研究内容
植物の形作りとその進化を理解するため、植物細胞の細胞骨格と接合藻類の形作りを調べています。
光をめぐる競争に必要な「茎」は、植物の祖先の藻類が細胞を細長く伸ばすしくみを持っていたため進化できました。乾燥に耐える表皮を作るためには、細胞を決まった方向に分裂させるしくみが必要ですが、このしくみも進化の過程で獲得されたものです。これらのしくみの鍵になるのが細胞骨格の「微小管」です。
また、細胞を顕微鏡で見やすくするための技術改良や、光るタバコ培養細胞を利用した共同研究も行っています。
1.接合藻類の形態形成
ヒメミカヅキモ
アワセオオギの一種
〇 ミカヅキモの運動、細胞分裂
〇 アワセオオギの規則的な突起はどのように進化したのか
〇 これらの研究のための研究基盤づくりと技術開発
ミカヅキモ、アオミドロ、アワセオオギなどの接合藻類は、陸上の植物と姉妹関係にあります。これらの細胞分裂、細胞の形づくりのしくみとその進化について研究をスタートしました。
2.植物細胞の細胞骨格と細胞分裂
タバコ培養細胞の紡錘体
〇 紡錘体のできるしくみ
〇 細胞板のできるしくみ
〇 これらの研究のための技術開発
動物細胞は中心体を持ち、中心体が微小管を生やすことによって細胞分裂が行われます。一方、植物細胞は中心体を持ちません。それでは、植物細胞はどのようにして分裂するのでしょうか? 村田は植物細胞で微小管が微小管が生やすことを発見しました(Murata et al. 2005)。この発見をもとにして細胞分裂のしくみを解析しています。
3. 茎はなぜ細長くなれたのか
〇 微小管が並ぶしくみ
〇 微小管結合タンパク質を見るマーカーの改良
茎が長いのは茎を構成する細胞が細長く伸びるからです。細胞を長くする仕組みが植物の祖先の藻類に備わっていたため、細長い茎が生まれました。細胞を長くするのは、細胞骨格の微小管と細胞壁です。茎を生み出した原動力を探るため、ミカヅキモとタバコ培養細胞を使って、細胞が伸びるときの微小管を解析しています。
4.共同研究
卒業研究生の研究テーマ
1年後には社会に巣立っていく卒業研究生(4年生)にとって、卒業研究は科学研究の現場を知る貴重な機会です。研究の大変さと喜びを実感してもらい、研究が好きになって卒業していけるように、上記の研究内容に関連しつつも、難しすぎず、本人の興味が持てるテーマを一緒に考えています。
テーマの例
- 細胞内のアクチンを標識するマーカー開発
- ミカヅキモの走性の研究
- 緑藻アワセオオギのDNA量と進化
- 藻類細胞数の自動計測法の開発
最近の代表的論文
Kamada et al. (2022) Low-invasive 5D visualization of mitotic progression by two-photon excitation spinning-disk confocal microscopy. Scientific Reports. 12, 809 website
Kosetsu et al. (2017) Cytoplasmic MTOCs control spindle orientation for asymmetric cell division in plants. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 114, E8847-E8854; doi.org/10.1073/pnas.1713925114 website
Murata et al. (2013) Mechanism of microtubule array expansion in the cytokinetic phragmoplast(細胞質分裂に関わる隔膜形成体での微小管列拡大の機序)Nature Communications 4, 1967 和文要旨
総説
村田隆(2018)表層微小管「列」:自己組織化する繊維. 植物科学の最前線(日本植物学会のオンライン総説) 9:111 リンク
村田隆ら(2015)2光子スピニングディスク共焦点顕微鏡による3Dライブイメージング. Plant Morphology 27 巻 1 号 p. 27-32 妙録
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