて、私を操り、どこかに連れて行こうとするかのようです。

「好き」と感じる気持ちには、自分にとって何が必要かを教えてくれるメッセージが潜んでいるのかもしれません。

欲しいという気持ちに振り回されて、得る物はそのものと限りません。

好きな色が変わったら、何か変わるきっかけを探しているのかもしれません。

梅の花


「色」自体は何かメッセージを持っているのでしょうか。

色は太陽の光の中に在って、地球に届くもの。

光が届いて、色として散る星に、色を見る事ができる目を持って生まれきた。

それは、そこそこの奇跡なのかもしれません。