電話をかけても返事がなかったので、合鍵で開ける。
途中、転がっている彼の兄を脇にのけて進む。
案の定、わかばはよれよれになって部屋で倒れていた。
抱え起こすと「すみません」と頭を下げた。
放っておくといつもこれだから側にいないと、と思ったところでそれが意味することに気づき、顔を赤らめた。
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伸びきったゴムを外すと、先端が白濁を溜めて膨らみ、揺れた。
すぐにくくり、ティッシュに包んで捨てる。
一度出したにも関わらず、身体はまだりんさんに入りたがっている。
それは彼女も同じようで、見上げる眼には僕を求める熱があった。
「もう少し、いいですか?」
承諾を得て、銀色の包装を破った。
興味のあるものに夢中になると時間を忘れてしまう気質は、ベッドの上でも同じらしい。
今も、買ってきた図鑑を飽かず眺めている。
明日は早く出かけようと言っているのに。
「ごめんなさい、もう少し」と粘るわかばから図鑑を取り上げ
「…寝ろ」とすごむ。
そのまま離れた机に図鑑を置き、ベッドに入った。
ベッドの誘惑は抗いがたい。
それが、愛しい人と共にしていたものならばなおさらである。
けど、もう起きないと。
今日は早く出かけようと約束していたのだから。
傍らのりんさんは柔らかく無防備な寝顔で、ドキドキしてしまうし、そのままベッドに戻りたくもなるけど、どうにか理性を総動員して起こした。
食器を片付け終え、一息つくために本を開く。
栞がわりに挟まれた紅葉が出てきた。
その鮮やかな紅に、去年の旅行が思い出される。
秋色に染まった山、二人で歩いた並木道…。
胸の奥にしまわれた記憶は、宝石のように煌めいていた。
また、旅行しようか。
隣に座っているその人に声をかけ、意向を確認した。
また連絡が途絶えたので、部屋に行って助け出すと「いつもすみません」と困ったように笑った。
好きでやっていることだからいいけれど、こう毎度同じことで心配するのは身が保たない。
いっそ、と思っていたら、わかばも同じことを考えていたようで「もし、良かったら一緒に」と毎日の約束を申し出た。
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レースのカーテン越しに陽光が差し込む。
「朝ご飯を作らないと」
立ち上がるりんが着ているのは男物のパジャマの上とエプロンだけで、ゆらゆらと揺れる裾と、そこから伸びる脚がなんとも艶めかしい。
今は連休で、出かける予定もない。
阻むものは何もない。
欲求そのままに、彼女を後ろから抱きすくめた。
最後まで耐えた僕を褒めてほしい。
酒精に頬を上気させ、潤んだ目で甘えてくるりんさんに壊されそうになった理性を、どうにか立て直してりんさんを寝かしつけた。
けれど、りんさんの腕が僕の首に回り、唇に柔らかいものが触れた。
「…心の準備はできているから」
不意打ちに、抵抗できるわけがなかった。
玄関のドアが開く。
帰ってきたわかばは見るからに疲れていた。
私を見て少し喜色を浮かべたが、そのまま崩れ落ちるようにもたれ掛かる。
すみません、という声も半分眠りかけていた。
せめてソファまで、と言おうとしたら既に眠り込んでいる。
そのひどく安らいだ顔に、文句を言う気も失せてしまった。
わかばの家の呼び鈴を鳴らすが、返事がない。
しばらく待っていると、息を切らせて走ってきた。
「すみません、お待たせました」
汗を拭き拭き謝るわかばに気にしない、と手を振る。
わかばが、少し考えてから私の手に何かを握らせる。
「良かったら、持っててください」
手のひらで、銀色の鍵が光っていた。
買い物袋を片手に、わかばの家のドアを叩く。
以前、栄養は摂れるがあまりに雑すぎる食生活に真顔になったことがある。
だから、いつかわかばに食事を作って食べさせたいと思っていた。
よほど上手くはないが、それでも色々混ざった謎のペーストを流し込むよりはマシだと思いたい。
喜んでくれるだろうか。
今日はわかばが休みで、家で二人穏やかに過ごしている。
ずっとこんな日々が続けばいいと思っていたら、不意にわかばが真剣な目をして箱を差し出した。
開けると、腕時計だった。
「ずっと、僕と時を重ねてくれますか。
一生、りんさんの幸せをお手伝いしますから」
感情が溢れ、頷くことしかできなかった。
差し込む光に目を覚ますと、わかばがいなかった。
もう起きたのかと思っていると、香ばしい匂いが漂ってくる。
「おはようございます。朝食できてますよ」
食パンとコーヒーぐらいですけど、と声がかけられた。
ダイニングでわかばが淹れたコーヒーを口に含むと、胸まで温かさが広がる。
穏やかな朝だった。
残業をどうにか片付け、帰宅した頃には遅い時間だった。
りんさんはテーブルで眠っている、ふりをしていた。
「待たせてすみません。今からでも、一緒に過ごしませんか」
「驚かせようとしたのに」と拗ねた声を返したけれど、遅れた時間を取り戻す方が先だなと笑顔を見せた。
「「メリー・クリスマス」」
どうしてここに君がいないんだろう。
さっきからずっと、そんなことばかり考えている。
いや、いない理由はわかっている。
それでも、隣にいてくれたらと思わずにいられない。
その声が、香りが、温もりが恋しかった。
早く帰ってこないか。
早く帰りたい。
たかが三日。されど三日。
隔てた距離は遠かった。
珍しく、わかばがまだぐっすりと眠っている。
せっかくの休みだから寝かせてやろうと思ったが、どうにも寂しいのでついつい触ってしまう。
もじゃもじゃの髪、少し硬い肌…。
よほど疲れているのか、触られても全く起きない。
早く起きてほしいけど、このままこうしていたいとも思う。
贅沢な悩みだった。
ベッドの誘惑は抗いがたい。
まして、愛しい人と共にしていたものならばなおさらである。
久しぶりの休みだしどこかに出かけようか、なんて話していたけれど外に出るには寒そうだ。
「…今日は家でゆっくりしましょうか」
提案するとそうだね、なんて言いながら顔をすり寄せてきた。
こんな朝も、悪くない。