ミカヅキモは、その美しい姿から、人気のある藻類の一つです。最近の遺伝子配列情報の蓄積により、陸上の植物に最も近縁な生き物であることもわかってきました。
そんなミカヅキモが、身近なところにいることをご存じでしょうか。神奈川工科大の近くの田んぼではミカヅキモを採集することができます。このページでは、私たちの身近なところにいるミカヅキモの紹介をしています。
ミカヅキモには様々な種類があります。研究室で育てているミカヅキモと、その増え方についても紹介します。
ミカヅキモは水のきれいな田んぼで採集することができます。水が淀んでいるところには少ないようです。稲の根元や、枯れ草が多少あるところで、表面が緑色に見えるところにいるようです。
稲の根元で土が緑色になっているところを探し、緑色の部分を吸い取ると、ミカヅキモや、いろいろな藻類がいます。
研究室メンバーで、歩いて40分の自然公園にミカヅキモ採集に行きました。管理者の皆様、ありがとうございました。(2024年7月3日)
耕作しない田んぼが、ビオトープとして管理されています。
ミカヅキモは接合藻の仲間です。今回の採集では、同じ接合藻のアオミドロやコウガイチリモも見つけることができました。
ミカヅキモは、2種類見つかりました。ナガミカヅキモ(Closterium acerosum)とオオミカヅキモ(Closterium ehrenbergii)でしょうか?
村田が沖縄に出張したときに、琉球大構内で採取したミカヅキモです。(2023年10月29日)
崖の上から側溝に流れる湧き水にミカヅキモがいました。同じ水たまりにはオタマジャクシもいて、自然に恵まれたキャンパスを実感できました。
ナガミカヅキモ(Closterium acerosum)のように見えます。
研究室メンバーで、自然環境保全センターの池に行きました。昆虫観察のかたわら、ミカヅキモも採集できました。(2023年7月26日)
徒歩30分の田んぼに研究室で行ってきました。ミカヅキモ何種類かと、ボルボックスなどを見つけることができました。(2022年7月7日)
※ 耕作者の許可済
研究室では、オオミカヅキモ、ナガミカヅキモ、ヒメミカヅキモを培養しています。大きさや形が違います。
ナガミカヅキモ(拡大) 細胞内の構造がよく見えます。真ん中にある透明なものが細胞核です。
オオミカヅキモ
ヒメミカヅキモ
ミカヅキモは細胞分裂で増えます。卒研生のIくんが、写真を撮ってくれました。
まず、中央部に仕切りが入ります。このときには、細胞核は2つに分裂済みです。
やがて、仕切りのまわりが膨らみ、2つの娘ミカヅキモが分かれていきます。
細胞核が移動し、葉緑体もくびれています。
さらに膨らみ、娘ミカヅキモが分離しました。このあとで、さらに成長して、きれいな三日月型に戻ります。
3分間隔で写真を撮影し、動画にしました。2時間半を5秒に短縮して再生しています。
動画の作り方は、村田ホームページ「コマ撮り動画を作ろう」を見てください(リンク)。
多くの藻類はべん毛を振って泳ぎますが、ミカヅキモはべん毛を持たないため、泳ぐことができません。しかし、ミカヅキモは水底をはって動くことができます。特に、野外から取ってきたミカヅキモはよく動くようです。動画は1秒が2分です。
ミカヅキモは接合藻の仲間です。接合とは、動物の精子と卵が受精するのと同じように、違った性の個体が合体する現象です。
本来は、違った性の個体しか接合できないのですが、細胞分裂した自分自身のコピーと接合できるミカヅキモがいます。接合子は乾燥に強いため、出会いがなくても接合子をつくり、冬の田んぼの乾燥に耐えるように進化したと考えられています。NHKのeテレ2355で放送された「♪乾燥すると接合して冬を越す♪」の歌詞をご存じの方もいるのではないでしょうか。